ラデュレのマカロン
「美しいですね。他の宮で花が枯れる冬も、
王弟殿下の宮だけは、花が咲き誇ると言われる庭園」
テラスのテーブルで、ティーカップに手を伸ばしながら、
セドリック伯爵夫人が褒めた。
よかった。
礼儀作法の先生て、怖そうな先生想像してたけど、
そんなことなく、普通の噂とお茶とお菓子の好きそうな御婦人だ。
「そうなのですか? こちらの宮の庭師が優秀なのでしょうか?」
でも、確かに、ここの薔薇、とっても綺麗。
綺麗っていうか、生き生きしてるっていうか。
「どうなのでしょう? 庭師は何処の宮も真面目に手入れしてると思うのですが、
地上の花々も王弟殿下には甘いのでは? と女達は噂してますが」
「伯爵夫人、フェリス様は人気がありますか?
御本人は、私は嫌われ者の変人だからって仰るんですが……」
我が人生初の心優しい推し様を、取り巻く環境が心配だ。
問題があるのならば、排除したい。
可憐な刺繍より、渉外担当系の方が、前職の経験が生かせそうな気がする。
「まあ、フェリス様ったら……
こんな可愛い花嫁様に御心配おかけして、困った方ね」
何と答えたものか、と少し悩む様子で、夫人は扇を揺らした。
「フェリス様は、御自身が人を避けていらっしゃいますし、
先ほど申し上げたように、王太后様とちょっと難しいので、
氷の美貌の王弟殿下として、孤高を保ってらっしゃいますが…」
うふふ、と微笑が漏れる。
「人気があるかないかというと、本当はありますね。
フェリス様には御実家の後ろ盾がないのですが、あの美貌と才気ですから、
娘を嫁にやって王弟殿下の後ろ盾となりたい高位の貴族はいるんですの」
「え。では…」
そういう姫を妃にしたほうが、フェリス様にはよいのでは?
サリア王家の娘といっても、レティシアでは……。
「恐らく、レティシア様とのご結婚を、王太后様が強くお奨めになったのは、
サリアとの縁を強固にすることと、……」
「フェリス様の力を削ぐためですか?」
ディアナの皇太子殿下は五歳。
レティシアと同い年。
いま、もし、国王陛下に何かあれば、皇太子殿下より、
フェリス様に王位を、という声もあがるだろう。
「ええ、きっと。レティシア様は賢い御方。
ここだけの内緒のお話よ?」
「はい、先生」
優雅な先生が、
ここだけの話よ?
て言うことは、
みんなが知ってる、公然の秘密ってことなんだろうなあ。
「レイ、薔薇のマカロンをたくさんお詰めして?
先生に可愛いお土産の小箱を御用意してください」
ああ。
東京で仕事してたときも、
ラデュレのマカロン探して、取引先に持って行ったなあ。
雪自身はおしゃれと程遠かったので、
何じゃらほい、それはいったい、と思ったけど、
相手先の御担当者の奥様の好物のお菓子とお聞きして。
お買いものに行ったら、
ラデュレのお店、とっても可愛かったなあ…。
いや、フェリス様が、
レティシアの為に用意してくれた部屋の方が、
もっと可愛いけども。
「レティシア様って、小さいのに、とってもしっかりしてらっしゃるのね。
案外、フェリス様とお話があうのかも」
「私がこちらのことわからないあまりに、フェリス様にご迷惑かけたくないので、
いろいろ教えてください、先生」
何とレティシアとの結婚自体、フェリスの力を弱らせる為とは。
まあまあ性格悪いんじゃないのかしら、王太后様……。
なのに。
(こんな老けた結婚相手で、ごめんね)
て、レティシアの心配ばかり、してくれた。
(私が必ず守るから)
と言ってくれた。
「うちの推し様、ちょっとお人好しすぎなのでは…」
「え? レティシア様? 何か仰った?」
「いえ。何でもありません。マカロン、美味しいなーって」
「ああ、本当ね。なんて上品な甘さでしょう…」
薔薇のマカロンにかけて誓うわ。
冷たい見かけによらず、お人好しの王弟殿下を、私が必ずお守りする!
「好き」「趣味似てるかも」「面白い」「続き読みたい」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします。作者のモチベーションも上がりますので、ぜひよろしくお願いします。





コミック三巻表紙❤
五歳で、竜コミック連載