スキル
ゴブリンなどの所謂、雑魚モンスターを倒しながら、暗い道を進んで、数分がたった。
不思議と疲労感はなく。心を入れ替えたからか謎の達成感すらある。もしくは、スキルによる効果なのかもしれない。
話を始めたし、スキルついて少しばかり話すとしよう。スキルには主に2つの種類が存在する。
自分の意思で発動し、ダメージ、バフを与えるアクティブスキル。例を出すとしたら、ユラの使用した《身代わり》とかだろうか。
そして、半永久的、永久的に発動し、自分のステータスを上げたり、一時的にだけど大幅にバフを与えてくれるパッシブスキルだ。これらのスキルは職業の熟練度を上げる事で入手ができる。
そして現在の俺には自動HP回復がついている。回復する為のアイテムが少ないトワゾではこのスキルはとてもと言っていい程の必須スキルだ。俺がユラとの戦闘で死亡しなかったのはこれのスキルのおかげと言っても良いだろう。
自分が後に完全体でここに入れたのもこれらのスキルが発動し続けてくれたからだ。
「目ぇ...」
この薄暗い道の最終地点が目で見えるようになった。見る感じ光が溢れており、思わず目を覆い隠す。部屋?のようになっているようだ。
取り敢えずそこを目標に進もう。もしかしたらツツジさんの仲間が待っているのかもしれない。
眩しさに目が慣れ始めた頃、その光の源に辿りついた。広く、白煉瓦に包まれたその部屋は、戦闘が起こった後なのか、壁や床が抉られている。それに加え柱のような物が部屋中に散らばっている。
「もしかして、ゴブリンはこの場所から逃げてたのか?」
今思えば、ゴブリン達に戦う意志があまりあったとは思えない。それに彼らは俺に気づいていたとは到底思えない。気付いていたとしても、馬鹿正直に正面突破をするだろうか。
そもそも逃げるという行動は、意志を持っている者がすることだ。ゲームのキャラに意思なんてあるとは思えないが...
そう胸騒ぎを感じながら、俺はその部屋に足を踏み入れた。目的地は奥にある1つの扉。
ゆっくり、そして何も起こらない事を願いながら、扉の方向に向かう。
「まじか...」
目の前に起きている光景をただ見る事しかできなった。
壊れていたと思っていた柱は突如、空中に浮き、部屋の中央に向かって集合していき、変形し始める。
次々に腕、足、体と身体が形成されていき、最終的には、巨大な体躯を持った機械的なゴーレムが形成された。そんな彼の体は前の戦闘に受けた傷なのかひび割れており、機械音と共に体の素材が落ちる。
そんな彼は俺の姿を見て瞳の役目を果たしているであろうレーダーを輝かせた。
「シンニュウシャハッケン」
「うげっ」
そう言った途端扉の方を見る。閉まっている。戦闘からは逃れられないようだ。
すぐさま振り返り、ゴーレムを観察する。
動きは遅く、代わりに攻撃の特化しているようだ。太い腕は攻撃範囲が広く、まるの他のように太い指は掴むこともできるだろう。
レベルは大して高くなく、それ故に何らかの職業による隠し球はないと考えても良いだろう。
レベルが重宝される事は少ないと言ったが、本当は情報の知っているボスやモンスターの攻略情報が出回っている時の話だ。そして現状の島である【トライ・パトリオン】は、三年間探索されている。
それ故に強力な職業の入手方法もわかっている現在の結論はレベル20、及び20の職業があればいかなるモンスター相手でも対処ができると言う結論になった。
だがそれは、あくまで、情報が出回っているモンスターに限りだ。プレイヤー相手やダンジョンで登場するモンスターの情報は少なく、それでいて手の内が読めない。それを踏まえて、迂闊に攻めると痛い目を見る事が多い。どんなプレイヤーも奥の手はもつ物だからな。
対してモンスターはレベルが高いほど強力なスキルを持っている事が多い。
重々しい巨体の存在は遅いものの着実に距離を詰めている。
そのままゴーレムの体に飛ぶ乗る。
「《竜爪/アイゼン》」
そう唱えた瞬間、自分の足装備から爪や棘が現れ、ゴーレムの下半身を抉り、自分の体重を支えながらくっつく。そう確認した後、ゴーレムの顔に向かって走る。
「《竜鉤爪》」
その瞬間、自分の両手の周囲を強調するように、黒く、赤い線が入っている禍々しい爪が出現した。そして俺はそんな腕を慣れたように、ゴーレムに振り翳した。岩が砕ける程の轟音と共に砂埃が周辺に舞う手応えはあった、その場を飛び砂埃から脱出する、その瞬間ゴーレムの巨大な手が俺を叩き落とした。
「がっ」
「《重撃》!!!」
「《蠱毒術・蠍甲鎧》」
ゴーレムが力一杯握った拳を振りかざす反面、自分の鎧が膨張し、軽々しかった鎧とは思えない程に重々しくなる。両者準備完了、拳が俺に直撃するその瞬間....氷が水にさらされるような音と共にゴーレムの腕が砕け散った。
「がが」
謎の機械音を出すゴーレムは体制を崩し、俺の方に倒れ込む。
つまり大きな隙を作ったと言うことだ。
「《竜尾》」
片腕の全体を黒い無数の鱗が覆い隠し、手首から先は赤い鱗に包まれる。そのまま手首の力を極限まで抜き、そのまま平手打ちをする。
攻撃が当たった瞬間、巨大なゴーレムは軌道を変えるどころか、宙に浮き遠くまで吹っ飛ぶ。
今じゃ聞き慣れた、身体の崩壊音を響かせながら。
「シンニュウシャノ、ハイジョシッパイ。ハソンリツ85パーセント。レンラクヲカンリョウシタノチ、スリープモードニイコウシマス」
「《龍鉤爪》」
すでに壊れていたゴーレムの頭部を切り抜く。
これで連絡網は切った筈だ。
周りを見渡し怪しいものがないか確認する....何もなし。なんらかのギミックがあると思っていたが、どうやら扉には何も仕掛けられていないらしい。
「中ボス倒したし、いくか」
後はツツジの仲間を見つけてここを脱出するだけだ。
なんの変哲もないドアノブに手をかけ、開ける。
そこには先程とは真逆の景色が広がっていた。木材で囲われていたその部屋には大量に本棚にテーブルが何個かある。だが何よりも目を奪われたのは....
「あのー武器を下ろしてくださらない?」
バタンと扉を閉めた瞬間。謎の3人組に刃を向けられた事だ。
ご拝読頂きありがとうございます。
久しぶりの投稿ですが、楽しんでいただけるとありがたいです。それでは皆さん良い一日を!