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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第八話 進路は餓鬼道
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第八話 4 いざ餓鬼道へ

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。

 餓鬼道(がきどう)への狭い水域を超え、餓鬼道のすぐそばまで帰還艦隊を進める。忘却の川の水は塩分が付与されるが、海独特の潮の香りはしないかった。


 軍医の戦闘機が、水を這うように飛行する。軍医は合流のため旗艦希望に向かう。戦闘機は後部甲板上空にたどり着くと、垂直に高度を下げて着艦する。甲板では靖國(やすくに)佐が出迎える。


 戦闘機の天蓋(てんがい)が開き、軍医は跳躍(ちょうやく)して二メートル以上ある高さから飛び降りる。


「出迎えご苦労さん。」


「ご苦労様だ。ペプーリア殿。時間通りで何よりだ。」


 敬礼する靖國大佐。軍医も敬礼で返す。


「靖國大佐。餓鬼道に入ってからの予定。どうするの。」


「細かいことは調整中だが、大体のことを伝える。」



◇◇◇



 靖國大佐の話は次の通りだ。


 餓鬼道に進入後、閻魔様からの信号を受信する。そして指定の場所まで移動して、そこで会談を行う。その間、艦隊は待機することになっている。


 当然、餓鬼達に危害を加えてはならない。もっとも、飢えと渇きで苦しんでいるから、危害を加える力もないだろうとは、閻魔の分析結果だ。


 会談終了後。移動を再開して餓鬼道を出るが、そこで一つ些細な障害があった。


「ほへ。進入口と退出口が水で繋がっていないんだ。」


「そうだ。そのため飛行して出口側まで行くこととなる。」


「そなんだ。で、飛行は大丈夫かにゃ。途中で落ちたりしないよね。視察の時に確認したけど、今回は大丈夫かな。」


 軍医は首をかしげて尋ねる。理論上は可能と聞いて、実物を見てきた。しかし実用するのとは別の話だと、軍医は考えていた。


「その点なら問題ない。試験航海の時に、忘却の川で浮遊試験を行っていた。試験航海の時には、三時間以上の飛行を行っていた。」


「そっか。その三時間の低空飛行の能力で、今回の件は大丈夫なのかな。」


「計算したところ飛行時間は二時間だ。距離と飛行距離も十分許容範囲内だ。」


 そう言うと、靖国大佐は板型携帯端末を取り出し、軍医に見せる。そこには進入口と出口側の水域と、その間を飛行する航路と距離が記されていた。


「もへ。結構な距離を飛ぶことができるんだね。ただ、山を避けているのを見ると、そんなに高度は稼げないみたいだね。」


「元々、斥力で動く艦だ。推力を上げれば飛行もできる。もっとも、飛行能力は副産物だがな。」


「何はともあれ、飛ぶことができるのは、それだけでも行動の幅が広がるからいいね。」


 そう言うと軍医はあんがとと言って、靖国大佐に板型携帯端末を返す。


「通行の許可は出ているな。会談が終了次第、通行を開始する。」


「ほへ。それはいいとして、何でボクが会談に立ち会うのかにゃ。」


 軍医は首を傾げて尋ねるが、その真意はある程度把握していた。


「この件は把握していると思ったのだがな。」


 一見とぼける軍医。靖國大佐は軽くため息をつく。


「場所を何処に指定するか分からないが、移動手段は欲しいだろ。それとペプーリア殿は閻魔殿と面識があるだろう。仲介役、とは言わないが、互いの顔見知りがいた方がよいだろう。」


「そうだねぇ。そういう考え方もあるね。でも、主役は帰還民だよ。」


 軍医は傾げた首を戻す。その表情はどこか真剣で、先ほどとぼけた同一人物の表情ではない。


「そのくらいは分かっている。とにかく、移動手段にしろ、立ち合いにしろ、ペプーリア殿には同行してもらうぞ。」


「分かったよ。ボクも久しぶりに、閻魔様に会いたかったからねぇ。」


 話がひと段落つくと、二人の思考無線に連絡が入る。


「靖國大佐。ペプーリア様。そろそろ餓鬼道に進入します。衝撃等に注意してください。」


 その報告を受け、二人は同時に分かったと答える。それと同時に、進行方向から光が差し込む。それと同時に、世界を跨ぐ兆候を徐々に感じ始めていた。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は餓鬼道に進入します。


 それではまたお会いしましょう。


 連絡:次の話は来年の1月12日に投稿予定です。

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