第七話 12 考察。理力工学の利器。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
「そうだねぇ。理力工学の利点。少尉には分からないかにゃ。そのあたりの説明も、必要かもしれないねぇ。」
この軍医殿の発言。この次に何を言い出すか理解でき、少し面倒に思えた。
「という訳で、上級大尉。説明を頼もうかな。」
「了解した。」
話の流れから、そうなる事が分かっていた。この中で理力工学に詳しいのは吾輩だ。吾輩は心の中で一息つき、話を始めるのであった。
◇◇◇
理力工学の歴史については、先に話した通りだ。そのため、内容についてもう少し細かく説明する。
理力工学は、一言で言えば術と機械の融合だ。そのため、制御盤や理力接触器など、機械工学で使う部品や装置を模している。
理力を機械的な動作をさせる事で、様々な現象を発生させる。その現象をさらに利用して、目的の現象を発生させる。これにより、冷蔵庫やラジオなどを再現している。
そして少尉が驚いたのは、理力工学の部品は主に植物が用いられている点だ。
木材が部品を構成し、糸が導線になり理力を伝える。
利点は当然、術と工学の融合だ。これは黄泉軍が、喉から手が出るほど欲しかった技術で、人類を出し抜く技術として有力視されている。
逆に欠点は部品絡みの話だ。木工技術が必要になる。そして術絡みのため、部品組み立てでどうしても人の手が加わる。そのため生産性に劣るという点だ。
ざっと概要を説明したところで、吾輩は実用例を挙げて説明する。
◇◇◇
最初は理力工学の代表格、悪魔機関だ。元々はウラン発動機と呼ばれていた。
デーモンコアと呼ばれる仕組みを用いて、ウランを臨界状態、または核分裂反応を増大させる。そして発生した放射線や熱を吸収して、理力に変換させる。
そして発生した理力を、動力、斥力、電力などに変換して利用する。
次に先に話にも上がった理力炉についてだ。
自然の力を利用して、理力を発生させる施設だ。龍脈の流れや川の流れを利用して、大量の理力を発生させる。泊地島では、大小八基の理力炉が建造されている。一度建造すれば、多量の理力を発生させる。定期的な調整や保守が必要だが、基本的には存在するだけで、多量の理力を発生させる。
これらの理力を用いて、泊地島の俗に言うエネルギーを賄っていた。
あと、以外にも軽視されがちだが、様々な観測装置も理力工学によるものだ。
質量観測、生命力感知、精神観測、理力観測。他にもあるが、これらは術で代用でる物で、理力工学を用いて装置化されている。後、これは本国で作られた物だが、多次元度数分析器や電磁波迷彩技術も、理力工学が用いられている。
帰還艦隊では、電探やソナーを併用して、これらの装置が用いられている。精度も良く、人間達の探知能力を上回っている。そう評したのは本国の技術者だ。
そして補足として、摩訶不思議装置。正式名所、摩訶不思議理力発生装置も、理力工学が用いられている。
これは八坂中佐が設計したものだが、似たような物は以前から存在していた。
特定の術を増幅したり、広範囲の付与する物だ。穢れ除けの結界を増幅させる装置。これにより、結界の維持がものすごく楽になっている。術の適性が低くても、広範囲に結界を張る事できるからだ。
だがこれらの装置は、特定の術の増幅だ。数多の術をその都度増幅、強大化させる装置は、今まで存在しなかった。
もっとも壊れやすいのが欠点だが、これは初期生産だからと言うのが、大きな理由かもしれない。いずれにせよ、その有用性は既に証明されている。
◇◇◇
「と、簡単にまとめたが、こんな感じだ。」
「ご教授、ありがとうございます。」
少尉はお辞儀をする横で、軍医殿が手を挙げる。先ほどまで兵糧貨幣を食べていた手を、ハンカチで拭いている。
「軍医殿。何か質問か。」
「うんにゃ。質問じゃないけど、本国にいた時に耳に挟んだ話が合ってねぇ。」
そこまで言うと、一拍間を置く。一瞬言葉が詰まったのか、それとも言いづらいのか。吾輩には分らなかった。
「どんな話なんだ。」
「眉唾の話だけどね。理力工学を利用して、『こうそく』を超える研究をしているみたいだね。」
「高速か。音速の何倍とか、そう言う話か。」
吾輩はとっさに分からなかった。ジェット推進より早い推進方法を、本国は研究しているのだろうか。
「うーんちょっと字が違うかな。『光の速さ』って書いて『光速』。光より早い移動方法だね。」
「でもそれって、一般相対性理論では、光より早い物質は無いですが。」
吾輩が理解できず戸惑っている隙を突く形で、淺糟軍曹が軍医に質問する。
一般相対性理論。名前は聞いた事があるが、詳しくは知らない。
「そうだね。ボクも不思議に思ったけど、面白い解釈があってね。」
「面白い解釈だと。」
面白い解釈と軍医は言ったが、どうせ難しい理論だろう。吾輩はそう身構えていた。
「それは、『光を音と同一視する考え』だね。早い話、空気の振動は音速を超えない。それが光の速度の限界と一緒って考え方だね。」
「すると光の速度は、空間の伝達速度の限界ですか。」
「端的に言うとそんな感じだね。音も光も波長だからね。」
随分と砕けたような表現だが、いまいちピンとこない。おそらく、吾輩が本質を理解し出来ていないからだろう。
「あと光も、媒体に伝達速度が異なるよね。音も同じだけどね。」
「それと理力工学とどのような関係があるのだ。」
吾輩は相対性理論とやらの話に水を差す。
「早い話、黄金石炭鋼の斥力を利用して、超光速航行を実現させようって話だね。黄金石炭鋼だけじゃないけどね。」
「それって本当ですか。」
「本当の話じゃな。八坂中佐が本国と、何やら話しておったぞ。」
淺糟軍曹の問いに、背後から下老人の声が答える。吾輩以外の一同は、突然立ち上がり敬礼をした。
吾輩が後ろを振り向くと、そこには好々爺姿の浅間中佐が立っていた。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は帰還後の予定についての話です。
それではまたお会いしましょう。




