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ACT.0  作者: 深月織
3/10

<2>


「そこを退け、カリノ。甘過ぎるんだよ、お前は」

「駄目だよヤシロ、彼女は傷付いている。それを癒してあげなきゃ……」

「そいつは他人に怪我をさせているんだぞ! 運良く死ななかっただけで!」

「でも駄目だ、力ずくじゃ元に戻れないッ!」

「それが甘いって言うんだ! 説得なんかしてる余裕あるのかっ」

「力で元に戻しても解決にはならない!」


 なんだなんだ、一体! こいつら何処からでてきたんだぁっ?

 突然あたしの前に現れたその二人組は、少し離れた所で訳の分からない言い争いをしていた。

 二人とも、年はあたしと同じくらい。

 カリノと呼ばれた薄い髪の色の少年と、ヤシロと呼ばれた、少し長めの髪を後ろで束ねた少年。

 二人とも黒ずくめの上下に白いコートといった服装。

 短い間にあたしはその二人のことをしっかり観察していた。


 だって。

 二人とも稀に見る美形だったんだもん!!


 美形と言っても、二人とも全くタイプが違うの。

 カリノ少年のほうは柔らかな顔立ちをしていた。女顔ってわけじゃないんだけど、優しい感じの綺麗な美少年。

 ヤシロ少年のほうは見た通りきつい、鋭いナイフのような、そんな印象の美少年だった。

 タイプは違うんだけど、似ている気がする。雰囲気が、かな。血が近いのかな、兄弟には見えないけど。

 言い争いは続いていて、業を煮やしたらしいヤシロ少年がスッと右手を上げた。

 ハッとなってカリノ少年が身構える。

 んんんー? 何だかカリノ少年、誰かをかばってるみたいなんだけど……?

 うしろ……あれれ?

 なに、あのヒト。半分透けてる……え????

 カリノ少年の後ろにボブカットの女の子。半分透けてる………、ちがうーーっっ!!!

 あああれはもしかして、もしかして、レイの幽霊。

 しゃれてる場合じゃないってば!

 きゃーきゃーきゃーッ! 初めて見た、スゴイスゴイ!

 あたしがちょっとずれたパニックの仕方をしている間に、何だかカリノ君とヤシロ君は険悪なムードになっていた。

 そして、ヤシロ君が何か呟いた。

 右手から白い光が放たれる。

 カリノ君は両手を上げて何か叫びながらそれを遮った。見えない壁がそこにあるように白い光が霧散する。

 うわあすごい…じゃなくて。何なのこれ? だ、誰かあたしに説明して。

 半分腰を抜かして、あたしはその光景を見ていた。


 あたし自分でもちょっと変わってるかなと自覚してたわ。大抵の事では動じないの。

 こんな時、普通だったら、きゃああああっ! とか悲鳴をあげて、気絶したりするんじゃないかなあ。

 ところが、あたしは生来の好奇心の強さが災いして、しっかりとこの出来事を見ていたのだ。

 気絶出来れば良かったんだけど、あいにくあたしはそこまで繊細ではなかったのよ。


 だから、合ってしまった。


 幽霊の女の子と、目が、合ってしまった。

 彼女が何か叫び、カリノ君達が驚いたようにをあたしを見る。


『身体だわ!』


 そんな声がすぐ側でして。



――次の瞬間、全身を強く打ったような衝撃を受けて、あたしは目の前が真っ暗になった。





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