薔薇のマカロン
「いや、礼には及ばない。
我が家系が意地悪されやすいのは、
僕の顔? 人柄? 体質? のせいであって、
何一つとして、あなたのせいではないから。
それを覚えておいて、小さなお姫様。いまもこれからさきも」
甘い声の王弟殿下は、
薔薇の花やケーキやティーカップ以外、似合わないような白い手をしてるのに、
何故か静かに戦う人の気配を纏っている。
「ご、御心配には及びません! 」
がっし!とレティシアも勢い込む。
「花もはじらう可憐な令嬢にはちょっと程遠いですが、
私、丈夫さと悪運には自信があります!」
ここは強運と盛りたいところだが、
一度若い身空で死んでから蘇ってるので、
それは強運と言えるのか?と自信がなくて、
悪運なら許されるだろうか、と遠慮して、運を保証する。
「舞踏会に出ても、きっとフェリス様をお守りします!」
ちょ、ちょっと、ボディが小さいのが玉に瑕だけど、
ちびならちびなりに、有利なこともあるはず!
宮廷のお喋り雀どもから、
この繊細そうな美しい方を、お守りするわ!
ああ。
何か、闘志が湧いてきた。
謂われなき誹謗中傷に悩まされる美貌の王弟殿下をお守りするわ。
何か、自分の宮廷での評判とかを気にするのは、
ああもうそんなのどうでも、となっちゃいそうだけど、
誰かのためだと、人間、少しは、気合入るなあ…。
「私の小さな騎士は、なんて勇ましいんだろう、レイ」
何故かフェリス様が笑い死にしそうになってる。
なんで。
ちびなのに、気持ちだけ、がんばりすぎかな?
「まことに。こういう、心の清い方と暮らすと、きっと、我が主の心もきよらかに」
「とりあえず、僕達に意地悪する人はここにはいないから、
マカロンでもお食べ、お姫様」
「………!?」
笑い死にしかけてたフェリスが、銀の盆からピンクの丸い塊をとって、
レティシアの口にいれてくれる。
餌付けされている。
これは、礼儀作法の教師にバレたら叱られそうだが、
こんなに嬉しそうに差し出されるものを拒むのも感じ悪いのではと、
勇気をだして、パクっと口の中にいれる。
「……! 美味しい!」
行儀が…との理性も何のその、
蕩ける甘さに、歓声をあげてしまった。
「ね。この薔薇のマカロン、僕も好きなんだよ」
「美味しいです、とっても。初めて頂きました」
さすが美食の国とも言われるディアナ、デザートも手が込んでる、と感じ入ってしまった。
それに、緊張してずっと食欲がなかったけど、
フェリス様と何とかやっていけそうだと思えたせいか、
安心してとってもお腹がすいた気がする。
よく晴れた青空の下、
テーブルに並べられたお茶のセットがとても魅力的に見えた。
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