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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第七話 第四艦隊と本国と泊地島の軌跡
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第七話 13 予定。帰還作戦後の予定。

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。

 後ろに立っていた浅間中佐に対して、席から立ち上がり敬礼をする。


「ところで兵から士官まで、こんな所に溜まって何をしておる。」


「もへへ。上級大尉に色々説明してもらったよ。」


 軍医殿の台詞を聞いて、浅間中佐は顎の髭をいじる。


「そうじゃな。儂も少し聞きたい事があるのじゃが、良いかの。」


「どのような事でしょう。」


「いや、曽根康(そねやす)の方じゃないぞ。」


 そう言って浅間中佐は、手のひらをひらひらと振って、吾輩(わがはい)に制止を示す。そして軍医殿の方を向いて話を続ける。


「一七代。先日、本国との交信で、泊地島(はくちとう)の住人の受け入れについて、詳細が煮詰められたじゃろう。順を追って説明してほしいのじゃ。佐官連中は知っておるが、特に少尉。お前さん、今回の帰還作戦後の話、知らんじゃろう。」


「はい。確かに知らされていません。」


 帰還作戦で本国に帰還する話は知っていても、その先の話はまだのようだ。浅間中佐はうんうんと頷くと、再び軍医殿に向き直る。


「という訳じゃ。一七代。お主の方から説明をお願いするが、良いかの。」


 軍医殿は頭を掻いて軽く息をつく。そして背もたれを前にして、席にどっさりと座る。水の入ったペットボトルを、どこからともなく取り出す。取り出すが、口には含まないようだ。


「そうだねぇ。今夜あたりにでも公表される話だね。けど、少尉のためにも、整理しなおすのもいいかもね。」


「ペプーリア様。ご教授お願いいたします。」


 そう言って少尉は敬礼する。軍医園は敬礼を確認すると、何かを(うなが)すように手を前に出す。


「とりあえず話をするから、席に座ったらどうだい。浅間中佐も、空いている席に座ると良いよ。」

軍医殿の言葉に、一同は席に座る。浅間中佐は吾輩の隣の席に座る。


「それじゃあ。一七代ペプーリアこと、ボクの解説を始めるよ。」


 そう言うと、行儀悪く座っている軍医殿は、軽やかに説明を始めた。



◇◇◇



 軍医殿は簡素に話した。冗談を入れる場面が無かったからだろうか。それとも浅間中佐がいたからだろうか。とにかく話は淡々と進んだ。


 話の内容は簡単に以下の通りだ。


 帰還後、泊地島の島民は農耕区の一角に、移住する事になる。


 場所は(さき)の岬。同じ名前の戦艦が第一護衛艦隊に配属されているが、この農耕区の名前が由来だ。


 ジョ・ボルボ・ジョージ三世少将が治める本国の直轄地だ。食料生産拠点の一つで、本国の重要拠点の一つだ。現在、再開発が行われているという話だ。


 到着後は当面の間、艦内で暮らす事になっている。居住区の整備が済んでいないのが一番の理由だ。だが不謹慎な話になるが、どの程度帰ってこれるか分からないのも理由の一つだ。


 そして帰還民には一時金が支払われる。


 吾輩自身にも、黄金石炭鋼(おうごんせきたんこう)の特許料が支払われる契約になっている。相当な額になると言う話は、軍医殿から告げられた吾輩の秘密だ。


 そして住宅が完成し次第、住宅があてがわれる。住宅代は黄金石炭鋼の売却と、理力工学の特許料などから出る。黄金石炭鋼の売却とは艦の黄金石炭鋼だ。黄金石炭鋼製の艦をスクラップとして売る。これは本国製の艦艇や、旧第四艦隊の艦艇も同様だ。泊地島での改造で、喫水線下に黄金石炭鋼が使用されている。


 総額は不明だが、六割生還で三二〇万両。日本円で六四〇〇億円くらいだと聞いたが、後者はいまいちピンとこない。



◇◇◇



「スクラップ代は、支援物資の代金に充てられるのと聞いたの。」


「戦闘糧食(りょうしょく)や兵糧貨幣などの食料。艦に搭載する精密機器。そしてそれ以外の、娯楽用品を始めとした補給物資。当然それらはロハじゃないよ。お金がかかっているよ。」


そこまで言うと、軍医殿はペットボトルの水を口にふくむ。素早く液体を飲み込むと、話を続ける。


「それでも黄金石炭鋼。キログラム当たり四〇〇文だよ。廃材の代金としては破格だね。靖國(やすくに)領に送った黄金石炭鋼の原料。木材の原価の分も考えると、有情(うじょう)だと思うけどね。」


「ペプーリア様。黄金石炭鋼の原料は、本国から送ったのですか。」


 吾輩と軍医殿の話に少尉が割り込む。泊地島の士官は知っている内容だが、以外にも気づかない連中は気が付かない内容だ。


「そうじゃ。支援物資を運ぶ船は、全て木造船じゃ。泊地島の木を全て切り倒しても足りない。それじゃあ済まされんからの。保険のため、本国から木材を送るついでに、木造艦に物資を載せていたのじゃ。」


「そうですか。それにしても、本国側の出費も相当な額になりそうですね。」


 少尉の言った当然の意見。吾輩もそう思ったが、次に出てきた軍医殿の台詞が、吾輩達を驚かせた。


「うーん違うね。本国はお金を出していないよ。八ヶ城様主導で作戦を行っていたからね。一説には一千万両使ったみたいだねぇ。」


「何じゃと。今、なんと言った。八ヶ城様の全額出費じゃと。」


 浅間中佐は驚きのあまり、思わず声を上げる。少尉も目を見開いて驚いた表情をする。そして淺糟軍曹も驚いているあたり、本国の連中も知らないことかもしれない。


 士官と下士官が驚く中、二等兵だけが首を傾げている。事の意外さに気が付いていないようだ。


 八ヶ城様が帰還作戦を主導しているのは聞いていた。しかし、費用まで出していた話は初耳だ。


「そうだねぇ。そのあたりの話も必要かにゃ。」


 そう言うと、軍医殿は頭を掻いた。そして一拍置いて沈黙が訪れたところで、話を再開した。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は黄泉軍の守護神についての話です。


 それではまたお会いしましょう。

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