第八話 7 ペプーリアの閻魔様
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
夕焼け空に一人の女性が宙に浮いている。
軍服とドレスを融合させた、独特な服を着た女性。古代ペプーリア特有の、若草の色をした黄緑の髪の毛。長い髪は三つ編みでまとめられている。そして容姿は端麗だが厳しめの表情で、豊麗という言葉が似合っている。
一言で言うと、大人の女性。それも美人だ。一見そんな女性の姿が、閻魔の風格を隠している。
腰に袋を下げている。長方形の袋には何かが入っている。そして腰に短刀のように笏を指している。
そして腕には、黄泉軍の中将を示す腕章が付いている。黄泉軍の公人としてここにいることを示している。
軍医と靖國大佐を乗せた戦闘機は、ゆっくりと閻魔の前に進み、空中で制止する。戦闘機の天蓋が開き、靖国大佐がゆっくりと出る。“飛翔”術で浮遊し閻魔に対して敬礼をする。その表情と動作は少し硬かった。
その動作を見た閻魔は、厳しめの表情を破顔させて、にこやかにほほ笑む。
「初めまして。私が閻魔の飛鳥 美沙子です。」
閻魔の美声。美人にふさわしい声色である。
「初めまして。私が靖國 正清大佐です。」
靖國大佐の表情は硬い。あくまでも閻魔と対峙してるからだ。
「表情が硬いですよ。靖国大佐。品定めや裁判をするつもりはありません。もっと緊張をほぐしなさい。」
「失礼しました。」
「せっかくの別嬪さんの手前。鼻の下を伸ばしてもいいと思うけどねぇ。」
閻魔と靖國大佐のやり取りに、軍医が失礼な口をはさむ。緊張をほぐすための発言だろうが、閻魔の前で言う台詞ではないと、靖国大佐は少しあきれていた。
「一七代ペプーリア。軽口で本心を隠すのは相変わらずですね。楽しんでいるようですが、言葉を選びなさいね。」
「もへ。閻魔様のような別嬪さんとお話しできるのは、男にとってはご褒美だけどねぇ。」
そう言うと二人は笑う。靖国大佐は表面上、軽く流す。多分言葉の意味に真意はない。そう判断したからだ。
「閻魔殿。お会いできて光栄に思います。今回、我が艦隊を視察したいと話を聞き及んでいます。」
靖國大佐は定型文ととれる台詞を言う。その表情はいささか硬く、動作はぎこちなかった。
靖國大佐は、正直あまり居心地がよくなかった。術に秀でた才能が、閻魔の神格を嫌でも感じ取る。そしてそれは生物より格上で、超常的な存在であることを知らしめていた。
「ええ。視察の件は先ほど終わりました。貴方達がここに来るまでに、千里眼等を用いて艦内の民を知覚しました。皆、鋭気に富み、活力があります。これなら長い航海にも耐えられるでしょう。」
「もへへ。実際に見に行かなくてよかったのかにゃ。」
緊張している靖國大佐とは対照的に、相変わらず軽口で応対する軍医。超常的な存在感じないのか、気にしないのか。はたまた、自分もペプーリアという特殊な存在で、対等だと思っているのだろうか。靖國大佐には判断がつかなかった。
「私が行くと皆が萎縮するでしょう。靖国大佐のようにね。」
「別嬪さんを前にして、緊張しているのかにゃ。」
再び閻魔と軍医は笑う。和やかさと超常的な存在を前に、靖國大佐はいささか居心地の悪さを覚えていた。
「ところで二人とも。話を変えますが、よろしいでしょうか。」
「何でしょうか。」
「何の話かにゃ。」
閻魔の表情は相変らず微笑んでいる。軍医は首を傾げている。その中で靖國大佐はわずかに緊張している。
「話は二つ。一つは本国側の現状と…。」
そこまで言うと閻魔は間おいて目をつむる。表情は先ほどまでの微笑は消える。
再び瞼を開けると話を続ける。
「忘却の川を下る艦隊を確認しました。地獄の亡者を乗せた外国勢の艦隊です。」
「地獄の亡者の艦隊ねぇ。どこの宗教の亡者だろうね。」
閻魔の一言に、場の空気の温度が下がる。先ほどまで軽口を叩いた軍医も、その表情を真剣なものに変えていた。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は閻魔から、未知の艦隊についての情報が知らされます。
それではまたお会いしましょう。
追記:体調不良と多忙により、土曜日の投稿はお休みさせていただきます。
次回の投稿は1月26日(木)となります。誠に申し訳ございません。




