レーヴェ神殿での逗留について 12
「フェリスさま?」
何があっても、一生フェリス様を推すのだー! とレティシアが燃えていたら、 フェリス様が何故か真っ赤になっている。
「いや……あの……」
「どうしました? お顔が赤く……、お熱が?」
「いや……。僕は、あまり……人に……そんなに好かれたことがなくて……」
「……? それは大いなる誤解です。フェリス様はみなさまにとーっても好かれておいでです。……王太后様はちょっと特殊な例で、うちのフェリス様は愛され体質ですからね! 竜王陛下と違ってフェリス様は人見知りされるから、皆様は、フェリス様、大好き―! って、ぐいぐい行けないだけです」
レティシアは何と言っても花嫁だから、多少ぐいぐい行けちゃうのだ!
フェリス様って凄い聡明な方なのに、こと、自分のこととなると、謎の過小評価しまくりだからね……。
突然、海の底に沈んでいってしまわれるのよ。
私だってフェリス様大好きなんだけど、フェリス宮の人も、シュヴァリエの人も、騎士団の人も、ディアナ
宮廷の人も、みんなフェリス様大好きなのにね。
「ぐいぐい……、うちのお嫁さんが……相変わらず、可愛くて……おもしろい……」
フェリス様の薄い唇が笑いを堪えている。
「フェリス様。いいんですけど、乙女に、おもしろい、はたぶん誉め言葉じゃないかと……」
「すまない。僕の姫。もっと気の利いた誉め言葉の言える男をめざす……」
「いえ、いいのですが……」
フェリス様の善意は伝わるからね。
いつも、レティシアと話してて、おもしろい本を見つけた無邪気な子供みたいに喜んで下さるから。
「十年後、老けてても、レティシアに推して貰えるような、よい男を目指すから」
「二十七歳は老ける粋じゃないです。それに竜王陛下のどの絵姿見ても、老けておいでの御顔がないので、フェリス様もあまり老けないのでは……?」
前世の実感を持ってお伝えするけど、二十七歳はまだまだ若いよ。
会社の先輩も、そう言ってたよ。
それに竜王陛下なんて、たくさんたくさん絵姿あるけど、ずーっと美青年の御姿ばかりよ。
おじいちゃんどころかおじさんの竜王陛下すら一枚もないわ。
「レーヴェ……。いや、貌の造作は多少似てるけど、僕は不滅の竜王陛下ではないから」
竜王陛下って不滅なのかしら? まあ神様だし、死ななそうではある!
「でも御一族ですし、きっと何処か似ておいでですよ。……もちろん大人っぽいフェリス様も素敵だと思いますけど……」
でもねぇ、フェリス様って、既に老成してるから、何となく十年後も、御姿あまり変わってなさそうな気がする。わりと、この御姿のまんまなんじゃないかしら?
「レティシアは、どんなのが好き? レーヴェみたいに、ずっと老けないのがいい?」
「……? 私は、フェリス様なら、どんな御姿でも大好きです」
ぽん! ぽん! ぽん! と花瓶に飾られてる薔薇たちが音をたてて咲き始めた。
大きな窓の外の桜の樹も、不意の風にさざめいて、薄紅色の花びらを散らして、その花びらがお部屋のなかにふわふわと零れて来る。
……春の陽気かな?
なんだか、お部屋の温度、一、二度あがったかも……?
「そーなんだよなー、オレずっと若いから、邪神とか苛められるのか? たまに老け顔に化けとくか? レティシア、あんまりフェリスをおだてると、うちの坊やびっくりし過ぎて発火するぞ」fromレーヴェ(笑)
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