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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第九話 決戦。ミサイル艦隊対帰還艦隊。
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第九話 2 戦力は出し惜しみをせずに

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


「倍以上の艦艇ですか。まさか、輸送艦隊の護衛艦艇まで持ち出すのですか。」


「そうじゃ。それが艦の損耗(そんもう)を少なくする、最善策じゃ。」


「ちょっと待て。そいつを引っ張り出すと、非戦闘員が乗る輸送艦が丸裸になるぜ。」


「構わんじゃろう。他に敵は見当たらんからの。」


 諏訪中佐と八坂中佐の発言を、浅間中佐は軽く受け流す。


 輸送艦隊の護衛艦艇。非戦闘員を輸送する、八坂中佐率いる輸送艦隊の一部だ。非戦闘員を輸送する輸送艦を守るため、駆逐艦五隻と小型艦艇四〇隻が、輸送艦隊の護衛をしている。


 この帰還艦隊の半数を占める護衛戦力。浅間中佐の提案は文字通りの総力戦だと、他の三人は思った。


「それで、具体的な作戦案はどのような内容だ。詳細を聞きたい。」


 懸念を示す二人の中佐を横に、靖國大佐が発言する。


「ふむ。それでは、儂の考えた布陣はこうじゃ。」


 そう言うと浅間中佐は、思考無線を用いて艦艇の配置図を作図する。そこには輪形陣が映し出されていた。



◇◇◇



 浅間中佐の作戦の概要は、次の通りになる。


 参加戦力は、靖國大佐の旗艦希望を中心に、浅間中佐の第一護衛艦隊の戦艦と巡洋艦が布陣する。これらの艦隊は主砲を用いて、遠距離から誘導弾を迎撃するのと同時に、戦艦、巡洋艦の索敵能力を用いて、誘導弾の観測を行う。


 次に、諏訪中佐の第二護衛艦隊と、軍医率いる第一探査艦隊を用いて、戦艦と巡洋艦を護衛する。艦隊とデータリンクの情報を元に、駆逐艦の長射程理力砲を用いて、誘導弾の迎撃を行う。


 さらに外側に、輸送艦の護衛艦隊の内、小型艦艇を配備する。四〇隻の小型艦艇を八つに分け、外周を護衛する。接近してきた誘導弾を、近距離用の砲や機銃などで迎撃する。


 第二探査艦隊と第三探査艦隊は、念のために輸送艦隊の周辺を警戒する。


 ちなみに、輸送艦護衛の駆逐艦五隻と小型艦艇四〇隻は、第二護衛艦隊に一時的に配属することになった。



◇◇◇



 次に浅間中佐は、大まかな作戦概要を語る。


 一番外側の小型艦艇は“姿隠し”の術を行使する。そうする事でこちらの的を減らし、対象を絞らせることにより、小型艦艇の損害を回避する。それと同時に、対象を絞らせることで、誘導弾の迎撃の効率化を図る。


 次に、旗艦希望は核兵器対策を行う。具体的には理力工学の術で、核分裂を抑制する術が存在する。その術の効果で、艦隊周囲二〇〇キロメートル以内では、核弾頭の核分裂が抑えられる。


 残りの艦艇は、誘導弾対策に“誤作動”の術を準備しておく。機械類、特に精密機械の誤作動を誘発させる術で、誘導弾の誤爆を誘う。


 そして会敵後、敵誘導弾の迎撃に専念。敵が誘導弾を使いつくしたと判断した後、旗艦希望と第一護衛艦隊で接近し、艦砲射撃を行う。これが浅間中佐の示した、大まかな作戦内容だった。



◇◇◇



「浅間中佐。いくつか質問がある。」


 作戦の概要を聞き終えた靖國大佐は、浅間中佐に問いただす。


「最初に確認だ。小型艦艇の“姿隠し”の術。実際の効果は期待できない。現在の状況で敵艦の探知を誤魔化すことが出来るのか。」


「それなら問題ないぜ。実験で電探を誤魔化すことが出来た。実際、肉眼の視認距離で探知できたくらいだ。現代戦の電子戦では、効果が大きいぜ。」


 定型文とも思える靖國大佐の質問。それに対して、八坂中佐実験結果を示す。


“姿隠し”の術と呼ばれる術。実際には“嘘探し”の術と同様、名前負けしている術の代名詞である。実際に姿を隠す術ではなく、相手に気づかれない術で、当然術を使えば、術を感知する術に引っかかってしまうという、本末転倒な事が起こる。


 それでもレーダーなどに対しては、一定の効果が出ている。だがそれも、術を探知されなければの話である。


「しかし術を使えば、術の痕跡(こんせき)を探知される恐れがある。これについてはどうだ。」


「それは問題ないぜ。奴らは、術を探知する能力はねえぜ。」


「なぜ、そう言い切れる。」


 靖國大佐はさらに問いただす。それに対して八坂中佐は、観測結果を示す。


「それについてだけどよ。こっちの探知に対して、逆探知も術の探知も無かったぜ。こっちは何度も観測しているのによ。それにうちの艦隊は、念力防壁が常時張られているぜ。電磁的な迷彩効果があるから、この距離じゃ向こうには気づかれていないぜ。」


「つまり相手は、完全な電子戦仕様ですか。それなら接触二時間前まで、相手には感知できないでしょう。」


 諏訪中佐が板型携帯端末を使って計算をする。その計算結果は、こちらに地の利があるという答えを示していた。


 靖國大佐は(あご)に手を当てて、目を閉じ深呼吸をする。


「分かった。浅間中佐の策に乗ってみるか。」


 独り言のようにつぶやく。そして数秒思案したのち、目を開く。その瞳には決意があった。


「各艦隊。陣形の再布陣を行う。すぐにだ。相手の探知予測である接触二時間前までに、乗員の休息と海戦の準備を整えてくれ。輸送艦隊は後方で待機。小型艦艇の“姿隠し”の術は、接触三時間前に行使するよう伝えてくれ。」


 靖國大佐は指示を下す。そしてその後に、一番肝心な指示を持を伝える。


「この外国勢の艦隊を敵と断定するのは、敵の攻撃が確定となった時期だ。それまで、こちらからの攻撃を一切禁ずる。これは肝に銘じておくよう、各艦に伝えること。以上。準備を開始してくれ。」



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は場面が銀山に移ります。


 それではまたお会いしましょう。


 追記:三月は多忙になるため、週一回の投稿が続く恐れがあります。その時は、その都度連絡いたします。

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