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「そこを退け、カリノ。甘過ぎるんだよ、お前は」
「駄目だよヤシロ、彼女は傷付いている。それを癒してあげなきゃ……」
「そいつは他人に怪我をさせているんだぞ! 運良く死ななかっただけで!」
「でも駄目だ、力ずくじゃ元に戻れないッ!」
「それが甘いって言うんだ! 説得なんかしてる余裕あるのかっ」
「力で元に戻しても解決にはならない!」
なんだなんだ、一体! こいつら何処からでてきたんだぁっ?
突然あたしの前に現れたその二人組は、少し離れた所で訳の分からない言い争いをしていた。
二人とも、年はあたしと同じくらい。
カリノと呼ばれた薄い髪の色の少年と、ヤシロと呼ばれた、少し長めの髪を後ろで束ねた少年。
二人とも黒ずくめの上下に白いコートといった服装。
短い間にあたしはその二人のことをしっかり観察していた。
だって。
二人とも稀に見る美形だったんだもん!!
美形と言っても、二人とも全くタイプが違うの。
カリノ少年のほうは柔らかな顔立ちをしていた。女顔ってわけじゃないんだけど、優しい感じの綺麗な美少年。
ヤシロ少年のほうは見た通りきつい、鋭いナイフのような、そんな印象の美少年だった。
タイプは違うんだけど、似ている気がする。雰囲気が、かな。血が近いのかな、兄弟には見えないけど。
言い争いは続いていて、業を煮やしたらしいヤシロ少年がスッと右手を上げた。
ハッとなってカリノ少年が身構える。
んんんー? 何だかカリノ少年、誰かをかばってるみたいなんだけど……?
うしろ……あれれ?
なに、あのヒト。半分透けてる……え????
カリノ少年の後ろにボブカットの女の子。半分透けてる………、ちがうーーっっ!!!
あああれはもしかして、もしかして、レイの幽霊。
しゃれてる場合じゃないってば!
きゃーきゃーきゃーッ! 初めて見た、スゴイスゴイ!
あたしがちょっとずれたパニックの仕方をしている間に、何だかカリノ君とヤシロ君は険悪なムードになっていた。
そして、ヤシロ君が何か呟いた。
右手から白い光が放たれる。
カリノ君は両手を上げて何か叫びながらそれを遮った。見えない壁がそこにあるように白い光が霧散する。
うわあすごい…じゃなくて。何なのこれ? だ、誰かあたしに説明して。
半分腰を抜かして、あたしはその光景を見ていた。
あたし自分でもちょっと変わってるかなと自覚してたわ。大抵の事では動じないの。
こんな時、普通だったら、きゃああああっ! とか悲鳴をあげて、気絶したりするんじゃないかなあ。
ところが、あたしは生来の好奇心の強さが災いして、しっかりとこの出来事を見ていたのだ。
気絶出来れば良かったんだけど、あいにくあたしはそこまで繊細ではなかったのよ。
だから、合ってしまった。
幽霊の女の子と、目が、合ってしまった。
彼女が何か叫び、カリノ君達が驚いたようにをあたしを見る。
『身体だわ!』
そんな声がすぐ側でして。
――次の瞬間、全身を強く打ったような衝撃を受けて、あたしは目の前が真っ暗になった。
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