第七話 10 歴史。泊地島に漂着した旧第四艦隊。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
「学名ペプーリアについては以上だね。」
「ご教授、ありがとうございます。」
軍医殿説明を終えて席に着く。しばし沈黙が続いたが、少尉がおもむろに口を開く。
「ペプーリア様。ご教授ありがとうございます。次の疑問ですが、艦長殿に質問があります。」
「吾輩か。どのような質問だ。」
おや、吾輩に質問が振られたか。どのような質問だろうか。
「本国については、大東亜戦争後の歴史を教えてもらいました。しかし、靖國領の歴史については、話題に上がりませんでした。もし差し支えなければ、ご教授お願いできないでしょうか。」
何だ。泊地島の歴史についてか。本国と帰還作戦については説明を受けたのだろう。そうなると、過去の物になる泊地島の歴史は、二の次になる。
「やはり泊地島については、詳しく説明されなかったか。簡単な概要で良いか。」
「よろしくお願いします。」
吾輩はこの話題を、二等兵に話題を振ってみようとも思ったが、質問されたのは吾輩だ。意地の悪い事をせずに、素直に答える事にするか。
◇◇◇
泊地島。我々旧第四艦隊の祖先がたどり着いたのは、今から二二二年前だ。
泊地島に漂着した理由は、敵艦隊を避けるため、航路図の無い忘却の川に迷い込んだためだ。そして運悪く流れの速い支流に迷い込み、はるか下流の泊地島に流れ着く事になった。
未知の航路のため海図も無い。そんな場所から帰還するのは容易ではない。その結論にはすぐに至った。そして本国からの救援を待つために、泊地島で生活する事になった。
先祖達がまず最初に行ったのは、生活基盤を確保する事だ。
幸い旧第四艦隊は食料だけでなく、野菜の種子や家畜も豊富に取り揃えていた。
何故種子や家畜があったのか。その理由は次の通りだ。
旧第四艦隊は、最前線の基地からの避難民を乗せていたのだが、当時の艦隊司令は完璧な撤退を行った。
そしてそれは徹底を極め、全ての食料はおろか、家畜や種子、そしてありとあらゆる道具やあるだけの資材。それだけでなく、本や子供のおもちゃまで、全てべてかき集めた。これらを敵の総攻撃前に艦に全て積み込み、完璧なまでの撤退をやってのけたのだ。
そのため、撤退時にはチリ一つ残っていなかった、などと言う真偽不明の話もあるくらいだ。
当然、当時は不満が沢山あり、『貧乏性司令官』と悪口を言われていた。しかしその正しさが証明されるとは、誰も思わなかっただろう。
話を戻そう。当初は食糧確保のため畑を作った。そして“豊作”の術で収穫量を増やすだけでなく、“早育ち”の術で育成を速めて、早期の収穫ができるようにする。
そして真水は、術を行使して海水から水を作る。これで真水を確保する。
幸い海の幸は豊富で、漁業で釣り上げた魚介類が食卓に並んだ。
それと穢れ除けの結界を、生活空間に張る。泊地島にも穢れの存在が確認されたためだ。生活空間を守るために、穢れの除去と並行して結界の拡大も進んだ。穢れが不定期的に降ってくるため、その対応にも追われた。
自給自足と生活空間の確保が終わると、次は町の建設に入った。
当初は船内で生活していた。しかし帰還が困難と判ると、街を建造して定住する事にした。
◇◇◇
「と言う具合で、旧第四艦隊の乗員は、泊地島に定住する事になったわけだ。」
吾輩は話を一区切りつけると、お茶を飲もうとする。しかしお茶を切らしているのを忘れていた。
それを察した軍医殿が、どこからともなく水のペットボトルを取り出し、吾輩に手渡してくれた。
吾輩は水で喉を潤しながら考える。当時の日誌を吾輩は読んだことがある。その中に、住人の不安を誤魔化すため娯楽を拡充したが、相当苦労したという話が合った。
いつ来るか分からない救援。本国の方角も分からない中、それを待つ気持ちはどのような物だっただろうか。
白地島の生活が当たり前だった若いころには、一切想像しなかった事だった。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は昔話の続きになります。
それではまたお会いしましょう。




