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海と銀河と私  作者: 松尾 攻
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お母さん

「わぁっ、とっても綺麗!」

「本当ね、お天気も良いし、今日は来て良かったわね」

お母さんは、いつもの優しい感じで私達姉弟に言いました。

夏休みの家族旅行。

私達家族4人は、海の美しさに見とれて喜んでいました。

まだ小さな弟の一太は、早く海に入りたくてウズウズしているのがお姉ちゃんの私には良く分かりました。

私は9歳、弟は6歳でした。

薄青色の空の所々に、こんもりと雲が浮かび、海面のさざ波に太陽の光が当たって、キラキラしています。

海岸は、沢山の人々が思い思いに楽しんでいて、より一層海の美しさを際立たせています。


お父さんが車を駐車し終わると、私の予想通り一太がドアを開けて駆け出しました。

「コラッ、一太!、荷物を運びなさい!」

「は~い」

戻ってきた一太は、嘘の不貞腐れた態度をして手渡された荷物を持ちました。

一太は、私に注意されるのが好きで、私は一太を注意するのが好きでした。

一太は注意されたい為に、ワザとイタズラする事もしばしばありました。

お父さんが場所を取ってシートを引きました。

隣りに恋人同士らしいカップルが陣どっています。

恋人とかカップルと言う言葉は、当時覚えたてで、友達同士の会話によく出て来ましたが、実物をこんなに間近で見るのは始めてだったので、私はすっかり感心してしまいカップルの事をずっと見てしまいました。

すると、視線に気が付いたお姉さんと目が合ってしまいました。

私はビックリして固まりましたが、お姉さんは微笑みました。

私は恥ずかし笑いをして自分の家族に向き直りました。

お母さんは、とても早くから起きて作ったお弁当を広げています。

私は昨日の夜、お弁当作りを手伝う約束をしましたが、寝坊をしたので手伝えませんでした。

私は、バツの悪い顔をして「おはよう」を言いました。

「おはよう、一菜。寝坊してくれてありがとう」

「エッ、」

私のお母さんは怒りません。

「睡眠が少ないと、車に酔いやすくなるのよ。でも、折角一菜が手伝うという事も断われないし、一菜が寝坊しますようにってお祈りしてから寝たのよ」

私は思わずお母さんに抱き着きました。

「車に酔ったら、今日の大切な思い出が台無しだもの」

「さあ、朝ご飯の準備を手伝ってちょうだい」

「うん」

私の素敵なお母さんは、家族の御飯を作るのが大好きです。

皆が美味しそうに御飯を食べる顔を見るのが幸せなのだと言います。

お父さんは、毎日、お母さんの作ったお弁当を持って、嬉しそうに仕事に出かけます。

お父さんは、買い物の手伝い、壊れた所の修繕、近所の付き合いなど、お母さんの手に余る事を気持ち良く引き受けます。


そういう事なので、私のお母さんは、例のあの悪口の集まりには、一切参加する事がありませんでした。



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