ディアナの麗しの家族の肖像 7
「レティシア姫が私の母になるところだったとは……、父上より私のほうがまだレティシア姫には年が近いな」
うにゃー、何故この人はその縁談話を蒸し返すの。
せっかく苺摘みの話で、ルーファス様の御機嫌がなおりかけたのに……。
「マクシミリアン殿の息子さんのほうが、僕よりレティシアに近いでしょうね」
フェリス様が冷たい美貌で親戚の方にお返事してくれた。
「最初にレティシアとのお話を頂いた時は、少々、歳の差に驚きましたが、いまは、フェリス宮いやシュヴァリエ一同、佳き姫を御推薦頂き、心より、義母上に感謝しております。到底、どなたにもこの得難き姫を渡せません。レティシアは僕の大事な花嫁です」
そうだわ、さすが我が推しフェリス様、軌道修正ありがとうございます。
何だか知らないイージスおじいちゃんとの縁談より、王太后様に感謝の御茶会なのよ。
「私、おかしなことばかり言ってしまう姫なので、フェリス様のところに来られて本当に嬉しいです。王太后様、サリアの叔母の占い師の話をとりあわずにいて下さって本当に感謝しています」
レティシアとアレクとの縁談もあったと、こないだサリアでアレクの女官に聴いて、倒れるかと思ったわ。そんなの毎日がアレクに疲れすぎて、五歳にして、心労でハゲちゃうわ。
フェリス様はとってもとっても貴重よ。
美貌なことより何よりも、何でもレティシアの話をおもしろがってくださるのよ(稀有……)。
「……それは神殿と魔法省の管轄の話じゃ。妾はディアナの先見たちを信じている。ディアナの先見はレティシア姫とフェリスの婚姻は吉と占った」
「王太后様、まことに嬉しい御言葉、ありがとうございます」
「当然のこと。我らはディアナの魔法に、何処よりも信をおいておる。さればこそ、レティシア姫に難があったという王宮の結界の綻びは我らの恥ぞ」
「……御言葉、もっともにございます」
マーロウ先生とセフォラが恐縮している。頭を下げるセフォラの滝のような銀の髪が輝く。
「……誰ぞ手引きした者がいるかもしれませんね」
不穏な影を落とすようなマクシミリアン様の一言。
もうこの人、余計なこと言いに来たのかしら……。まさに親戚のおじさん……。
「そうでもなければ、容易にディアナ王宮の結界が破れるわけが……、」
「フェリスの花嫁を害して、誰か得する者がディアナにおるか? 言うておくが、妾はやっておらんぞ? 妾が推挙した花嫁じゃ」
王太后様、ナイス、セルフ突っ込み……。
やってないって言っても、王太后様が意地悪したんじゃ、的な視線があるとこが、王太后様もコワモテすぎて損するタイプ……。
「先のリリア僧一斉検挙で、僕がその残党に恨みを買った為かと……」
「フェリスと縁組したかったゆえ、レティシア姫を怨む者もあるやも知れぬ。フェリスの縁談の話が決まっただけで何人も倒れた者もあったと聞く」
「それは僕は存じませんでしたが……」
フェリス様。
それは憧れのフェリス様の御婚姻で倒れる方もいますよ。
いつもながらに、謎に自己評価低すぎですよ、我が推し。
フェリス様と縁組したかったんじゃなくて、ガレリアの王様はフェリス様の花嫁を見たかったみたいだけど、本当に迷惑な話だったわ……。
「ディアナの竜王陛下の血を引く方と結婚することは、国や家の繁栄や、長寿にも繋がると、こちらに来てから、教わりました」
レティシアは、髪を梳かしてもらいながら、リタやサキに教わった話を思い出す。
竜王陛下の血脈、と想いながら、ディアナ王家の方々を見つめると、ちょっと不思議。
見るからに似てるのは、絵画の竜王陛下と双子のようなフェリス様くらいだから……。
最強寒波、お気を付けて。私も昨夜、これ半分くらい書いて眠っちゃってました。皆様も、きっと知らずに、お身体が寒さに疲れてると思いますので。雪の多い地方の方、とくにお気をつけて。




