琥珀の瞳の姫君
「もったいなくないよ。僕の心が常に僕の妃のもとにあるのはあたりまえでしょ?」
「う……、そうなのですが」
竜王陛下に生き写しの美貌で、フェリス様が微笑む。
「僕は多情とは程遠い氷の王弟殿下だから、うちのレティシア以外のことは考えることはないよ」
私は母と義母上を見て育ちました。ゆえに、父上のような恋はしたくありません、と王太后様に言ったフェリス様をレティシアは覚えている。
……フェリス様のお父様の恋が、お義母様をいまなお苦しめ、フェリス様の行動を縛っている。
願わくば竜王陛下のように、ただ一人の妃を永遠に愛したい、と言ってた。
レティシアが未来にそんな妃になれるのかどうか、わからないけど……。
いまのところ、あと少しでフェリス様と結婚するのは、ここにいる、この小さなレティシアなので。
美しいフェリス様のお隣に似合う妙齢の乙女でないのは申し訳ないけど、全力で我が推しをお守りするのだ!
うちの推し、魅力的過ぎて、サリアのアドリアナとかガレリアの王様とか、竜王陛下推しのリリア神様とか、変な人に見込まれがちだから!
「フェリス様、でももし心臓を打ち抜くような運命の乙女とか現れたら、どうぞ私には御遠慮なく……!」
真面目なフェリス様が、私に遠慮して運命の乙女を見逃してはいけないわ!
「僕の心臓なら、黄金の髪に琥珀の瞳の乙女にもう撃ち抜かれてるから、心配しないで」
「うう……琥珀の瞳……?」
それって……とレティシアがフェリスの碧い碧い瞳を見つめていると、レイどころかサキまで笑いを堪えている。
「フェリス様。なんだか御機嫌です……?」
「うん。レティシアが楽しかったようなので僕も嬉しい。僕の話以外で、何かいいお話は聞けた?」
ほぼほぼフェリス様のお話してましたが……!
「はい、近頃の王太后様のことなどもお聞きできました」
それはちょっとだけ情報収集できたの。
「義母上はどんな御様子だと?」
「私を攫った悪い魔導士が王太后宮の女官を真似たので、その女官を処罰しては、と御進言する者がいるけれど、王太后様はお聞き入れにならないと……」
「それは義母上が正しい。その女官は容貌を盗まれただけで、彼女自身には何の罪もない」
「はい……!」
レティシアもそう思ったけど、フェリス様も同じ見解でよかった! とほっとする。
「あとは、王太后様ははっきり物を言う人が好きなので、時が経てば、きっとレティシア姫とお気があいますわ、とお慰めいただきました……」
とほほ。フェリス様の側妃を選びません! と王太后様との御茶会で私が喧嘩買っちゃったのを皆知ってて、そう励ましてくれたんだけど、普段の私はべつに物事に鋭く切り込むタイプの女子でもないのよ……。あれは必死だっただけで……。
おはようございます! あとちょっと書いてあげようとしてたら、昨日寝ちゃいました!
なので久々の早朝更新!




