第八話 13 外国艦隊の行方
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
「そう言えば最近、軍派閥と共同で何かしているようですね。理力工学絡みと聞きました。」
閻魔様の一言に、八ヶ城様の茶菓子を食べる手が止まる。一瞬思案するように目を閉じるが、すぐに瞼を開く。
「理力工学の開発を、軍派閥の技術陣と共に行っている。帰還作戦が失敗することもあるだろう。現状の不十分な技術で、理力工学を発展しなければならん。」
「作戦の成功率が低いとお考えで。」
「いや、万が一の保険だな。」
八ヶ城様は一口緑茶を啜る。そして目を閉じながら話をする。
「帰還作戦の成功率は八割だ。航路の誘導も順調で、帰還艦隊の性能も思ったより良い。現状、泊地島の穢れも退けている。外国勢の片道艦隊の件もあるが、それも撃退できるだろう。」
そして八ヶ城様は目を開く。その瞳には強い意志が込められている。
「現状はまだ楽な状態だろう。忘却の川の不確定要素も想定内だ。だが、忘却の川は未知の水域。何が起きるか、そして彼らの航海に何が立ちはだかるか。我々は見守らなければならない。」
「見守る、ですか。それでも食料を送ることはできます。その手はずも整っているのでしょう。」
閻魔は湯呑を手に持ったまま話す。閻魔は相変わらず微笑んでいて、その本心は読み取ることができない。
「旧式の輸送船を二隻買い取ってな。改造工事も終わったところだ。幸い、命知らずの志願者も集まって、現在は習熟航海に出ている。」
八ヶ城様は再び目を閉じる。志願者とは聞こえが良いが、大金で釣って選考した人材だ。やる気は十分だが、危険な任務には変わらない。
薄氷を踏むとは大げさだ、と言うのは八ヶ城様の台詞だった。幸い、帰還艦隊に合流するのは簡単だ。忘却の川は下るのが楽、という観測結果が出ている。
そして帰りは、帰還艦隊と共に帰ってくる。そんな話を聞いたのを、閻魔は思い出していた。
突然部屋の中に、わずかな振動音が響く。バイブレーションの特有の音で、八ヶ城様の板型携帯端末からだった。八ヶ城様は大きくため息をつく。
「何だ。閻魔殿との会談は言っておいたはずだ。すまない閻魔殿。少し失礼するぞ。」
「どうぞ。お気になさらずに。」
閻魔の了承を得て、八ヶ城様は板型携帯端末を取り出し通話を始める。閻魔は帰還艦隊に降りかかる困難について、目を閉じて考えた。
◇◇◇
「たった今入った連絡だが、新しい観測結果がでたが、どうやら例の外国の艦隊、帰還艦隊と鉢合わせしそうだ。次の定時連絡で情報を送るそうだ。」
閻魔が緑茶を啜りながら聞く。そして湯呑から口を話すと、首を傾げて考える。
「奇妙ですね。誰かの導きでもあるのでしょうか。」
「分からぬ。ただ、微かだが神霊の反応があった。おそらく、下級の天使が乗っているようだな。」
閻魔は丁寧に茶菓子を切り分け、その一部をゆっくりと頬張る。
「外部からの支援は観測されなかった。導きがあるとすれば、中にいる天使の仕業だろう。」
八ヶ城様がそこまで言うと、閻魔は深くため息をつく。
「どうやら使い捨てにされているのは、罪人だけではないようですね。」
「そうだな。酔狂な志願者がいるとは思えんしな。」
そこまで言うと、二人ともしばし考える。使い捨てにされた地獄の罪人。そしてそれを導いている、推定天使の存在。そしてそれらを使いつぶす、どこかの外国の思惑。
靖国領の帰還作戦を快く思わない勢力。現状分かっているのは基督教圏のいずれかだ。だがその尻尾も、簡単には出さない事も想像できた。表立って行動することもないだろう。
未知の忘却の川。そして泊地島の存在。そこにさらに外国勢の未知の思惑。帰還艦隊に立ちはだかる困難を想像し、閻魔は微かな頭痛を感じて、それをお茶と茶菓子で誤魔化そうとした。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は一話分お休みをいただき、2月23日の投稿予定となります。
次回は次の話に進み、外国艦艇に対抗することになります。
それではまたお会いしましょう。




