サリアの災いを呼ぶ姫 12
「陛下、お呼びでございましょうか」
「パルマ公。サリアからフェリスの婚姻について何か言ってきてるようだね」
マリウスは広大な宮殿に住んで、ディアナを治めている。
彼まで届く話もあれば、彼以前の段階で処理される話もたくさんある。
「これは……お耳が早うございますね。何でも、その……レティシア姫が災いを呼ぶのでフェリス殿下の婚姻相手はアドリアナ姫に交換をとサリアの占術師が申したと、王太后様あてに書簡が届いたそうで……」
「結婚式目前に、奇妙なことを言う国もあるものだ。母上はなんと?」
「マグダレーナ様は、馬鹿馬鹿しい、話にならぬ、と。ただ、魔法省と神殿に、レティシア姫の占いに関する鑑定を依頼されております。魔法省と神殿はそれぞれにレティシア姫にそのような悪相は見えませぬ、と回答を王太后宮に差しあげております」
「そうか。レティシア姫の身に何事もなくて何よりだ。……もし何かあったとしても、我が国の優秀な魔導士に祓って貰えばよいだけのことだが」
マリウスは安堵して、思わず微笑んだ。
レティシアを連れて挨拶に参上したフェリスをよく覚えている。
彼の弟は感情の変化が決してわかりやすい性質ではないのだが、それでも幸福そうなことが隠しようもなくわかった。
フェリスと手を繋いで歩きながら、きらきらと輝く琥珀色の瞳で一途にフェリスを見上げるレティシアは、兄であるマリウスの眼にも大変好ましかった。
何よりフェリスを庇ってマグダレーナ王太后相手に言葉を返したという気の強さが気に入った。
そのような豪胆な娘は、ディアナ中探しても見つかるまい。
「フェリスはとてもレティシア姫を気に入っているようだし、サリアの風習は存じあげぬが、ディアナには花嫁を交換するような習慣はない。レティシア姫は我がディアナ王家の一員。余は、まだ幼い身で遠い国に嫁いでくれた余の可愛い妹を悪く言われることを好まぬ」
「御意。陛下。魔法省と神殿から、陛下の大切な妹君、フェリス様の美しい花嫁、レーヴェ様の愛しい娘であるレティシア姫に事実無根の噂を立てられることは非常に不快、修行不足の占星術師は撤回と反省を、と書簡をお送りしてあります」
「それはよかった。もし必要とあらば、余もレティシアの為に文を書くゆえ」
「神殿と魔法省の苦言でイザベラ王妃がこのお話を取り下げて下さることを祈っております。それでもまだ花嫁交換をと言い募られるようならば、陛下の御心をお伝えいたしましょう」
「せっかくシュヴァリエで薔薇祭を楽しんでいるだろうフェリスとレティシアの耳に入って気に病まねばよいが」
「一番よい季節でございますね。シュヴァリエの全ての薔薇が、新たな薔薇の姫の訪れを祝福していることでしょう。祝祭を楽しまれているフェリス様とレティシア姫の御耳を汚す前にこの件収めたいと思っております」
「ああ、そのように頼む」
人生はとても孤独で、誰もが恋しい相手と結婚して、永遠に幸せに暮らせる訳でもない。
それを、この美しい宮殿で育ったマリウスとフェリスは、子供の頃から知っている。
だからこそ、大切な人を見つけたら、決して手放してはいけない。
昨日更新したかったマリウスお兄ちゃん、だいぶ遅刻で(笑)
夜更かし中で、眠る前に読んでくれた方、おやすみなさい、よい夢を!
夜が明けてから読んでくれる方、おはようございます、よい一日を!
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