竜王陛下は我儘
「あのね、皆。朝から、僕の可愛い花嫁さんに、
僕がモテない話をしてはいけないよ」
「フェリス様」
おお。
フェリス様が、朝から後光を背負ってる。
フェリスの柔らかい金色の髪に、大きな窓から、太陽が降り注ぐ。
朝から、際立って、お美しい。
「は。フェリス様、申し訳ありません!」
「いや。僕がモテてないのはただの本当の話なんだけど、
レティシアが、宮廷内闘争に敗れまくりの嫁ぎ先にしょんぼりしたら可哀想だからね」
恐縮するリタに、フェリスは笑ってる。
それにしても、本当に、似てるなあ…。
「おはよう、レティシア」
「おはようございます、フェリス様」
可愛らしく、レティシアは貴婦人の礼の真似事をしてみる。
まあこれほどまでに、王子然とした方が相手だと、
このタイプの行儀作法も、照れずに自然に出来るなあ…。
「うちのご先祖の神話の絵巻は気に入った?」
「はい、とてもとても、美しいです」
金糸銀糸で縫いあげられ、繊細な細工が施された、芸術品。
いつの時代のものか知らないけど、
これほど多彩な色の糸が存在したことにも驚く。
「あ…」
「ん? どうした?」
「やっぱり、笑った顔も似てらっしゃるな、って」
「僕はこんなに我儘じゃないけどね」
金髪を揺らして、フェリスが、創始の竜王レーヴェの前に立つ。
ほとんど、たったいま神話の絵巻の中から抜け出してきましたレベルに似ている。
「我儘なのですか? 創始の竜王陛下は」
「生まれついての神様だから、とんでもなく我儘だよ」
「? 神様は我儘?」
きょとん、とレティシアは小首を傾げる。
サリアの神は慈愛の女神。
「神様」と「我儘」はサリアでは同列の言葉ではない。
とても遠いところにある言葉だ。
猛々しい武神、男神のディアナの神は、だいぶ様子が違うのだろうか。
生まれ変わる前の日本では、
レティシア(雪)は、
クリスマスにはクリスマスケーキを食べてキリスト様の誕生日を祝い、
お正月には神社に初詣に行き、
お葬式は仏教の御寺に行くという、
日本人以外から見ると、
いったいぜんたいどうなってるの!?
君の国の宗教観!?
という自由過ぎる宗教環境で育った。
よそから見ると、めちゃくちゃなのだが、
「神様は、どこの神様も、みんな有難い」
という、ごく一般的な日本育ちである。
「そう。我が国の、水の竜レーヴェは、気紛れな竜の神。
どんなに呼んでも気が向かなきゃ現れないし、
彼の神の興味を引けば、呼ばれなくても飛んでくる」
「まあそれは、どんな神様も、そんな気もします」
まるでよく知った友人か何かのように、フェリスは創始の竜王陛下を語る。
金と黒の双子のように似た面差しで。
「私には、フェリス様に似てるせいか、とても優しい神様に見えます」
レティシアがそう言うと、
神話のタペストリーの中の黒髪の竜王陛下が、
ずいぶん可愛い嫁が来たな、と満足そうに唇を綻ばせたように見えた。
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コミック三巻表紙❤
五歳で、竜コミック連載