第七話 9 論文。黄泉軍。学名ペプーリアについて。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
「さてと、ペプーリア防壁だけど、ボク達黄泉軍、学名ペプーリアについて、軽く復習するよ。」
そう言うと軍医殿は席を立ち、テーブルから離れる。そしてくるりとこちらに振り替える。
「それじゃあ黒板は無いけど、講義を開始するよ。」
◇◇◇
軍医殿の講義は時に冗談を交え、時に要点をつく講義だった。そんな軍医殿の講義内容を簡単に要約する。
最初に話に上がったのは、黄泉軍の肉体的特徴だった。
黄泉軍は人間と同じように男女がある。ただこの時注意するのが、男には二種類いるという事だ。
人間型の黄泉軍と、ヴィガージャ種と呼ばれる存在だ。
人間型と言うのは、文字通り人間と同じ姿で、日本人と酷似している。これは、過去に人間が黄泉醜女…黄泉軍の女性と交わった結果だ。
一方、ヴィガージャ種は、原種に近い黄泉軍だ。全身が毛皮に覆われ、穢れ払いの炎と言う炎を、口から吐き出す。
この炎は発生器官が無く、術のように理力で発生させている『命を燃やす炎』だ。穢れに絶大な効果があるため、ヴィガージャ種が、穢れ払いの現場に駆り出される。そんな事は多々ある事だ。
次に肉体的な特徴だ。肉体的な物を一言で言えば、構造は人間と似ているが、材質は明らかに違う、と言う点だ。そのため寿命も、人間の倍以上の寿命を持つ。
余談だが、ヴィガージャ種に限り、寿命がさらに長い個体がいる。吾輩が説明した、第四代ペプーリアがその一例だ。
そして一番異なるのは遺伝子だ。どの地球上の生物とも異なり、三重螺旋のDNAだという点だ。地球上で生まれた生物では無い事が、一目瞭然と言う話だ。この三重螺旋遺伝子は、遺伝子の損傷に強いと言われている。
そして肉体的な面だが、人間より強靭で、身体能力が高い。そしてそれは、明らかに強化した痕跡があるという話だ。
その証拠に、人間と同じ材料でできているはずだが、その構成は強化した物が使用されている。
そのため、耐久性や耐熱性、そして放射線耐性が人間より高い。
さらに労働の能力だ。労働の能力は、人間の五割増しと言う統計が出ている。その理由は、次の二つだ。
一つ目は、強化された肉体。これにより人間より筋力があり、また体力もある。おまけに反応速度も人間より早く、素早い行動ができる。
二つ目は、集中力が長時間持続する点だ。
これに関しては個体差があるが、総じて人間より集中力が高く、長時間持続する。
人間より手早く、力強く、長時間もの作業ができる。このため労働も、人間以上の能力を発揮する。
そして最後に、ペプーリア防壁の存在だ。
この防壁は、実際に壁があるわけではない。どちらかと言うと、俗に言うバリアと言う物に近い。
黄泉軍の表面には、目には見えないペプーリ防壁が、膜のように張り巡らされている。
その膜は運動エネルギーを吸収すると、運動エネルギーを拡散させる。この効果は、質量が軽い物体ほど顕著に表れる。
例えを挙げるならば、拳や刀剣による攻撃には、ペプーリア防壁はほとんど効果が無い。その反面、矢や銃弾には効果があり、高い防弾効果がある。そしてさらに軽い、分子や原子、電子や電磁波にはさらに効果が高い。
そのため電磁波、特にX線やガンマ線に対して、絶大な防御効果を発揮する。
三重螺旋遺伝子。強化された肉体。そしてペプーリア防壁。その三つの効果により、強大な放射線耐性を有する事となる。
一方、欠点と言えば、人間より食事量が多い。そのくらいだ。必要カロリーが三割ほど多いほどで、特別多い訳ではない。
◇◇◇
「とまあ、エンゲル係数以外は良い事づくめ。明らかに、人間達の上位互換ともいえるね。」
そう言って、軍医殿は説明に一区切りつけると、何度目かになる二等兵の疑問が、飛んでくる。
「それじゃあ何で、人間を恐れるのですか。」
二等兵が素朴な疑問を投げかける。本国では弱い人間達を、仮想的に指定している。その理由は、黄泉軍の種の存続のためだ。
「それは総人口と、ボク達が科学力の後追いをしているからだよ。この板型携帯端末も、人間達の発明品。ボク達黄泉軍は、人間の文明の利器の恩恵を、享受しているとも言えるね。」
現状、黄泉軍と人間との人口比は、約八〇対一。黄泉軍の総人口は一億人程度。そんな状況では、多少身体能力が高くても、数の暴力で圧倒されるのは目に見えている。
そして文明の利器に関しても、人間社会の恩恵を受けている。だがそれも、脱却を目指しているのが現状だ。
本国は、将来の人間達との接触を考慮して、人間達を出し抜く手段を模索している。そしてその一つが理力工学。その技術を受け入れる今回の帰還作戦は、思っているより重要な作戦なのかもしれないと、改めて吾輩は思った。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は泊地島の過去についての話になります。
それではまたお会いしましょう。




