きっと、我儘を言うのが下手なのだ
「……のせいで」
「ん? 何だね、レティシア姫」
「この顔のせいで、人に嫌われて困る、て、笑っておいででした。
昨日、初顔合わせのとき」
あれは嘘ではなかったんだ。
レティシアを笑わせようとしてたんではなくて、
あの綺麗な人は、本当のことを言ってたんだ。
神話の神様みたいに美しいのに、孤独な影の見える婚約者様。
何でだろう?
不思議。
本物の神様の竜王陛下のほうが、
フェリス様より、よほど人懐っこそうに見える。
まあでも、描いたのは、後世の画家だろうから、
現実の竜王陛下というよりは、
多くは、人々の幻想の中の竜王陛下なのだろうけれど…。
「好かれすぎて困る、と言って過言ではないと思うが」
先生は悪戯っぽく笑った。
妙に安心。
フェリス様の子供の頃からの先生がよさそうな人で。
「王弟殿下は、人あしらいが苦手でいらっしゃるから、
過剰に好かれるのも嫌われるのも、
どちらもうまく扱いかねて、困惑、なのだと思うよ」
あれ……?
そう言えば、今朝、誰かが…
(性格は全然似てないのに、顔だけオレに似て派手だから、可哀想すぎるな)
て言ってた……。
あれ、何だったんだろう?
う、うん?
フェリス様が似てるのって、竜王陛下……?
「天性の人たらしの竜王陛下に 御気性も似てらしたら、
フェリス様も、もう少し、楽なのだろうけどねぇ」
「きっと……、もう少し、
フェリス様が我儘を言うべき! ということですね」
「我儘を?」
なんだか、ランス先生が、白い御髭をぴくぴくさせている。
ん?
先生? もしかして、笑いを堪えてる?
へ、変なこと言ってるかな、私?
「フェリス様、きっと、いろいろ気を遣ってご遠慮しすぎで……
竜王陛下のように我儘に、己の望みに正直であるべし! ということかなあと……」
幻聴もそう言ったし。
もう少しうまくやればいいんだ、って言ってた。
「そ、そうだね、姫」
「な、なんで涙ぐんでるんですか、先生。
違ってました?」
先生ー!!
泣くほど笑うってどういうこと!?
そんなにはずした!?
「いや、違ってない。レティシア姫は正しい。
王弟殿下はもっと我儘を言っていい」
「先生ー、賛成なのに、なんで笑うんですかー」
「いや、おかしいやら、可愛らしいやら。
こんなに小さな人が、まっすぐに、一番正しいことを言うんだな、と」
小さくはないんですよ、本当は。
中身は、見かけよりはちょっと老けてるんですよ。
「失礼ながら、遠方よりいらした姫の幼さを、
私は少しばかり、案じておりましたが、
何の何の、王弟殿下のところへ、よき方がお嫁に来てくれました」
「は、はあ…」
めちゃくちゃ笑われたけど、喜んでくれてるみたい。
それは何より。
ごめんね、先生。
大事な愛弟子の花嫁、
小さいうえに、中身がちょっと怪しい姫様ですけど。
「レティシア姫の明るさや、清らかさが、
末永く、王弟殿下を守ってくださいますように」
何故か、ランス伯から、膝をついて正式な騎士の礼を頂いてしまい、
慌ててレティシアは居住まいを正す。
「こちらこそ。王弟殿下の敬愛するランス先生が、
ずっとフェリス様と未熟なこの我が身を導いて下さいますように」
レティシアは、今朝習ったばかりのディアナ風の所作で、ランス伯爵に祝福を与えた。
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コミック三巻表紙❤
五歳で、竜コミック連載