花嫁に浮かれるレーヴェ神殿
(いっぱいフェリス様に食べさせたー! 大満足―!)
リリア神殿でカルロ大司教から呪われてるともしらず、レティシアはレーヴェ神殿ですこやかに眠っていた。
ディアナのレーヴェ神殿は、鉄壁の守りを誇っている。
迷える子らや、屋根を求める旅人、恋や病や勉学や仕事に悩む者、親を亡くした子、家族を失った者などには、清らかな水と美味しい食事と優しい祈りとともに、常に開かれているが、
悪しき者が入る隙は何処にもない。
それは「働かざる者、食うべからず!」の竜王陛下のご意思に従って、レーヴェ神殿の神官達は、竜王陛下を讃える詠唱だけでなく、魔力の鍛錬も怠らない。
「愛しき人々を守るためには、強くなくてはならぬ」がディアナのレーヴェ神官達の信条である。
なので、ガレリアの魔導士も、リリア教の僧も、フェリスやレティシアに届くどころか、外壁にも弾かれる有様である。
『竜王陛下の剣』『ディアナの守護の剣』として奉じられた竜王剣のみならず、千年、建て増されてきた、天へ届こうとする美しい音楽のような壮麗な神殿のそのものが、堅固な鎧といっていい。
レーヴェ神殿は、何処か哀しみを宿すリリア神殿と異なり、そもそもが、主人のレーヴェに似て、陽の気を帯びている。
この世の事象すべてを面白がる古き竜の神を主とする神殿は、いま、竜の仔の小さな花嫁を迎えて浮かれていた。
しかも、その花嫁が、優美な竜の描かれた伽藍も、繊細な意匠の施された柱も、清き水に満たされた庭園も、神殿から見下ろす王都の街も、すべてを無邪気に喜んでくれるので、レーヴェ神殿は、ここ数日、上機嫌だ。
竜の仔の花嫁に異界から来た娘はどうなんだ? と訝しんでいたレーヴェ神殿も、フェリスに手をひかれて、神殿のあちこちの竜の彫刻にいちいち喜んでいる、可愛らしいレティシアに、たやすく陥落している。
なるほど、フェリス宮の薔薇の精霊たちが、これみよがしに浮かれるはずだ。
これは可愛い花嫁だ、と。
レーヴェ神殿はレーヴェの家の名を持つものの、御本尊の竜であるレーヴェ自体は、めったに神殿にはいない。
御本尊は留守が多いものの、レーヴェ神官たちに修行がてら常に磨き上げられ、訪れる巡礼者たちにありがたがられ、時代ごとに、竜王陛下を愛してやまぬ者たちの手で手入れされて、愛には事欠かぬ神殿である。
うう、24時までにアップのつもりが寝てしまってた…! と目覚めて書きました(笑)
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