ガレリアの街角にて
「アキ! こっち! 僧兵に見つかったら大変!」
「オレは何も悪いことしてないっ!」
十二歳の黒髪の少年は、少女に髪の毛をひっぱられて、顔をしかめた。
「でも、アキだって、いきなり生卵ぶつけられたら怒るじゃない。きっと怒ってるわよ、偉い御坊様……」
「怒ってるのはこっちだ! 父さんたち、みんな仕事がなくなって困ってる! あの大司教のせいだ!」
「それはそうだけど、私達がどうにかできることじゃ……」
アキより年上の十五歳のマリアは、溜息をつく。
輸出入を生業にしているガレリアの家は、リリア僧がディアナで騒ぎを起こしたせいで、ディアナや他国から品物が入って来なかったり、買って貰えなかったりして、難儀している。
リリア僧の画策が露見したのは、現在のところ、ディアナでのみなのだが、他の国との交易にも大きく影響が出ている。
「そんなことして、アキが牢屋に入れられたりしたら、お父さんもお母さんもそっちの方が泣くよ」
「だけど、何もしなかったら、皆が困ってるって、わかってもらえないじゃん」
黒髪のアキは、唇を尖らせた。
「アキが生卵ぶつけなくても、みんな、御手紙とか書いて、大司教様にディアナに詫びを入れてくれ、商売がうまくいかない、これでは困ります、てお願いしてるの。こういうことは時間がかかるって大人たちが言ってたよ」
「あいつ、反省してないよ。こないだの朝の説教だって、レーヴェ神は悪! とか言ってたよ。悪はおまえだろ! てオレ思ったよ」
「こらっ」
ふん、とアキは頭を振った。こないだ、広場に大司教の朝の説教を聞きに行った。それは誰でも聞きにいける。最近、大人達が困っていることについて、何か言うのかと思ったのだ。
でも、大司教の説教は、リリア神様が素晴らしくて、いつの日かこのフローレンス大陸すべてがリリア様の地となる、それはもうすぐだ、悪しきレーヴェ神が邪魔をしているが、正義は我らにある、との内容だった。正義って何だよいったい、とアキは聞いててうんざりした。
「リリア神殿が何度も壊れるのだって、リリア僧の悪事にレーヴェ神が怒ってるんだってみんな言ってる。レーヴェ神の娘をさらったりして、何が我らが正義だよ」
リリア僧が何を考えてるんだか知らないが、リリア神様を拝んでればご飯が食べれる僧達とは違う。商売ができないと、普通の家は干上がる。
「しっ。だめ。よその神様の名を呼んじゃダメよ」
マリアは唇に指を立てた。背の高い黒髪の娘は美しかった。
「ふんっ。リリア神様だってきっと僧達にお怒りだよ。よその神様の小さな娘をさらうなんて、ガレリアの恥だ!」
アキはついこないだまでサリアなんて国の名前すら知らなかったが、いまでは、号外が出回っていて、ディアナの神様の血をひく王弟フェリスの花嫁になるレティシアを知っている。
レティシア王女は、美しい少女で、幼くして、国の為にディアナに嫁に行くのだそうだ。
そんなただでさえ、気の毒な王女に、そのうえ悪さをしようなんて、到底、神に仕える者とは言えないだろう。
「もう! えらそうなことばかり言ってないで、大人しくしてて! みんな、アキが大司教の馬車に卵投げたって知ってるのに、僧兵にも警備兵にも言わずに黙っててくれてるんだよ!」
「わかったよ……」
涙目で姉に叱られて、アキは大人しく黙った。反省はしてなかったけど、姉や両親に迷惑をかけてはいけないから、僧兵たちに捕まりたくはない。悪の大司教に不敬罪で丸焼きにされても嫌だ。
「レーヴェ神様も、大司教の頭に雷落としてやりゃーいーんだよ」
「アキ―!」
こんっとアキは姉に小突かれた。遠い異国の少年に名を呼ばれたレーヴェは、言っとくわ、うちの物静かなふりした暴れん坊の子孫に、と笑っていた。
昨日は犬王子とともに市内のフルートとバレエのコンサートを見に行ってました! 帰ってきて更新するつもりが力尽きて申し訳ない! フルートとヴァイオリンの二人奏が素敵でした♪
12/14迄、各電子書店で五歳もセール中です♪
12/1シーモア等全社でコミカライズ14話配信されました♪
小説四巻&コミカライズ二巻発売中♪ 表紙、イラスト等を活動報告に載せてます♪





『五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました@COMIC』コミカライズ三巻表紙