ディアナの麗しの家族の肖像 11
「そうじゃ。リリア僧はおかしな騒ぎを起こしたうえに、竜王陛下を邪神と愚弄すると聞いた。ディアナの土を踏むにあたわぬ」
王太后様!
そこだけは気が合います、竜王陛下推し組として!(フェリス様の次にですが)
「リリア教は、当代の大司教カルロ殿に代替わりして以来、どうも排他的なところが増しておりまして……、ディアナ以外の地でも問題を起こしているようです。このカルロという御人が、どうもいたくレーヴェ様を嫌っているようで……」
マーロウ先生の御言葉。
「神に仕える身で、……なんと罰当たりな」
「ガレリアの王ヴォイド殿は困った大司教をお諫めにならないのですか?」
嫌そうに眉を潜める王太后様と、気がかりそうなポーラ王妃様。ううん……とめてくれそうにないと思う、あのガレリアの王様。
「その昔、フェリスがガレリアに行った折にはどうであった?」
「……フェリス様がガレリアに?」
レティシアは金色の頭を少し傾げた。
「むかし、少年の頃にね」
いえ、いまでも年齢的には少年の域ですよ、フェリス様。
フェリス様が十七歳なのに、老成されすぎなだけで。
「……あの頃はそんな、邪神の国の王子と意地悪されたりは……」
記憶を辿るようなフェリス様。
いいなあ、ガレリアの人、いまより小さいフェリス様に会えたんだ。
「丁寧にもてなしていただきましたが、……そうですね、リリア神殿を訪れた折に、聖堂のパイプオルガンが何故か鳴りだして……その折に、ディアナの竜王陛下を邪神と憎む一派もいるので身辺にご注意を……と忠告頂きました。その僧の名が、確かカルロ……」
まあ。
少年のフェリス様に、そんなことを?
それは善意なの、嫌がらせなの?
「そんなことを言っていたのは、そのときはその僧一人で、他のリリア僧達は、ディアナからの客人を喜んでくれていました。ディアナからのお客人を、リリア神も喜んでいらっしゃると……」
ガレリアのリリア神殿で、フェリス様が、リリア神の神像を見上げてたら、レーヴェ竜王陛下がリリア神様に話しかけてるみたいだった。
それは神話の絵巻みたいなワンシーンだったから、たぶん悪意のないリリアの僧なら、レティシアと同じように思ったはず。
「おかしな者が主座について、それからリリア僧の動きがおかしくなったのかも知れぬな。もっと敬虔な者が代替わりする予定はないのか、マーロウ」
「現リリアの大司教カルロ様を、ガレリアのヴォイド王は重用しておいでですので、なかなか……、先日のディアナでリリア僧が起こした竜王剣の騒ぎで、足場の盤石でない方なら、主座交代でもおかしくなかったとは思うのですが……」
フェリスとカルロの話は533話の「異国の少年」エピソードにて。




