遠い国で、一人で泣いてる小さな君を護りにいきたい 2
「レティシアは、僕のところに」
レーヴェの言葉に波立っていたフェリスの感情が少し鎮まる。
「そうだよ。あの子はおまえのところにいる。レティシアはフェリスの婚約者、フェリスの妃となる姫、このオレの娘になる娘だ。もう、レティシアは一人じゃないだろう?」
サリアが花嫁交換を申し出ている、と言われたとき、いままで感じたことのない怒りを感じた。何故レティシアを取替のきく物のように扱うのか、何故フェリスがそんな話を受け入れると想うのかと。
レティシアが魔導士に攫われたと聞かされたときも、フェリスからレティシアを奪おうとする者を粉々に打ち砕きたいと想った。
「兄上や姉上がレティシアの身を案じてくれて、僕も嬉しかったです。僕のことを案じて下さるより、もっと嬉しかった」
「マリウスはあれだな、魔力はないが、嫁には恵まれてるよな。ポーラとレティシアが嫁じゃマグダレーナも太刀打ちできまい。ちっともフェリスに怯まないあたりが似てるな、二人とも」
「兄上のところは温かい家庭過ぎて、僕はちょっと居心地わるいほどなのですが、……それでも僕のことも気にかけて下さる姉上には感謝しています」
マリウスの結婚話が持ち上がっていた頃、フェリスは心密かに、ポーラになればいいのになあと想っていた。ポーラは妃候補たちのなかでもっとも邪気がなく、フェリスに対しても、自然に接してくれる人だった。
「家族が増えるのはいいもんだ。とくにフェリスのところは静かすぎた。レティシアが来てから、フェリス宮の者も楽しそうだぞ」
「僕と気の合わぬ姫だったらと、案じていた我が宮の者達も、レティシアに夢中です。うるさ方のレイまでも」
「可愛いからなあ、うちの娘」
ぱたぱた、ぱたぱたと、フェリス宮に、レティシアの足音が響く。
くまのぬいぐるみを片手にフェリスの姫君は日夜、楽しそうな事を探している。
そうやっていつもレティシアが笑っていられるようにしてあげたい。
今日のように嬉しさで涙するのはいいけれど、もう悲しみで涙を零すことがないように。
「ルーファスがレティシア好きすぎて驚くな」
「でもレティシアに言わせると、ルーファスはレティシアと同じフェリス様同担なのだそうです」
「罪作りなちびちゃんだ」
「レティシアらしいと言うか……」
レティシアは聡い姫なのだが、ときどきとんでもなく鈍い。レティシアが鈍くて助かる時も多々ある。
「大きくなったらレティシアももう少し自分の魅力に気が付くでしょうか?」
「いやー? フェリスの嫁さんだからな。二人して、そのへんは鈍いまんまじゃないか? それも可愛いと想うが」
確かに、成長したとしてもレティシアが思いを寄せる貴公子を捌く姿なぞ、到底想像できない。
「レティシアはフェリス筆頭に癖のあるのにモテるタイプだから、頑張らんとな、フェリス」
「肝に銘じて、ガレリアのヴォイド殿のような方に気をつけます」
「ヴォイドはフェリスのお気に入りが気になるんだろうがな」
小さなレティシアがディアナの王太子の剣を捧げられてしまうので、大きくなったら大変だろうな、と思いつつ、いつの日か成長したレティシアに逢う日が楽しみだ。
おはようございます! 諸々パタパタしてて、やっと更新できました! 梅雨入りですね。梅雨はどうなるんだろうと思ってたらやっと来ました。獲れたてのなすと胡瓜頂いたんですけど、わーもう夏野菜が出来上がってくる頃に、と驚いてます!