竜王陛下の祝福とともに
何処かで天上の音楽のような鈴の音がする。
晴れた春の陽に水がきらきら光って、とても綺麗。
フェリス様と手を繋いだまま、大神官オリヴィエの前に二人で立つ。
跪かなくていいのかしら? ディアナ的にはどういう作法なのかしら? 隣のフェリス様に習えばいいわよね? と思いつつ、凄く不思議な気分になる。
日本で生まれた雪が、この異世界に生まれ変わって、ここに立っていること。
それには何か意味があるの?
それとも前世の異世界物語で読んだみたいに、神様の気まぐれ?
たくさん読んだ物語は、似たような筋書きはたくさんあったけど、どれひとつとして同じじゃなかった。
それは現実の人生と似てる。
みんな同じような服を着て、同じように学校に行ったり働いたり、結婚したり子供を育てたり、当たりまえの生を、生きて死んでいくけど、誰一人として、似ていても、人生は同じじゃない。
これがレーヴェ様の気まぐれなら、レティシアは竜王陛下に感謝する。
ここにこうして、フェリス様と立っていられて嬉しいから。
「ようこそフェリス殿下、レティシア姫」
オリヴィエの言葉に、にこっとレティシアは嬉しくなって微笑んだ。
大神官がフェリス様のお友達なのは、なんだか安心。
ガレリアのリリア神殿でひどいめにあったけど、このレーヴェ様の神殿で過ごしてるだけで、それが癒されていくよう。
「我らが竜の神レーヴェ様は、この佳き日に、御二人を祝福なさいます」
我らが竜の神、と称える言葉が、いわゆる形式的な言葉ではなく、本当に愛し気なんだよね、さすがオリヴィエ、ディアナの人……。
「レティシア姫、どうぞ御手を」
「……はい」
わ、フェリス様からかと思ってたら、私からだった……! とレティシアはドキドキしつつ、繋いでいた手を放して、両手を前に差し出す。
「レーヴェ様の守護と祝福を」
差し出した手に、神官の手にある器から、綺麗な水をかけてもらう。
掌に、冷たい水が気持ちいい……!
いわゆる聖なる水なのかな?
なんていうかね、うんと山の上の綺麗な川の水みたい……!
「フェリス様、御手を」
「……竜王陛下に感謝を」
フェリス様が両手を差し出して、レティシアと同じように、綺麗な水を神官の手でかけてもらう。
きらきらとフェリス様の金髪が光を弾いて、溜息がでるほど、美しい……!
あああ、いま、この瞬間を、お写真に収めたい……!
何も緊張しなくていいんだよ、レーヴェの水って言うなら、ディアナの水すべてがレーヴェの水だからね、神殿での沐浴っていうのは、ようするに、形の問題かな……。俗世から離れて、身を清めています、的なね、レーヴェ御本人なら、ま、人間の好きな儀式ってやつだな、て笑うよ、とフェリス様が昨夜、お茶してたときに、説明してくれた。
儀式にドキドキしつつ、オタ活にも余念ないレティシア(笑)
今日コミックス②のカバーデザイン見せて頂いたんですけど、とっても綺麗です!
帯が可愛くて秀逸!
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