神に捧げられた剣について
「レーヴェ。竜王剣をちゃんと管理して下さい」
せっかくレーヴェ神殿に来たので、何冊か見せてもらいたかった書物を運んでもらい、書き物机に一人座したフェリスが、この世ならぬ偉大な気配に向けて、小言を言う。
「そんなことオレに言われてもなあ……」
だらしなく顕現したディアナの美しい守護神は、長い黒髪を掻き揚げる。
「レーヴェに言わなくて誰に言うんです。現世では、あなたか兄上の剣ですが、あの様子ではとても……」
あの様子では、竜王剣本人は、歴代千年のディアナの王たちを、自分の持ち主などとは認識しておるまい。ディアナの子らは、レーヴェの子供たちだから、と等しく慈しんでるだけのようだ。
「レーヴェがレティシアを気に入ってる話も……、竜王剣にしてたのですか?」
「いや? オレは久しくあいつとは逢ってない。あいつも耳がない訳じゃないから、マリウスの話だの、レティシアが攫われた話だの、宝物庫で欝々と聞いては、気を揉んでたんじゃないか?」
「欝々と気を揉むタイプの剣には思えませんでしたね。誰かさんそっくりの明るい御気性で……」
「剣は主に似るからな! たぶんフェリスの剣は、生真面目で、人に譲り過ぎて損するタイプだな!」
「おじいさま……」
おもしろがるレーヴェに、フェリスはふるふる肩を震わす。
「まあまあ怒るな。あれはあれで、心配してるんだと思うぞ。ガレリアの魔導士ごときなら、フェリスに任せておけるが、リリアがレティシアの身を狙うようならオレを呼べ、て言ってるんだと……」
「レーヴェの剣といえど、神を斬れるとは思えませんが……」
不思議そうに、子供の貌でフェリスは、黒髪のレーヴェを見上げる。
「そりゃそうだ。神を斬るような力はないが、あれはもともとが斬る為じゃなくて、守護の為の剣だ。持つと、守りの力が増すんだ」
「斬る為じゃなくて、守る為の……?」
「うん。昔、名の通った刀鍛冶がオレの為の剣を作りたいって言ったけど、オレ、竜だし、べつに剣いらないって言ったんだ。そんでもどうしても捧げたいって言うから、じゃあ、人を殺す剣じゃなくて、守る剣を打て、それが打てたら貰う、て言ったら、打ちあがったのが、あそこに飾ってある竜王剣」
「守るための剣を……」
神代の時代に、神剣を打ったのは、どんな才気に溢れた刀鍛冶だったのだろう?
「そんで、現役当時はオレが使ってたから、オレの竜気も帯びて、千年、ここで御神刀として祀られてるから、人々の祈りも籠って、昔より神力あがってるんじゃないかな? でもなにせ御神刀だから、行事のときくらいしか活躍の場もないし、近世はディアナ王家も人間らしい子が増えたから、なかなか竜王剣を扱えるような子はいなくて……きっと、あいつ、退屈……」
「……僕だって扱えませんよ。そもそも僕の使うべき剣じゃありません」
退屈、と言いかけたレーヴェに、フェリスは細い眉をあげる。
「……オレに似た子がいるなーとはずっと思ってたと思うけど、フェリス、レティシアが来て力増してるから、余計、こいつならと思ったのでは……」
「神剣にレーヴェの娘の心配して頂けるのは嬉しいんですが、………レティシアは僕がちゃんと護ります」
ほう、とフェリスはひとつ溜息をつく。
「それに義母上もレーヴェの娘ですから」
マグダレーナを泣かしたから、と竜王剣は言っていた。竜王剣が義母上を泣かせた理由はわからないが、フェリスとて、好んで義母を泣かせたい訳ではない。毎度、何故か意味不明に怒られてはいるが。
本日うちのいちご大好きな愛犬王子誕生日! 14歳おめでとう!
毎日可愛くいてくれて幸福にしてくれてありがとう!
4/14迄、各電子書店フェアで「五歳で、竜」小説&漫画30%セール中です♪
4/1「五歳で、竜」コミカライズ10話が各社で配信されました♪ちびドラゴン回♬
「五歳で、竜~」書籍四巻&コミカライズ一巻発売中です♪
活動報告に表紙&試し読みなど載せてるのでご覧ください♪




