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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第七話 第四艦隊と本国と泊地島の軌跡
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第七話 11 過去。帰還作戦開始まで。

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


 衣食住が一段落つくと、次に二つの事柄に取り掛かった。

 一つ目は、帰還用の艦の保存だ。旧第四艦隊は、大小合わせて八〇隻ほどの大艦隊だった。だが全ての艦の保存が不可能と結論を出すと、そのうちの新造艦の一二隻を除き、他の艦船を資材に回すと結論にいたった。


 その努力は涙ぐましい物だった。


 例えば、工作機械を動かす電力は、潜水艦の蓄電池で賄っていたが、その蓄電池の充電と再利用の電気は、“電撃”の術で賄ったり、軍艦の塗料を一度剝がして、亜麻仁油と術を用いて再利用したり、挙句の果てには工作機械をばらして、可能な限り再現して、新たな工作機械を作ったりと、とにかく艦の保存のために、あらゆる手段を全力で尽くした。


 二つ目は、後に理力工学と呼ばれる技術の研究だ。偶然、この基礎となる研究を行った技術者が、艦隊にいた。彼の主導の元、艦隊内で優秀な術師を集めて、この技術を完成させていく事となった。

その最優先課題は、艦の動力の確保だった。


 当時は廃艦予定の艦の燃料で、排水量の最も少ない潜水艦を、訓練用に動かしていた。その時も極力燃料の消費は抑えて、蓄電池で貯めた電力で訓練を行っていた。


 それでもいつか、燃料は枯渇するのは目に見えていた。



◇◇◇



 それから時は流れ約一〇〇年前。ついに理力工学の論理が完成した。

 

 理力工学ができて最初に行ったのは、理力炉の建造である。


 理力炉とは、風水で言う地脈や龍脈との理力の流れ。それらから理力を抽出して、理力を発生させる装置だ。


 理力炉が建造されると、泊地島の生活は一変した。理力炉の理力は一般の家庭までいきわたり、明かり電力になった。公共のラジオ局が建設され、街灯が整備される。まるで文明開化と呼ばれるものだった。


 再び時が流れ、約五〇年前。ウランを燃料とするウラン発動機、後に悪魔機関と呼ばれる発動機を発明する。


 燃料であるウランは、幸い泊地島で採掘できた。燃料の確保を確信すると、泊地島に多量に存在するウランを用いて、現存する艦を動かす事になった。


 それと同時に大型の造船所が建造される。悪魔機関で動かす船を作り、いつか帰還するための船を建造するためだ。もっとも当時建造された船は木造船だった。動力部のみ廃艦の資材を用いた物だった。当時の工業力では、金属の船体の船を作る事は出来なかった。


 そして二五年前。吾輩(わがはい)が黄金石炭鋼の術を発明する。当時は見向きもされなかったが、当時大尉だった八坂中佐が改良に携わると、一気に注目度が増した。八坂中佐が黄金石炭鋼を変質させる霊薬を開発すると、船の建材として注目された。そして武装した艦の試作が行われ運用された。


 そして実用性が証明された二〇年前、当時大尉だった靖國大佐が、念話を用いて本国との交信を成功させる。本国との取引が行われ、機密理の支援が開始された。それにより泊地島に現代文明が流れ込み、本格的な帰還をするために、艦の建造が活発になった。



◇◇◇



「と言う具合に、帰還作戦が開始される事になったわけだ。」


 吾輩(わがはい)は話を終え、ペットボトルの水を一口飲む。長い話をして少し喉が渇いたからだ。


 吾輩は一同を見渡す。二等兵は律儀にメモを取っている。淺糟軍曹はメモを見直している。吾輩が知らない時に、勉強をしていたのだろうか。軍医殿は冊子を見直している。その冊子の題名は『靖國領の概要』と書かれている。冊子は何所から取り出したのだろうか。


 一方、少尉は顎に拳を当てて考え込んでいる。何か()に落ちなかったのだろうか。そんな事を観察していると、少尉は拳を顎から離す。


「艦長殿。一つよろしいでしょうか。」


「どうしたのだ。」


 少尉は一拍置く。考えを整理する間だろうか。一拍置いた後、話を始める。


「最後の本国の支援ですが、なんと言うか、いささか都合がよさそうに思えます。多量の物資が靖國領に送られたと聞きます。言い方は酷いですが、そこまでする価値が、靖国領にあったのでしょうか。」


 少尉が言いたい事はなんとなく分かった。吾輩が口を開こうとする前に、軍医殿が横から口をはさむ。


「それについてはボクから説明するけど、理由はやっぱり理力工学だね。人間を出し抜く技術。理力工学がそれほど重要視されている証拠だね。人間達を出し抜く技術。喉から手が出るほど欲しているんだよね。」


「理力工学ですか。」


 本国が人間を出し抜く。将来人間との接触を考慮しての話だ。電磁波や光に対する迷彩装置は、既に開発されている。人間達に隠れて宇宙開発をするという話も聞く。


 ひょっとして将来、地球を離れて他の星系に移住するのだろうか。吾輩の脳裏にそんな考えがよぎった。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は理力工学についての復習。


 それではまたお会いしましょう。

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