姫君の御仕度 2
「レティシア」
「はい!」
「そんなにわくわくした瞳で見つめられると緊張する」
眩し気に微笑むフェリス様の麗しさよ……!
「そうですか? お邪魔になるようなら、瞳を閉じておきます!」
嬉しいー!
やっぱりねやっぱりね、背がもうちょっと高いと嬉しいの!
みんなを見上げてるこの位置だから使える魔法もあるとは想うけれども!
(ちなみにそのちびっこならでは魔法の項目、ぜんぜん劣等生ですが……)
だってねだってね、長身美貌のフェリス様にちびっこレティシアをエスコートして頂くのがちょっと申し訳なさ過ぎて……。
いえ、我が推しフェリス様は、どんなときも輝いてますけども!
この際、美人とまでは高望みしないから、何か行事の時にはね、背丈がね、もう少しあれば……!
「ううん。瞳は閉じなくてもいいよ。ちょっと僕の魔力が触れるけど、怖がらないでね……」
「はい、フェリス様」
御言葉通り、フェリス様の魔力がレティシアに触れて来る。
そのフェリス様の気に満ちた波動はとても心地いい。
先日、悪い魔導士に、ディアナ王宮からガレリアの神殿に魔法で転移させられたときは、本当に気持ち悪かった。船酔いというか、乗り物酔いというか……。
魔力にも相性があるのか、単に技術力の差なのか。
サイファの為に、フェリス様にサリアへ連れていってもらったときは、隣の部屋に行った移動感すらないほどだったのに……。
「……まあ! まあまあまあ!」
「なんてお美しい、レティシア様!」
「これは……」
サキ、リタ、レイの声が聞こえる。
ホント? 美しい? フェリス様ちょっと盛って下さったのかしら?
「……フェリスさま?」
わあ! 間違いなく、自分の声だけど、ちょっと大人っぽいかも!?
そして、さすが、フェリス様。
ドレスも大人サイズの柔らかい薔薇色のドレスに変えて下さってる。
ちっちゃいレティシアのドレスのまま大きくなって、つんつるてんにならなかった!
「フェリス様、大丈夫ですか? 御顔の色が……」
どうしたのかしら?
フェリス様がフリーズしてる。
なに、なに、なに!? 失敗かな!?
レティシアは背が高くなってて、フェリス様の目線が近くて嬉しいのだけど……。
「ちょっと……、こんな綺麗なレティシア……やっぱり他の人に見せるの嫌だな……」
何故か、フェリス様が赤くなって、困ってる。
何故に?
フェリス様の魔力で大人にしてもらってるから、フェリス様の美貌も分けてもらって、本体より美人になってるのかしら?
「まあ、坊ちゃまったら」
「そうですね。これは……レティシア姫が成長されるごとに警備の増強が必要になりそうです……」
どういうことなの、レイ。物騒ね。
「間違いなく、ディアナで一番美しい姫君ですわ! ええもちろん、大きくなられたら、レティシア様が誰より美しくなられるのは、リタにはわかっていましたけれど!」
えっへん! とリタが誇らしそうに胸を張っている。
「フェリスさま……?」
……? えっと、鏡は……。




