表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/766

王弟殿下が一番


「フェリス殿下、オレルアン侯爵がお目通りをと」


「サイラスが? なら、姫にも紹介したいけど、結婚式すぎるまで、

あまり余人に逢わせてはよくないだろうね」


「そうですね。軽はずみをして、レティシア様のお立場が悪くなってはいけませんね」


「………」


 美味しい紅茶なのに、喉につまりそうな話。


 花の描かれたティーカップが可愛らしい。


 フェリス様のカップとは違うから、レティシアにあわせて、

 厨房の者が、選んでくれたのかもしれない。


 うーん。

 こちらに慣れるまでは、大人しくしてないと、

 確かに、評判落としそう…。


 そもそも勝手にフェリス様とお茶をしてるのも、

 慎みがないと叱られるかもしれない。


「では、サイラスには、花嫁と歓談中だから、またの機会にと」


フルーツの皿から、葡萄を一粒とりあげながら、フェリスが告げる。


「殿下、大事なお話でしたら、私のことはお気になさらず」


「ん? 気にすることではないよ。サイラスは数少ない友人なんだ。

今度、ゆっくり姫にも引き合わせよう」


 席を立たないんだ。


 レティシアとの時間を優先してくれるんだ。


 こんな子供とのお茶の方を。


「すみませ…」


「何故、謝るの?」


ああ。


いけない。


つい謝っちゃう、日本人的な癖が…。


「僕がレティシアを引き止めてるんだから、姫が謝ることはないよ。

…サーモンのサンドイッチ、お食べ。生まれて初めての長旅で疲れたろう?」


「……初めて、国の外に出たので、凄く…疲れたのですが、

見るものみな全てが珍しかったです」


「国外にでたの初めてだったの?

じゃあ、ずっと覚えてるね」


「はい」


きっと一生覚えている。


うんと、不安な思いで、花嫁の輿に揺られてたこと。


誰も、味方がいない、と思ってたこと。


前評判が散々だったので、

フェリス様を

絵本で見た

瘦せ細った怖い顔の吸血鬼とかで、想像してたこと…。

(本当にごめんなさい)


近づいてくる王弟殿下の足音を、死刑執行の合図みたいに聞いてたこと。

(重ねて、ごめんなさい)


そうしたら、こんな綺麗な人が現れて、

花の盛りの春の庭でアフタヌーンティをしている。


なんていうか、

三度目に生まれ変わったような気分。


「レティシア。生まれて初めての旅で、何が一番珍しかった?」


「………」


ここに来るまで、旅の途中、

いろいろ怯えつつも、いろんなものが珍しかったけど


ここに辿り着いたら……。


「ん?」


「フェリス様ご本人が一番…」


「…僕? そうなの? それは光栄?」


ディアナの街も、

それはレティシアの故国より、

ずっと華やかだったけれど。


花婿たるフェリス王弟殿下に、やっぱり、一番、びっくりした。


いろんな意味でびっくりした。


「悪い衝撃でなかったんならいいんだけど…」


「いい意味で! です。悪い驚きじゃないです」


ぶんぶん、と忙しく、レティシアは首を振る。


「そうか。ならば、よかった」


少し照れ臭そうに微笑する王弟殿下は本当に美しく、

そして何だか可愛らしかった。

「好き」「趣味似てるかも」「面白い」「続き読みたい」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします。作者のモチベーションも上がりますので、ぜひよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ