王弟殿下のくまのぬいぐるみ
「ん……、いちご……」
朝の陽の光の気配を感じ、鳥のさえずりを耳にして、レティシアが気持ちよく目を覚ますと、ベッドや床にたくさん落ちてたいちごが綺麗に片付いていた。
フェリス様が手で拾ったとも思えないから、魔法で片付けたのかも知れない。
いちごの雨を降らせてもらって、レティシアがはしゃいだのち、二人でケーキとかお菓子とかミネストローネを食べた。
真夜中の禁忌的な御菓子をたくさん出してから、レティシアの顔をはたと見て、いけない……野菜……栄養……と呪文のように呟きながら、ミネストローネを出してくれたフェリスが、とっても可愛くておかしかった。
「フェリス様……」
眠るフェリス様は、まるで美しい人形のようだ。
誰かが意図を持って作った精巧な美術品。
そんな印象さえ受ける。
起きたらフェリス様いないのかな、それはちょっと寂しいな、と思ってたら、
ちゃんと、いらした!
嬉しい!
「……レティシア……?」
フェリス様、綺麗ー。
フェリス様が起きてらしたら、
緊張して恥ずかしくて、
こんなにじっとは見つめられないから、
フェリス様が眠ってるうちに、綺麗なお顔見つめたい!
と、眠るフェリスの隣で、
ご機嫌な仔犬か仔猫のようにゴロゴロしながら
推し活充していたレティシアは、
フェリスの声にとてもびっくりした。
「きゃー! 動いた!」
「え…? 動いちゃダメ? なのか?」
寝惚けたまま、フェリスは鸚鵡がえす。
まだ眼が開いてない。
「ダメ。ダメです。もう少し眠ってて下さい」
「うん。それはレティシアの命令……?」
瞼をあけられないまま、フェリスは腕を伸ばして、レティシアの金髪を探る。
レティシアの髪に触れると、ちゃんといる、と安心したらしい。
「命令じゃないけど、……フェリス様働きすぎだから、お寝坊してもいいかも……て」
「ああ。そうか。僕は休暇中だものね。朝寝坊しなきゃね……」
「きゃ……」
フェリス様はもう少し寝かして、自分は自由に動き回ろう、と思ってたレティシアは、伸びてきたフェリスの腕にベッドに連れ戻される。
「フェリス様、レティシアは起きます」
「ダメ。レティシアが起きるなら、僕も起きる。僕を寝かしたいなら、レティシアも寝る」
「えー……。フェリス様、私はくまちゃんではな……」
フェリスはまるで、レティシアがくまちゃんを抱き込むように、レティシアを抱き込んでいる。
フェリス様的には、腕の中のレティシアが、ちょうどくまちゃんのように安眠にいいのかも知れない……。
「レティシア、ふんわりして気持ちいいよ……」
婚約者に腕を引かれてベッドに引き戻される、というと、何だか大変に艶っぽい表現だが、実際には、安眠用のくまちゃん扱いである。
「……寝惚けてるフェリス様は可愛いけど、私は人類であって、くまちゃん扱いは不当……」
むー! と桜色の唇を尖らせつつ、レティシアもおかしくなってきて、少し微笑ってしまう。
当たり前だけど、フェリス様も寝惚けるし、甘えるし、疲れるんだなと。
「フェリス様、昨日、大変だったのですか?」
「うん…。あの結界……破るのは簡単だったけど、他に被害ださないように、凄く限定して狙ったから、ちょっと疲れた……」
「……けっかい?」
けっかい、がどうしたんだろう? あのあと、戦闘とかしてたのかな?
「……ん……」
レティシアをくまのぬいぐるみ扱いして、目覚めたがらないフェリスは、とても綺麗な柔らかい気に包まれている。
あれ? フェリス様の気配、昨日より復元してるかも?
昨日、もっと疲れてるっていうか、弱ってたような……。
やはり睡眠は大きいの?
「うーん、くまちゃーん、ちょっと代わってー」
いえ、そのお役目は、僕には無理かと……、とくまのぬいぐるみは、レティシアの苦情を全力スルーしていた。
フェリス様はレティシアで充電してるんだけど、あまり意識してはやってない…
吸血鬼のようにレティシアからパワー吸い取ってるわけではないので、
レティシアも充電されて、ツヤツヤになります
(ちっちゃいからもともとツヤツヤ笑)
一昨日更新できなかった分、
今夜、もう一回くらい更新できたらいいのになーと思ってますが、
予定は未定です
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