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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第七話 第四艦隊と本国と泊地島の軌跡
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第七話 15 先行。天の火の配属替え。

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


「さてと。儂はそろそろ失礼するかの。その前に曽根康(そねやす)。お前さん。一つ言っておく事がある。」


「はい。何でしょうか。」


 吾輩(わがはい)は話を振られて、浅間中佐に向き直る。表情はいつもの好々爺。時に表情が読めないのは、浅間中佐の特徴と言っても良い。


天の火(あまのひ)じゃが、救助した連中で運用しようと思ってな。幸い天の火の操艦は、簡略化されておる。習熟は簡単な部類じゃろう。現在の文明に慣らすためにも、ちょうど良い教材じゃて。」


「ですが、居住性が悪化します。今みたいに、格納庫で寝泊まりさせるのですか。」


 救助した乗員は、格納庫の一角で寝泊まりしている。元々天の火は、必要分の乗員室しか確保していない。居住性の悪化は、長期航海にはあまり好ましくない。


「一週間くらいはそうなるじゃろう。基本的な操作を習熟させれば、後は救助した乗員だけでなんとかできるじゃろう。元の乗員は戦艦三隻で面倒を見る事にするぞ。」


「天の火なら乗員の習熟は簡単ですが。」


 吾輩は面倒だと思った。


 天の火の操艦は浅間中佐の言うように、極端に簡略化されている。艦について習熟している一部の乗員が居れば、後は手順書化されている事を習熟すればよい。そして重要な部分は、本国出身の乗員で固めてある。自動化されている部分に慣れれば、習熟は簡単な部類だ。


 事実、泊地島(はくちとう)の住人に置き換わった時も、一週間で基本的な事を習熟できた。


「それにこれ。これがボクと救助された乗員とで、交わされた契約書だよ。」


 そう言って、軍医殿は契約書を見せる。のぞき込もうとする二等兵を、淺糟軍曹が制する。


 契約書に書かれていた内容は、救助した乗員は帰還艦隊で働き、軍医からの命令に従うという内容だ。


 そして吾輩は契約の内容以外にも、一つ確認する。それは契約書が甲の契約書だという点だ。


 軍医殿が見せてくれた契約書は、手書きの契約書だ。この場合、甲と乙が存在する。書き方としては、契約書用の用紙を二枚重ねる。そして“契約”の術を行使しながら、二枚重ねの状態で書く。そして上が甲で下が乙。甲を立場が上の人間が持つ事になっている。


 軍医殿が甲を持っているという事は、契約書の内容の通り、救助した乗員は軍医殿に従う。軍医殿は帰還艦隊とは命令系統が異なる。その点が少し気がかりではある。


 そしてこの契約書の達筆(たっぴつ)は、浅間中佐の物だ。浅間中佐も了承済みという事だろう。


「ともかく。人事の方は儂が何とかする。乗員の方は、一七代の方で何とかしてもらう。曽根康。お前さんはその事を頭に入れておくのじゃ。」


「その事は、靖國大佐はご存じなのでしょうか。」


「いや。後で儂の方から話すつもりじゃ。」


 吾輩は内心ため息をついた。浅間瀬中佐が先行するのも珍しいようにも思える。一つ言えることは、浅間中佐の人事は大体型にはまる、と言う点だ。


「既成事実化しているように思えますが。」


「そう言うな。天の火なら習熟が容易じゃて。他の艦では時間がかかるからの。」


 吾輩は疑問に思う。浅間中佐はそんなに強引な人だっただろうか。天の火の事だから、吾輩の銀山には直接関係ない話だ。


「分かりました。この件に関しては了承しました。」


 今回の人事も、何か深い意味があるのだろう。浅間中佐が強く押すのが目に見える。これは決定事項だと腹をくくって、後は成り行きを見守る事にしようと思った。



◇◇◇



「後は思考無線会議で、押し通すだけじゃな。」


 場所は帰りの戦闘機の中。浅間中佐の独り言が機内に響く。


「誰かの台詞じゃないけど、既成事実になっているよね。」


「なに。議題に挙げて早々に決めれば、こちらのものじゃて。」


 浅間中佐はふぉっふぉと笑う。髭をいじりながら、どのように説明しようか。そんな事を考えながら、沈まない夕焼けを眺める浅間中佐であった。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は思考無線会議の場、浅間中佐が救助した乗員の件を議題に上げます。


 それではまたお会いしましょう。

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