第八話 10 無粋な泊地島の意思
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
「外国の艦隊の話はこのくらいにして、本国側の現状についてですが…。」
閻魔が話題を変えた直後、帰還艦隊から通信が入る。
「もへ。ほへへ。それは面倒だねぇ。」
「ペプーリア殿。どうしたのだ。」
「靖國大佐。泊地島からの思念波を確認したよ。餓鬼道の穢れに悪さをしているようだね。」
「私も感知しました。これが報告にあった、泊地島の意思ですか。」
靖國大佐は真剣な表情で、閻魔に向き直る。閻魔は腰に下げた笏を右手に構える。
「閻魔様。通行の許可を。」
「許可します。速やかに艦隊を発進させなさい。」
「了解。ペプーリア殿。全艦隊に飛行を開始するように伝えてくれ。私もすぐに合流する。」
「もへ。了解だよ。」
軍医が艦隊と通信している間に、靖國大佐は手早く戦闘機に搭乗する。
「靖國大佐。」
閻魔は靖國大佐を呼び止める。
「これだけは覚えておきなさい。同胞は帰還を歓迎しています。そして最善と善行を尽くすのです。そうすれば同胞は、快く歓迎するでしょう。」
「了解。では、失礼します。」
靖國大佐の敬礼。そして戦闘機の天蓋が閉じようとする。
「お行きなさい。貴方達の帰還に、幸があらんことを。」
その声のすぐ後、戦闘機の天蓋が閉じた。餓鬼道の空気が遮断され、戦闘機の結界が作動する。
戦闘機は急旋回をして急激に速度を速める。一方、閻魔は集束しつつある穢れを睨んでいた。
◇◇◇
穢れが集まり形を変える。武装した飛行船。先日、帰還艦隊が撃破した敵だ。
形を成した飛行船は三隻。閻魔は先制攻撃を行う。
右手に持った笏を顔の前にかざす、閻魔は精神を集中させ、笏に神力を宿す。そして神力を宿した笏を、まるで薙ぎ払うような大きな動作で振るう。笏から見えない刃が発生する錯覚か。まるで虚空を着るような、強力な風圧が発生する。
そして、風圧の先には、二隻の飛行船。まるで紙でも裂くかのように真っ二つになり、穢れに青白い炎が発火し、一瞬にして船体を包む。
「聞きなさい。泊地島の意思よ。」
閻魔の美声が、神力や仏力といった代物に乗って、餓鬼道中に響き渡る。穢れた飛行船は、振り向くように閻魔の方に回頭する。
そして飛行船による、破壊光線の一斉射撃。黒い破壊光線が閻魔を襲う。閻魔は袋を片手で、飛行船に向かってかざす。閻魔に向かってきた破壊光線は、見えない壁にはじかれる。無論、閻魔には傷一つ無い。
「我が同胞に弓引くことは、我に弓引く事。神仏の祟りを恐れぬ者。我が神罰、仏罰を思い知れ。」
今度は笏を天高く振りかざす。すると笏から、天に上る稲妻が発生する。餓鬼道の雲一つない空を駆け上がり、虚空に消える。
帰還艦隊は観測する。閻魔の放った雷が、はるか遠くの泊地島に飛んでいくのを。
閻魔の放った雷が泊地島に着弾する。すると残り一隻の飛行船が、霧のように四散してしまった。後には餓鬼道の乾いた風が、何事もなかったかのように吹きすさむだけだった。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は艦隊が餓鬼道を後にします。その時とった行動は…。
それではまたお会いしましょう。
追記:最近体調を崩し、執筆が進まなかったため、次回の投稿は2月9日になります。
迷惑をおかけして、誠に申し訳ございません。




