寝ても覚めても
(……化け物!!)
魔法は人も使うから、魔法を使ったくらいで化け物扱いは不当だと思うのだが……。
(フェリス様にはお教えできることがありません、私よりずっと巧みに魔法を扱われます……基本の呪文すら、必要ない……まるで、万物がフェリス様の意に従うがごとく……)
最初は、そういうものなのかと思っていたのだ。
誰でも望めば、水や火や風や土が、望みを叶えてくれるのかと。それを魔法と呼ぶのかと。
途中でそういうものではないと気づいたのだが……。
「フェリス様は、私が逢った中で、一番美しくて、一番優しい方です」
レティシアの言葉が、まるで優しい呪文のように、フェリスを守っている。
人の心とは不思議なもので、「化け物」と言われると「化け物」のような気がするし、「優しい人」
と言われると「優しい人」になれる気がする。
まるで、己という存在に対して、他者から与えられる言葉に、呪文をかけられるように。
どう考えても、本質的には、化け物のほうが近そうだが……。
ああでも、それは、レーヴェからも異論が出そうだな。
(は? 何言ってんだ。化け物じゃないぞ。こちとら神獣の末裔だ、と蹴とばしてやれ、そんな奴)
レーヴェはもともと人じゃないから、人でありたい、とか、人にどう思われるかに拘らないから……。
レーヴェみたいに、自分に自信を持ちたいな。
千年の孤独も何処吹く風の、元気なうちの竜神様(愛されまくってはいるので孤独ではないのか)。
「……レティシア」
レティシアはちゃんと寝たかな、と気になっていたので、フェリスは、レティシアの部屋に転移で戻った。
断りなく寝室を訪れるのは、婚約者と言えど、ルール違反だと思うが、眠っていたらいいのだけれど、
勝手に家に転移させたこと、拗ねてないかなと思って……。
「……眠ってる?」
レティシアはくまのぬいぐるみを抱えて、ベッドで寝息を立てていた。
さっきまで瘴気渦巻く牢屋にいたことを想うと、まるで天上にでも戻ったような気分になる。
そして、レティシアが怒らずに眠っていてくれて、安心半分、寂しさ半分。
我ながら、我儘だ。
眠っていてくれてよかったのだけれど、レティシアの声で名を呼んで貰いたかったようだ。
「……ん、……や……!!」
レティシアが魘されている。悪夢を見ているなら払ってあげようとフェリスが指を延ばすと、ぎゅっと
レティシアに手を掴まれた。
「フェリス様、あぶな……!!」
レティシアは僕の夢を見てるのか、とフェリスは驚く。
どうやら、夢の中のフェリスも、レティシアに心配をかけているようだ。
こんなにちっちゃいのに、僕の為に苦労をかけて申し訳ない……。
「……ダ、メ……、フェリス様をいじめないで……! ……あ、れ……?」
どちらかというとフェリスはさっき意地悪をしていた方だが、レティシアの夢のフェリスは誰かに虐められてるらしい。
「……フェリス様……?」
人の気配を感じたのか、レティシアが白い瞼を震わせ、琥珀の瞳を開いた。
「ただいま、レティシア。起こしてしまってごめんね」
起こさないで悪夢を祓ってあげたかったのだけれど、レティシアの声で名を呼ばれると、やはり嬉しい。
12/12に間に合わなかった更新分です~(うう、24時までにあげたかった!)
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