サリアの災いを呼ぶ姫 15
(レティシアは賢い、美しい娘だよ)
精霊さんの厳かな声がした。
(異世界の記憶を持っているから、少し他の娘と違う匂いはするかも知れないが、何処もおかしくない。
可愛い、優しい娘だ)
匂い。
自分は何処かこの世界の人と違うのだろうか、とうまく普通の子供になりきれないときに思ってた。
(十年も経てば、フェリスはみんなから羨ましがられるようになるさ。こんな可愛いお嫁さんをもらってって)
「でも私はフェリス様とのお話を利用しました。美しくも優しくもない娘です」
生まれた国にどんどん居場所がなくなってしまって。
レティシアに肩入れしていたサリアの貴族が不審な死を遂げたりするようになって、とても申し訳なかったから。レティシアがディアナの王弟殿下のところへ行けば、邪魔にならず、サリア宮廷は後継者問題で割れないですみ、叔父様叔母様も安心できるだろうと思った。ましてディアナは富める国。疫病に傷んだサリアにとって、よき婚姻になるだろうと。
レティシアはサリアのことばかり考えてた。
逢ったことのないフェリスの気持ちなんて、到底考える余裕はなかった。
(オレ、したことないけど、政略結婚てそういうものなんじゃないの? 国同士で、お近づきになりましょう、的な)
「精霊さん、政略結婚したことないのですか」
(うん。経験なくてごめんね。……フェリスはさ、王太后からレティシアとの婚姻の話聞かされた時、レティシアのことを自分みたいだって思ったんだよ)
「私が? フェリス様みたい?」
何処も似てないような気がしますが……?
(うん。宮廷で、五歳で、後ろ盾をなくす身の辛さを身に染みて知ってるから。マグダレーナが、フェリスが断るなら、後妻を欲しがってる爺さんにレティシアを嫁がせよう、てフェリスを煽ったから……)
「そこでフェリス様が逢ったこともない私に責任感じることもないような……?」
(そうなんだけど、フェリス的には、なんか見過ごせなかったらしい。あいつ、頭はいいんだけど、ときどきなんか馬鹿なんだよな。まあそこが可愛いとこなんだけど……)
「精霊さん言い過ぎ……フェリス様、馬鹿じゃない……お優しいの」
レティシアは律儀に推しを庇う。でもわかるかも。最初にフェリス様に逢ったときにレティシアも思った。この人、こんなに人じゃないみたいに綺麗なのに、もしかして物凄いお人好しなのでは!? て。
(そんな訳で最初から、フェリスはレティシアを大人の事情から守ってあげたくて嫁にしたんだから、レティシアはフェリスに遠慮なく甘えていいんだよ)
「……私は何もフェリス様に返せないのに?」
(返してる返してる。めっちゃ返してる。フェリスはレティシアが来てからずーっと楽しそうだよ。あいつ、あんなに笑えたんだな、てオレですら、感心してる。レティシアは偉大だよ)
「……ホントに?」
(うん。十年後大きくなって、レティシアはフェリスに恋するかもしれない。しないかも知れない。でも、未来がどうでも、いまこの瞬間に、フェリスの心に一番近いところにいるのはレティシアだよ)
「……それは。凄く凄くもったいなくて……嬉しい、です」
一番の仲良しと自惚れてもいいかな。
何もかも違いすぎるあの美しい婚約者様と、ちょっとだけ他の人より仲良しだと、自惚れてもいいかな。
「もしも私に災いついてたら、フェリス様と、フェリス様の領地やおうちの方にぜったい御迷惑かけたくないので、私のこと成敗して下さいね、精霊さん!」
そうだ。精霊さんに頼んでおこう。精霊さんとっても魔力強そうだし。
(成敗って何……。わかったわかった。うちの大事なレティシアに、そんなの何もついてないけど、心配しなくても、何か湧いてきたら、オレが何とかしたげるから)
精霊さん、なんだか、お父様とかお兄様みたい。
うちの大事なレティシア。フェリス様のおうちの大事なレティシア。
そう呼んで頂くのに、ふさわしい自分になりたいなあ……。
推し活も推し友も意味不明過ぎるけど、
うちの小さい嫁可愛い、とお気に入りのレーヴェじいじ。
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