サリアの災いを呼ぶ姫 3
「レーヴェ様……」
レーヴェ様、フェリス様を守って。
最初にお嫁に来た時も思ったの。
こんなにディアナの神様に似てるフェリス様なら大丈夫、て。
病にも事故にも遭わないって。
でもそれはただのレティシアの願いで、何の保証にもならない。
「レーヴェ神殿からもディアナ魔法省からも、僕の妃であるレティシアを不当に毀損するな、とサリアに苦言を呈してるから、レティシアは何も心配しなくていい」
「不当……」
それは不当な占いだろうか?
確かに、サリアの占い師はイザベラ叔母様の意を受けて、レティシアを占ったかもしれない。
レティシアの何かがいけなかったのか、フェリス様に思うところがあったのか、叔母様はフェリス様の妃にはアドリアナのほうがふさわしいと思ったのかも知れない。
本当は、アドリアナだとて、フェリス様の妃には充分とは言えないだろう。
フェリス様が望むなら、もっと年頃のもっと力をもった家の令嬢と添えるはず。
それに、レティシアを疎んじるイザベラ叔母様も、レティシアを呪われた姫と言った人達も、レティシアを大切にして下さるフェリス様も、ディアナ魔法省もレーヴェ神殿も、知らないことがある。
「サリアの占星術師を恨めません……、いつも私だけが生き残ります。何故、あの呪われた娘だけが、と言われても少しもおかしくない」
フェリスの腕の中で泣きながら、レティシアは知る。
ああ、自分は、これをずっと聞いて欲しかったのだ。
嘘をついているわけではないけど、ずっと嘘を言ってるような気分でいた。
「……レティシアのお父様とお母様の命を縮めた流行り病のこと?」
「その前にも」
「……? その前にも?」
フェリス様の描いたような眉が動く。
驚くときも、悲しむときも、怒るときも、フェリス様は
美しい。まるで告白を聞いてくれる聖堂の天使様の絵みたいだ。
「私がレティシアとして生まれる前にも、この世界でない世界で、雪という名で庶民の娘として生きた時にも、私が十七歳の時に私の両親は事故で天に召され、私一人だけが生き残りました。呪われた娘なのは間違いありません」
「……ユキ? 異なる世界で生きた記憶があるということ? ああ、それで……」
さすが神獣の末裔のフェリス様と言うべきか。またレティシア姫が訳のわからぬことを、とは言われなかった。発音がちょっと違うかもフェリス様、と思ったけれど、フェリス様が昔の名前を呼ぶと、不思議な感覚があった。
「はい。呪いなのか災いなのかわかりませんが、私の両親が二度も若くして亡くなりました。……それを想えば、私はフェリス様の命を縮める存在かも知れません」
毎日フェリス様を笑わせてるから長生きにさせてるかも、なんて、いい気になってたけど、私と結婚なんかしたら、フェリス様が早死にするかも。
アドリアナはあんまり奨めたくないけど、フェリス様には幸せに長生きして欲しいから、婚約破棄されてもいい……ずっとずっと幸せに長く生きて欲しい……。
「僕の愛しいレティシアは誰の命も縮めたりしない。……ああ、では、レティシアがときどき言ってる、二ホンというのは、異界の国なんだね。道理で、探しても探しても、レティシアのお気に入りの本が見つからぬはずだ……」
漢字を教えたい。ちょっと響きが違う。
……いやそこじゃないですけど、フェリス様、私が話した日本の本のこと探して下さってたんですね……すみません。
「天の采配によることを、レティシアが自分の呪いだなんて気に病んだら、サリアの御両親も、異界の御両親もきっと悲しむ。レティシアの幸せだけを望んでらっしゃる筈だ」
私の髪を撫でてくれるフェリス様の優しい指。
「邪神の化身とも言われる僕が保証するけど、レティシアには何の災いも呪いもついてないよ」
「何ですか邪神の化身って。誰が、そんなひどいことを……」
邪神て何なの?
フェリス様とレーヴェ様両方に失礼すぎる。
「ほら。レティシアだって僕が悪く言われたら怒るじゃない? 僕も大事なレティシアを悪く言われて、凄く腹を立ててるよ」
フェリス様が笑った貌が本当に愛しげで、こんなに大事にして頂いてる自分のことを呪われてると卑下したら、なんだかいけないような気分になった。
サリアでレティシアが呪われた姫扱いされたのは
王位継承権で立場を悪くしたいという現政権側の非常に世俗的な悪意なんですけど
レティシア本人は前世と併せて考えても確かに呪われてる、と一人で落ち込んでたのです
でもフェリスは邪神の現身なので気にしないです(…いいのか?笑)
関東でも大きな地震があったと聞いて驚いています。
怖い思いをされた地域の方々お見舞い申し上げます。
もうどこにも地震おきませんように!!
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コミック三巻表紙❤
五歳で、竜コミック連載