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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第一話 靖國帰還艦隊
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第一話 8 淺糟軍曹の配属先と考察

 当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。


この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。


「ところでお前さん。この艦の連中とは仲良くやっているか。」


 吾輩(わがはい)は何気なく(たず)ねる。最近は吾輩の仕事が忙しくて、師匠として余り相手をしていない。


「はい。上官として色々と指示するのは大変ですが、皆よく働いてくれます。」


 どうやら問題は無いみたいだな。吾輩は軍医殿をちらりと見やる。軍医殿はお茶を(すす)っている。

淺糟(あさかす)君。チミの配属は何所だい。」


「第一主砲(しゅほう)です。そこの指揮官をやっています。」


 この艦の主砲は一四〇ミリ三連装砲塔だ。自動化が進んで人員は少なくなっているが、それでも砲撃手(ほうげきしゅ)観測員(かんそくいん)給弾手(きゅうだんしゅ)が三人必要だったな。


「主砲の責任者は下士官だったね。部下は何人いるのかなぁ。」


「五人です。」


「確か兵卒が五名だったな。」


 吾輩は記憶をたどって、配備する人員の記憶を引っ張り出す。すぐに思い出せないあたり、記憶力の向上が望まれる案件だな。


「いえ、下士官一名と兵卒三名です。」


 おや。記憶違いかな。いや違うな。この配属は理由があったな。


「もへへ。淺糟軍曹は白兵戦(はくへいせん)要員だったよね。白兵戦の時に、砲塔を指揮する責任者が別に必要だから、下士官がもう一人いるんだよね。」


「はい。僕の部下に伍長がいます。」


 ああ、思い出した。淺糟軍曹は白兵戦要員だから、代わりになる人員が必要だったのだな。白兵戦部門は我が艦にはない。非常時には該当する人員が招集されて、白兵戦に当たる事になっている。


「その刀に機関拳銃(きかんけんじゅうう)。白兵戦要員は当直の時に、武装するのが決まりだったね。」


 普通、白兵戦要員は戦斧(せんふ)が得物だ。だが淺糟軍曹は、持参した刀を使い続けているようだ。


「まあ、主砲を使う機会が無ければよいが、当直時は気を引き締めて置くようにな。」


「はい。」


「ところで、この後仕事なのかな。」


 軍医殿はお茶をがぶ飲みして訪ねる。ところでそのお茶は何杯目だ。


「いえ。今僕は非番です。」


 非番なのに武装しているのか。吾輩はお茶を一口啜りながら、話を聞いている。


「何か起きてから準備をするのは、時間の無駄です。非番でも準備していれば、いざという時に迅速に対応できます。」


「…非番の時は休むものだぞ。」


「大丈夫です。慣れていますから。」


 気を引き締めるように言ったが、ここまでしろと言うつもりはない。


「そうだったね。天の火(あまのひ)に乗っていた時も、武装をしっぱなしだったよね。」


 軍医殿はこめかみを押さえて言う。どうも今に始まった事では無いらしい。


 吾輩と軍医殿は幼い軍曹の健康を、僅かだが心配した。



◇◇◇



 靖國(やすくに)大佐は艦長室で休息をとっている。艦の事は唯乃(ただの)副長に任せている。


 靖國大佐はベッドで横になっている。布団は被らずに、ただ横になっているだけだ。そして物思いにふけっている。


 物思いの議題は、先の友軍艦艇に模した、(けが)れた幽霊船についてだ。


 普通の穢れた幽霊船なら、魑魅魍魎(ちみもうりょう)もついてくるはずだ。


 黄泉軍(よもついくさ)が経験する穢れは、神話生物、架空の生物を模した物から、空飛ぶ架空戦艦に人型ロボットがあった。泊地島に迷い込んだ穢れが、謎の宇宙戦艦の形を模していた事もあった。


 しかし味方の艦を模倣してくる事は初めてだ。


 大体、襲い掛かってくる穢れの形状は、中津(なかつ)国、つまり人間達の世界が絡んでくる。例えば強力な大砲を積んだ強い戦艦。あるいは映画や漫画、アニメに出てくる、強そうなロボットや戦闘機。

固定観念や憧れ。それらが活躍する場面を見て、強そうだと感じる思い。そう言った物が、穢れを(まと)い、我々黄泉軍に牙を向ける。


 そして、それらの構成は支離滅裂(しりめつれつ)だ。はっきり言って、魔法少女と人型ロボットが並走して空を飛ぶことくらい、珍しくない。


 そして普段は支離滅裂な穢れの軍勢だが、ある程度の統一性がある場合がある。それらは、誰か思念が加わっている時だ。


 では今回は誰の思惑だ。こう言った物は、集団の意識か何か大きな存在、神や大天使など、人間より格上の存在の思惑に影響される。


 それで具体的に誰か。そこを考えようとすると、思考が(かすみ)の中に消える。全く心当たりがないからだ。


 靖國大佐はベッドから起き上がると、机に向かう。机の上にある水筒を手に取り、(ふた)を開ける。

 蓋を開けると珈琲(コーヒー)の香りが漂う。靖國大佐は水筒の中身を一口飲む。砂糖の入っていない珈琲はほろ苦い。珈琲を飲むと机に座り、ノートパソコンを起動する。そして今日起きたことを、航海日誌に記すのであった。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回からは、航路の先にある閉じた世界の探索になります。


 それではまたお会いしましょう。 

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