貌も、性質も、育ての親にも似るのかもしれない
フェリスが、五歳の時に、病で母が死んだ。
十歳のときに父王も死んだが、
ステファン王の死は国王の死として、ディアナの哀しみとなったが、
フェリスにとっては、母の死こそが、この世界の終わりのようだった。
逆に、父の死は、まるで他人事のようだった。
母が死んだときに、ステファン王が
「これからは、王妃マグダレーナが母のかわりを」
と言った時、いっそ僕も死んだ方がマシだ、
と叫びたいのを耐えていた子供の自分を、フェリスは今も覚えている。
フェリスとマグダレーナ王妃は、絶望的に気性があわないのだが、
気性があったところで、誰も死んだ母の代わりになどならない。
ステファン王は凄く悪人という訳ではないのだが、
いろいろと他者の気持ちに無神経で、
それが為に、マグダレーナ王太后もあんな風に拗れてしまった。
たまにだけど、王宮の孤児のフェリスにも、優しくしてくれる人はいた。
気紛れに心配してくれる貴族もいた。
でもそれは、母ではない。
母が死んだときに、フェリスにとっての家族は、いなくなったのだ。
父は王であって、フェリスの家族ではなかった。
兄のマリウスにとっては、また、違うかも知れないが……。
父と兄と義母は軋みつつも家族だったが、
そこに異分子のフェリスが入れるはずもない。
無茶なことを強要されることを、義母が嫌がった気持ちも、フェリスにもわかる。
(フェリスはいい子ぶりすぎなんだよ。嫌なときは、ちゃんと嫌な顔したほうがいいぞ?)
明るい声で笑う、いたずらっ子のような竜の神様が話しかけてくれるまで、
幼かったフェリスの精神は、王宮の片隅で、闇に落ちていく寸前にあった。
(フェリス様は、優しい方です)
「女の子に優しいなんて初めて言われたな……」
自分は優しい人間ではないので。
優しくあるよう、気をつけてはいるのだが。
少しは他者に優しいところもレーヴェに似ればよかったのだが。
数年後、竜王陛下そっくりにフェリスが成長したので、あからさまに人々の接し方が変わった。
レーヴェがフェリスを育てたようなところがあるので、
遠い遠い竜王陛下の遺伝子が、
ゆっくりと血の底から揺り起こされてきたのか、
あるいは何かの皮肉なのか、そこはわからない。
(私より先に死なないで下さい)
フェリスは少し大きくなって強くなった(いまもまだ弱いけれども)。
だから、今度はフェリスが、自分より、ちいさいレティシアを守ろうと思う。
昔、フェリスがしたような嫌な思いを、絶対に、レティシアにはさせまい。
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コミック三巻表紙❤
五歳で、竜コミック連載