優しい眠りを覚ますもの 8
(見慣れた王弟殿下ではなく、レーヴェの新しい娘が可愛いから絵姿が飛ぶように売れてるのさ。……レーヴェの神殿で、レティシアがレーヴェの絵にはしゃいで、喜ぶ者はいても咎める者などおらん。そんな馬鹿がいたら、タコ殴りにしてやるぞ?)
「……せ、精霊さ……」
耳の中に聞こえてきたいつもの声に、レティシアは、つい両手をあげた。
「レティシア姫?」
「姫様?」
「あ、ううん。何でもないの」
ふるふる、レティシアは、金の髪をふる。
この精霊さんの声はレティシアにしか聞こえないのだ。
きっと、いけなかったかな? はしたなかったかな? と考えてたから、精霊さん、がんばって、フェリス宮から出張精霊さんしてきてくださったのだ。
そういえば、レーヴェ神殿でも、何かお仕事もされてる言ってたし……。
精霊さん、ひそかに働き者なのだわ……。
(そうそう。意外と働き者なんだよ。本人はずっとだらだら寝てたいのにな。……レティシアはレーヴェの愛娘だ。レーヴェの愛娘と愛息子が、父の家ではしゃぐのはあたりまえだ。実家だからな)
こくこく、とレティシアはこっそり頷いた。
こっそりも何も、鏡の前で、髪をといてもらってるので、こっそりしようがないが。
ただ、優しくて強い精霊さんの声を聴くと、何だか、俯かずに、しゃんと顔をあげていなくては、という気持ちが強くなった。
「……サキ、リタ、わたし、サリアの実家でね」
「はい」
「私が喜ぶことは、普通の小さい姫が喜ぶこととはちょっと違うみたいで、それで変わった姫だと言われてたの。でも、ディアナでは、私が喜ぶことを、フェリス様は何でもおもしろがってくださるから、すごく嬉しいし、すごく……なんだか、生き返ったような気がする」
サリアで、呪いの王女、とされてしまってからは、前世の知識で役立ちそうなことを進言しても受け入れてもらえなくなってしまった。なので、呼ばれる名前も大事。
レティシア自身を嫌いでも、受け入れて欲しかった策があったんだけど、それも聞いてもらえなくなってしまった。仕方ない。人とは、人の名や、その人のことを信じて動くのだ。
レティシアとて、信頼してるフェリス様のすることならば、内容のいかんは問わず、きっと間違はない、と、逆に、信をおいてない人のすることなら、やっぱり怪しい、と思ってしまうもの……。
「レティシア様……」
「生き返ったは違うかな? 新しく生まれたみたい? ディアナで、フェリス様の妻、竜王陛下の娘として新しく生まれ変わった感じかな……。嬉しくて仕方ない新米の竜王陛下の娘が、竜王陛下の神殿ではしゃいでても、仕方ないよね?」
レーヴェ神殿に、フェリス様と一緒に入場した時から、なんだかレティシアの体の中から、喜びが沸き上がってくるみたいだった。
これはちょっと、サリアの神殿でも、前世でお寺巡りしたときにも感じたことのない、特別な感覚。
「もちろんでございますよ、レティシア様。そして、私たちの自慢のフェリス宮の姫君ですよ」
サキとリタの手で綺麗に仕上がっていく鏡の中の貌を見ながら、朝から精霊さんに心配かけないように、しゃんとしてなきゃ、と思い、でも何だか精霊さんと二人でお喋りたいこといっぱいすぎるわ、ここの竜王陛下の天井絵がどんなにすばらしいかとか! 竜王陛下の彫像がどんなに素晴らしいかとか! とレティシアの桜色の唇が幸福な微笑みの形になった。
「みんなが大事にしてくれてるオレの神殿はいいんだけど、オレ、やっぱ肩こるから、フェリス宮でフェリス宮の精霊さんとしてだらだらしてたいわ~」(from仰々しいのが苦手な竜王陛下)
とっても寒いですね! 雪など多い地方の方々、山火事などの地方の方々、お気をつけて!
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『五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました@COMIC』コミカライズ三巻表紙
『五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました@COMIC』コミカライズ連載