第七話 14 守護神。八ヶ城様とお金絡みの話。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
守護神八ヶ城様。一言で言えば、黄泉軍の守護神だ。人間の世界の中津国では、意富加牟豆美命と呼ばれる、桃の木の神だ。神話の時代から存在し、我々黄泉軍を始祖の時代から守護した存在だ。
その本体は黄泉比良坂と中津国に鎮座し、人前に姿を現す時には、分霊を使用する事がほとんどだ。その桃は魔除けの効果があり、専用の桃園も経営していると聞く。
発言権、影響力は黄泉軍の派閥の中でも比較的に大きい。過去から守護神として信仰されているのと、有力な八百万の神が数柱、同派閥に所属しているのが理由だ。
農業と林業が主産業で、本国の食料、特に兵糧を担っている。本国の胃袋を握っているとも、言われている。
他にも造船やこまごまとしたことをやっているが、今回の帰還作戦もその一つだろう。
そして八ヶ城様は、八ヶ城派閥の所有者という立場だ。会社で言えば社長で、その報酬も多い。さらにそれとは別に、資産運用などで私財を貯めている。
そして今回、それらの私財を用いての帰還作戦。いくら八百万の神とはいえ、一個人が出すには負担が多いはずだ。
「確かに過去何度か、身を粉にして我々黄泉軍を救ってくれたが、そんな財産を持っていたのか。」
「そんな財産を持っていたんだよねぇ。独自の線から聞いた話だけど、この作戦の経費で私財の七割、景気よく使ったって聞くよ。」
吾輩達は一同に驚愕した。淺糟軍曹は目を見開き、浅間中佐は髭をいじっていた手を止める。
軍事作戦には先立つものが必要だ。その大金を私財で賄ったのという事は、それだけの資産を蓄えていたのだ。我々が驚く中で、相変わらず二等兵だけが理解できずに、皆の反応を見て首を傾げる。
「ま、それだけ理力工学に先見性を見出しているんだね。嘘か本当か、黄金石炭鋼で宇宙戦艦を作るって話。そんなものまで出てくるからねぇ。」
「宇宙戦艦アケボノかなぁ。」
二等兵は何かで見たアニメの戦艦を口にする。水上艦を模した宇宙戦艦が出てくる作品だ。水上艦の形が良いかは分からないが、それだけ私財を投資して、更に戦艦まで作るのか。
「ま、それだけ理力工学に期待しているみたいだね。術絡みのあれこれは、術組合が色々握っているからねぇ。そっち絡みでも風穴開けたいのかもしれないね。」
そう言うと軍医は軽く欠伸をする。
「理力工学の特許料や技術料、新製品でウハウハかもしれないけどねぇ。確か五〇年間。理力工学絡みの利益の一部は、八ヶ城様の取り分らしいね。」
「そのようじゃな。この件では少しもめたからの。」
浅間中佐は相槌を打つように言う。吾輩もその話は聞いた事がある。理力工学の特許料や技術料は手を付けなかったが、泊地島住民が生産した理力工学絡みの製品。その利益の一部は八ヶ城様の取り分だ。
無論、その割合については、色々と交渉があったのは言うまでもない。
「ま、理力工学とその恩恵。それらを得る過程で、お金があちこちに動くからねぇ。作戦の準備を機密理に行うだけでも、危ない橋を渡っているよ。」
今更の話だが、この帰還作戦は善意だけではない。表面は遭難した軍人の子孫を帰還させる。しかし王道や人道の裏に、外国や人間を出し抜くために、機密理に準備した。お金や利益絡みの話も当然ある。
帰還作戦は泊地島の住民と本国、双方の利益で成り立っている。世知辛い話だが、ある意味健全な話でもある。
「ま、お金絡みの話はそのくらいかな。八ヶ城様が主導で行う帰還作戦。その裏では世知辛いしがらみがあるんだよね。」
そう言うと、兵糧貨幣の飴玉を舐める。吾輩もペットボトルの水を一口飲み、世知辛い物を胃の中に流し込んだ。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は救助した乗員の確認話になります。
それではまたお会いしましょう。




