地獄門
地獄門。赤く染まった空の下、巨大な門が静かに佇んでいた。門兵が、見慣れぬ一行に目を丸くする。
「ん?あれは姫様、和勇牛殿……と、人間?」
門兵の視線は、異質な存在である世一に釘付けになる。和勇牛は、いつもの威圧感を漂わせながらも、沈黙を守っている。姫の表情は、どこか緊張しているようだ。
「如何なされました?人間等を連れて、ここから先は大神様の神殿。人間風情が入れる場所では……」
門兵の言葉が終わる前に、和勇牛が轟くような声で遮った。
「黙れい!主への侮辱は許さぬ!」
門兵は、その迫力に圧倒され、悲鳴を上げる。
「ひっ!」
和勇牛は、さらに凄みを増して言い放つ。
「一言だけ言う、今すぐこの場を去れ。でなければ……斬る!」
門兵は、恐怖に顔を歪ませ、喚き散らす。
「ヒィィィ!和勇牛殿、御乱心!御乱心!兵をかき集めろ!!」
門兵が逃げ去ると、和勇牛は静かに呟いた。
「ふふ、これで我も名実ともに主側となりましたな」
そして、高揚を隠せない声で付け加える。
「ふふふ、胸が高まって参りましたわ」
結は、世一に視線を向け、微笑みかける。
「世一様、大神めの軍勢は和勇牛に任せて、私達は神殿に参りましょう」
彼女は、震える手を差し出した。
「さ……わ、私の、て、手をお繋ぎ下さい」
世一は、その手を無視して言い放つ。
「いいから案内しろ」
結は、瞳を潤ませながらも頷いた。
「は、はい、うっうっ……」
世一は、舌打ちをする。
「ちっ」
結は、それでも嬉しそうに呟く。
「はぁぁ……私の手を……ありがとうございますぅぅ」
そして、世一を促すように歩き出す。
「さ、ささ、では私の寝所へ案内しましょう」
世一は、足を止めて尋ねる。
「何処に行くつもりだよ」
結は、慌てて訂正する。
「あ、あわわ!ご、ご神殿です!ご神殿へ!」
こうして、世一、結、和勇牛は、大神の神殿へと続く道を歩み始めた。