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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第九話 決戦。ミサイル艦隊対帰還艦隊。
98/134

第九話 3 開戦前の雑談。銀山にて。

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


 靖國(やすくに)上級大尉の航海日誌


 五八日。先日公開された、閻魔(えんま)様からの外国艦隊の情報。それに沿って、今戦闘準備をしている。敵艦は誘導弾中心の武装。場所は忘却の川の水域。三〇隻がひと固まりでこちらに向かってくる。正面決戦の殴り合いになるだろう。


 おそらく、誘導弾を迎撃する防戦から始まる。そして艦砲射程内まで行き、艦砲射撃でとどめを刺す。あるいは、こちらも誘導弾を発射し、即座に応戦するか。いずれにせよ、命令が下り次第即座に実行するだけだ。


 それにしても、輸送艦護衛の小型艦艇まで引っ張り出すとは、完全な総力戦だ。現代兵器を警戒しての事だろうか。



◇◇◇



「先手を打たないのか。上層部の考えが気になる所だな。」


「もへへ。ボクにはにゃんとなく、見当はつくけどねぇ。」


 場所は戦闘指揮所。携帯板型端末で情報を確認している。


 吾輩(わがはい)の独り言に対して、軍医殿が答える。相も変わらず、独特な押し殺した気配で背後にいるのを、吾輩は気づいていた。


 吾輩は背後に振り替える。そこにはいつの間にか司令官席に座って、棒付きの飴玉(あめだま)を舐めている軍医殿がいる。相変わらず自由気ままな軍医殿だ。


「先手を打たない理由。軍医殿は何か思い当たる所があるのか。」


 吾輩は軍医殿の見当とやらに質問をする。先手を打たないと大量の誘導弾が飛来する。その状況での先手必勝は、有効な戦術だと判断できる。


 その絶好の機会をあえて逃す。おそらく面倒な事案。たとえば、政治的な物が絡んでいるように思える。


「ほへ。例の未確認艦隊。宣戦布告をしたっけかにゃ。」


 軍医殿の一言。吾輩はため息を吐く。先ほど考えていた面倒事。おそらく政治がらみであることが、的中したと確信したからだ。


「もへへ。ため息をついたって事は、ある程度予測していたみたいだにぇ。」


 軍医は首を傾げて言う。吾輩は、軍医に心の無意識を読まれている。そんな錯覚を覚える。


「ま、上級大尉がため息をつくのも分かるよねぇ。けどねぇ。まさかいきなり『こんにちは。死ね。』ってやる訳にもいかないからねぇ。」


「やはり、政治的な足かせでもあるのか。」


 吾輩の言った政治的な足かせ。吾輩が士官になって、一番面倒な事と思った事案だ。誰彼の力関係や、面倒な駆け引き。そんな厄介事、遠くの棚に放り投げることが出来れば、どれだけ仕事と趣味に没頭できるか。


 吾輩は軽くため息をつく。そんな吾輩の姿を、軍医殿は面白そうに見ている。それともそれは、吾輩の気のせいだろうか。


「上級大尉。これは少し真面目な話だけどねぇ。」


 軍医殿の声音が低くなった。素人でも分かる変化だ。この変化で、軍医殿の雰囲気も少し硬いものに変わる。


「上級大尉。ボク達の旅。それほど単純な物じゃないと思うよ。現に未知の艦隊と接近しようとしている。」


 そこまで言うと棒付き飴玉を口から出す。


「たしかにボク達は、戦艦や巡洋艦などの、強力な戦力を持っている。だけどね。」


 そこまで言うと、軍医殿は立ち上がる。吾輩は、表面上平静を保ちながら、軍医殿の次の言葉を注視する。


「言い方を変えれば、戦艦や巡洋艦しか持っていない。それ以上の戦力には苦戦は必至だし、戦艦や巡洋艦でご飯を作れるわけでもないねぇ。それに第一・・・。」


 そこまで言うと、一拍間が生じる。いつの間にか、部屋中の人員が、軍医殿の言葉に注目していた。


「ボク達は、閻魔様に試されているよ。判断を大きく誤って、死んだら地獄行きは嫌でしょ。」


 軍医殿は冗談めかして言う。しかしその言葉は、周りの空気をこわばらせるのに十分だった。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は、戦力の再確認になります。


 次回の投稿は、三月九日になります。


 それではまたお会いしましょう。


 追記:三月は多忙になるため、週一回の投稿が続く恐れがあります。その時は、その都度連絡いたします。

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