リリア神殿にて
「何という事だ、嘆かわしい! 我らがガレリアの民が、あのようにリリア神の権威を冒涜するとは……!」
先日、神殿内の大司教の座所に時ならぬ落雷があり、その区画は修繕中である。
カルロは別室にて、執務をとっているが、その落雷すらも、フローレンス大陸のそこかしこで、『レーヴェ神の怒り』と噂されているのが腹立たしい。
レーヴェ神なぞ、食べては寝てばかりいる怠惰な竜だ!
いちいち下界のことなど気にしているものか!
「その……以前から、国外でも、ガレリア国内でも、リリア僧が近頃、誹謗中傷に難儀しているという問題を、猊下にご相談しようとしていたところだったのですが……」
緋色の衣の枢機卿が何とも言えぬ微妙な顔をしている。
「あの憎き邪神似の男が先導しているに違いない!」
溢れんばかりのカルロの怒りに、枢機卿は困っている。
「……邪神似の?」
「ええい、忌々しい! フェリスだ! フェリス王弟だ!」
「フェリス王弟殿下……、いえ、フェリス王弟殿下は、どちらかというと穏健派でございます。正直、レティシア姫誘拐の件まで、世間ではリリア僧の責にされてますから、フェリス殿下はもっと苛烈な措置でもおかしくないところ、交易などに関しては、罪なき者に類が及ばぬように、とご配慮頂いております。……どちらかというと、フェリス殿下以外のディアナ商人や農家などの怒りが凄まじいようで……」
枢機卿は、客観的な事実を報告しているのだが、カルロの納得できない顔に鼻白む。
「あやつが、あの虫も殺さぬ顔で、影から操っているに違いない! そうでなくば、我がガレリアの民が私の馬車を襲ったりするものか!」
カルロはガレリアで生まれ、ガレリアを愛してやまない。
カルロが邪神レーヴェをひどく憎むのも、『しょせんは新興国のガレリア』に比べて、『古来より竜神レーヴェに祝福されしディアナ』が憎い、という理由もある。
愛するリリア神とガレリアの為に、カルロは日夜、夜も眠らず働いてるというのに、なぜ、ガレリアの民は、カルロに石を投げるのか?
美しいからという理由をもって、あの異国の邪神の僕フェリス王弟のほうを信じるのか?
「フェリス殿下が先導されてる訳ではありませんが……、なにぶん、ディアナでリリア僧が捕獲されたのが時悪しく……、魔力の高い方として御名も通っておりますので、あの温厚なフェリス殿が怒るくらいだからよほどのことをしたのであろう、などと、セーシェルなどでは、全リリア僧に完全国外退去を通告されました。……フェリス殿下を懐柔できなかったことは、まことに惜しまれますね……味方にすればいかばかりの……」
「あれが懐柔されるような男か! 笑顔で人を欺く男だ! あの美しい貌の男の心は氷! まさに竜でなく蛇! レーヴェ神もフェリスも、まこと、呪わしき蛇のような心の冷たいあざとい男だ!」
おまえ、いい加減にしいないと、軽く雷落とすよ、とレーヴェが聞いていたら、苦笑しそうな呪いの言葉を吐いた。
カルロの机の上には、各国で国外退去を命ぜられたリリア僧の嘆きや、停止された貿易を再開できるようにリリア神殿からディアナに正式に謝罪をしてくれ、このままでは神殿への寄進もままならない、との嘆願の書状が山になっていた。
なかには、単にガレリアとの商売を切り上げたかっただけの案件、リリア僧を合法的に国内から一掃したかっただけの国もあり、ディアナでリリア僧の暗躍が暴かれたことが、渡りに船となったところもあった。
日頃の行い、という言葉もあり、普段からのつきあいが誠実であれば、急激に貿易停止や国外退去にはされていないのだが、そんなことまでカルロは関知していない。
カルロにしてみると、いたいけなガレリアの民が石を投げて自分の馬車を襲うなどと、邪神レーヴェかフェリスが暗躍したとしか、どうしても思えないのである。
「美しいから僕に味方してくれてる訳では確実にないと思います」(from温和な王弟殿下)
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