薔薇の姫の夢守り
「ダンス? 誰と踊ってたの?」
「そ、それはもちろん……!」
ああ。フェリス様に心配かけない為とはいえ、嘘をつくのは心が痛む。
ましてあんな憎たらしいヴォイド王を蹴とばしてたのに、あれを我が推しフェリス様に言い換えるなんて、罪深い。
嘘にも程がある、口がもげる……。
いや。
いやすぎるー。
「う……うう……」
レティシアの脳内で、ヴォイドとフェリスが並んで、「もちろんフェリス様とです!」と言わなければ、と思いつつ、口をおさえてフリーズしてしまった。
「……レティシア? だいじょうぶ? 僕の姫?」
フェリス様が何故か色気たっぷりに、レティシアを覗き込んでいる。
いや御本人は色気たっぷりなつもりは全然なく、純粋にレティシアを心配されてるのだと想うけど……(何といってもフェリス様、天然だしね)。
「うう。フェリス様、わたし、嘘をつきました」
無理。やっぱり無理だわ。
フェリス様とダンスの練習してました、というには、ヴォイド王のいやんな映像が……。
「嘘? どんな?」
「……ダンスの練習はしてませんでした。夢に、ガレリアの王様が出て来たので、ちょっと蹴とばそうと……、それをフェリス様とダンスの練習してたって嘘をつこうなんて、レティシアは罪深いです……」
ああ、フェリス様、レーヴェ様、ごめんなさい。
懺悔として、お菓子我慢します……。
「……レティシアが、ヴォイド殿を蹴とばそうと……?」
寝巻のドレスに隠れたレティシアの白い裸足の足を見下ろして、フェリスがきょとんとしている。
「フェリスさま、罪深い嘘でした……ごめんなさ……」
「……どうして嘘をつこうと想ったの?」
「あの……朝から……ら、乱暴な姫だと想われるかな、と……」
起き抜けからガレリア王の夢の話なんかして、フェリス様に心配かけたくなくて、とは言い難く。
「僕が心配するから?」
「ううう」
フェリスがレティシアに額を寄せる。
「フェリスさま、ち、ちかいです……」
「うん。寄せてるから」
「いえ、あの、そうじゃなくて……」
レティシアはフェリス様と額をくっつけあってたら、綺麗なお貌に緊張するとともに、何だかとっても安心して、申し訳ない! も、心配かけたくない! も、ふんわり溶けてしまった。
「……レティシアが悪い夢を見ないようにここで番してたつもりなのに、役立たずでごめん」
「悪夢ではありません。清々しく、蹴飛ばしておきました! きっと、ヴォイド王が怖くなかったのは、フェリス様が添い寝してくださったおかげだと……」
ひそひそと、吐息の触れる距離にいるフェリスにレティシアは告げる。
本当に怖くなかったの。
昨日帰ってきたときは少し疲れてたけど、なんだかレティシアの身体にやたら力が漲ってるような……?
仇敵ヴォイドの映像を最推しフェリスに変換するのに、良心の呵責に苛まれるレティシア(笑)
このお話がお気に召したら、ブックマーク、作者のお気に入り登録、☆でポイントなど頂けると嬉しいです☆
9/2に五歳四巻と、五歳@comic一巻が二冊同時発売です!
ご予約頂けると幸いです!
活動報告に四巻SS特典内容&四巻表紙&コミック表紙&コミックちらみせ&もろもろ御礼など載せました!(もう予約しましたって方ありがとうです!)




