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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第八話 進路は餓鬼道
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第八話 12 マスコットの皮を被ったそれは

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


 場所は変わって閻魔(えんま)の部屋。大正ロマンの書斎(しょさい)兼応接室の中に、一見場違なパソコンが置いてある。


 閻魔はパソコンで書類仕事をしている。キャリアウーマンとやらを連想させる、真剣な表情だ。


 そこにノックの音が響き渡る。


 一人の鬼が(うやうや)しく入ってくる。一礼すると用件を伝える。


「閻魔様。八ヶ城(やかぎ)様が面会を求めていますが、いかがいたしましょう。」


 閻魔の手が止まる。そして表情を変えずに、鬼に向き直る。


「こちらに通してください。」



◇◇◇



 人間大のテルテル坊主が閻魔の部屋の扉に来る。緑色の服を着たそれは、胸元に服と同じ色の傘を張り付けている。傘を手で押さえているような感じだが、あいにく手や腕は無い。そして肩に当たる位置に、黄泉軍(よもついくさ)の大将の階級章が張り付けている。


 鬼と同じように恭しく一礼すると、ゆっくりと浮遊しながら入ってくる。


 一見何かのキャラクターのようなテルテル坊主。このテルテル坊主こそが八ヶ城派閥の宗主である通称『八ヶ城』。桃の木の神『オオカムヅミの命』本人でもある。


 閻魔は立ち上がると一礼をする。そして閻魔は応接間に案内する。双方が席に着くと、鬼が緑茶と茶菓子を持ってくる。そして鬼が退室すると、部屋は静寂に包まれる。


 湯呑(ゆのみ)がふわりと浮く。そして八ヶ城様口元まで移動すると、八ヶ城様は一口(すす)る。


「閻魔殿。帰還艦隊の面々どうだったか。」


 八ヶ城様は閻魔を見る。閻魔は笑顔で座っている。閻魔の綺麗(きれい)な笑顔を見るたびに、逆に本心が読めないと八ヶ城様は思っていた。


「彼らは鋭気(えいき)に満ち溢れていました。それと彼らの代表と直接顔を合わせました。」


「ほう。靖國(やすくに)大佐か。で、どうだったかな。」


 八ヶ城様の目の色が変わる。その目はマスコットなどではなく、幾多(いくた)修羅場(しゅらば)を抜けてきた、猛者(もさ)の目だった。


 閻魔はどこか遠い目をする。面会した時のことを思い出しているのだろうか。


「そうですね。(たぐい)まれなる術の力量を感じました。黄泉軍の中でも五本の指に入る実力者ですね。それと護身術にも長けているみたいです。ただし、私の前で多少委縮(いしゅく)していたのが不安材料ですね。」


「そうか。閻魔殿の実力を感じ取ったのかもしれんな。」


 そう言うと八ヶ城様は、茶菓子を一口頬張(ほおば)る。遠慮のない八ヶ城様の行動。慣れた間柄(あいだがら)なのか、それとも失礼な態度か、当事者にしかわからない行動だった。


「それと、難民認定の件。しっかり検討をして答えを出していたわ。」


 そう言うと閻魔は、靖國大佐が提示した答えを伝える。八ヶ城様は頷きながら報告を聞く。


「そうか。吾輩の意図をうまくくみ取ってくれたようだな。情報が不十分だから不安だったが、どうやら勘の鋭い者がいるようだな。」


 八ヶ城様の言った感の鋭い者。実は靖國大佐だった。しかしその事実を二人が知るのは、帰還後の話だった。


「それと泊地島(はくちとう)の意思と遭遇したわ。意思を飛ばして穢れを操っていたの。」


「閻魔殿の前に穢れを飛ばしたか。失礼な奴だな。」


 八ヶ城様はため息をつく。その息には明らかに(いきどお)りの感情が含まれていた。


「泊地島の意思ですけど、浄瑠璃(じょうるり)の鏡に映しました。ご覧になりますか。」


「いつの間にそんなものを収めていたのか。」


「ええ。穢れの攻撃を防いだ時に収めました。これが泊地島の意思の姿です。」


 そう言うと、閻魔は袋から浄瑠璃の鏡を取り出す。


 その鏡の中には、昔の水兵が被るようなバンダナをつけたローブ姿。色は黒く輝く独特的な色だ。腰には皮のウエストポーチをつけていて、血のように紅い皮の手袋とブーツ。右手には血のように紅い剣。ファンタジーに出てくるロングソードに見えた。


 そしてその顔は靖國大佐だった。相違点は、髪が血のように紅い穢れたものだという事だ。


 そして笑っている。それは不気味と言ってもよい、(ひど)い笑みだった。


 もしこの場に靖國上級大尉がいたら、こう言っただろう。


 靖國大佐の色違いだが剣は使わんな、と。


「ふむ。靖國領の代表の姿か。悪趣味だな。」


「悪趣味ですね。」


 悪趣味以上の意見を二人は述べなかった。


 閻魔は浄瑠璃の鏡を袋に戻す。その動作をよそに、八ヶ城様はしばし考える。


 靖國領の代表の姿を借りる、泊地島の意思。その真意はどういうものかと。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は閻魔との会話の続きとなります。


 それではまたお会いしましょう。

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