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10万部突破【書籍④巻&COMIC②巻発売中】五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました  作者: あや


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ディアナの王の妃



「陛下。フェリス様とレティシア殿下は、無事帰られたようです。つつがなく、王太后様とのお話終えられたようで、よろしうございましたね。陛下は、王太后様の御機嫌伺い行かれませんの?」


ポーラ王妃は、夫であるマリウスに声をかけた。


ルーファスが抜け出して王弟殿下夫妻(予定)に逢っていたと言うので、抜け出しちゃダメですと叱りつつ、王妃の宮でも、王太后様がフェリス様夫妻に何かまた爆弾発言されないといいけど……と密かに心配していたのだ。


「大人げないとは思うけど、暫く、母上のところは遠慮したいな……」


長椅子に座した夫が珍しいことを言っている。


「きっと、お義母様、沈んでらっしゃいますわよ。珍しく陛下に叱られて」


「……僕の弟と僕の臣下に処罰を下す前に、母上は、僕に相談してくれるべきだったと思うな。それ以前に、もっと問題があるけれど……」


「それはもちろんですが……」


マリウスがずいぶん沈んだ様子なので、ポーラも強く言うつもりはない。


お義母様はマリウス陛下を愛するあまりに、時に行き過ぎてしまう。


そして、マリウス陛下を愛するあまりに、フェリス様へのあたりが強くなってしまう。


ポーラはディアナの公爵家の娘で、マリウスとは幼馴染だし、フェリスのことも、マグダレーナのことも、子供の頃からよく知っている。


なので、フェリスがマグダレーナにひどく辛く当たられるのを見ていると哀しい。


ポーラは、マリウスの妻であるから、義母であるマグダレーナの気持ちも少しはわかる。


フェリス王弟殿下は、成長するに従って、驚くほど竜王陛下に似てきて、それに伴って、貴族や国民の反応も変化した。


フェリス本人は、昔から野心とはほど遠いお人柄だが、お義母様が神経質になる程度には、王弟殿下の存在に野心を絡めたがる人々もいる。


優秀な王弟でいるというのも、難しいものだな、と傍で見ているポーラも思う。


「お義母様は陛下を思うあまりに……」


「そうだな。母上は『陛下』が好きなのだよ、恐らく」


「陛下?」


「母は、僕ではなく、『国王を務めてる愛しい息子』が好きなのだよ」


「……何を言ってるの、マリウス」


ポーラは、諫めるように、彼の名を呼ぶ。


「……もし、僕が国王でなくなったとしても、ポーラは僕が好き?」


「………? もちろんよ。どうしてそんなこと聞くの?」


どうしたのだろう?


竜王剣の噂とやらにマリウスはひどく傷ついているのだろうか?


「本当に?」


「ええ。私は家格がちょうどよかったから、王太后様に王の妃として選ばれたけれど、王妃なんて大変そう、と思ったけど、あなたと結婚できるから嬉しかったわ。それは昔から、優しいあなたが好きだったからで、何もあなたが王だから好きになった訳じゃないわ」


子供の頃からマリウスは王太子だったけれど、ポーラはそんなに野心的な娘でもなかったので、王様の妻よりは普通の貴族の妻のほうが楽なのではないかしら、と思う不埒者だった。


この国で一番の男の妃になりたい、というタイプではなくて、夫にするなら気が合う人がいい、と思っていた。


マリウスの妃に選ばれて喜んだのは、王の妃になれることより、優しいマリウスの性格が好きだったからだ。


「……僕が好き? フェリスよりも? 竜王陛下よりも?」


「当たり前でしょ。私は年下好みでも年上好みでもないし、この世のすべての女が、そんな手のかかりそうな人ばかり好きな訳じゃないから」


「手がかかりそう? フェリスも? 竜王陛下も?」


「どちらも夢のように美しい方だけど、御相手するには激しく熱量が必要では? 私なら、もっと地に足のついた方がいい。……国王陛下相手に、地に足のついた方も変かもだけど、その御二人に比べたら、マリウスは私の近くにいてくれる人だわ。ずっと子供の頃からよく知ってる、そばにいてくれる優しい男の人だわ」


珍しくフェリス様と比べて落ち込んでるんだろうか? マリウスはそんな比較に自分を卑下したりしない人で、そんなところも大好きなんだけど……、とポーラは不思議に思った。


「よかった。僕の妻は変わった好みで」


「変わってないです。そうね。ディアナのたいがいの娘は、竜王陛下やフェリス様が好きだけど、実際、毎日一緒に生活するってなったら、脱落者も多いと思うわよ。レティシア殿下は小さいけど、とっても大物よ。あの幼さで、あのフェリス様を乗りこなしてるもの」


「フェリスは馬か。……女の人にはかなわないな」


フェリス様を乗りこなす、に、マリウスが少し笑った。


「でも、ポーラが、僕を一番好きでいてくれるなら、僕は生きていけるな」


「………?  そうね。いつでも、私がここにいるわ。マリウス、もし何か辛いことがあるなら、私に話して?」


「うん。……いつか、君に話せたら、いいな。それは、いまではないけど……」


灯りの影の落ちるマリウスの頬を、ポーラはそっと指を延ばして撫でた。


マリウスをこんなに悲しませるようなことを、何か義母上は言ったのだろうか?


それとも、王位について七年、一人前になった夫が、母の越権行為が疎ましいだけなのだろうか?


「マリウス、あとで、ルーファスを叱って、そして褒めてあげてね。勝手に義母上のところへ談判に行ったあの子はいけなかったけど、証拠もないのに処罰など正しくない! と怒ってたちいさなルーファスは、あなたに似て賢くて勇敢だと思うの」


僕は父にはそんなにかまわれなかったんだ、とこっそりいうマリウスは、息子のルーファスをとても大切にしてくれる。


義母上がどんなにフェリスとマリウスを比べて意味不明に苛立とうと、ポーラはマリウスが夫で幸せだし、フェリスとマリウスを比べてどうこうなどと本当に思ったことがないのだ。



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― 新着の感想 ―
うーん。。陛下も思うところはあるのだろうけども、実の母だからと臣下から乱心扱いされるようなことを言い出す人間を何の処罰もなく置いておくのってどうなんだろ…王様向いてないんじゃない?って思ってしまう。身…
[一言] 陛下も殿下もお妃様には恵まれましたようで 愛ですわ〜
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