第七話 6 教養。歴代ペプーリア。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
吾輩は船務長を軽く絞ると、席に戻り食事を再開する。吾輩の戦闘糧食は生暖かくなっていた。一方二人は食事を終えて、ポテトチップスを開けていた。
「講義の方は大変そうだったが、淺糟軍曹。他には何かあったかな。」
吾輩は生暖かいクリーム煮を一口頬張る。いくらか冷めているが、それでもうま味と程よい苦みは失われていない。冷めても美味い飯は本物と言うのが、吾輩の持論だ。
「そうですね。講義以外では、軍医様についての話題でいっぱいでしたね。」
「そうです。歴代ペプーリアについて、ボクは詳しく分からないのに、質問攻めにするんですよ。」
二等兵はそう言うと、ポテトチップスを一枚齧る。その手には青のりが付いていた。
「二等兵。それは困るぞ。歴代ペプーリアは一般教養だぞ。」
吾輩がそう言うと、ポテトチップスに入れた手が止まる。動作の止まった二等兵にため息をつく。
「二等兵。ちょうどよい機会だ。今から吾輩が、歴代ペプーリアについて簡単に教える。簡単な概要だが、覚えておくように。」
「ご教授お願いいたします。」
二等兵の返事を確認すると、吾輩は粉末緑茶を一口飲み、口に残ったクリーム煮の味を洗い流す。その横で、二等兵は急いでメモ用紙を取り出した。
◇◇◇
吾輩は二等兵に、代々のペプーリアについて教える。大まかな概要は次の通りだ。
初代 伝説上の人物。初代のペプーリアで始祖の一人である。無口で愚直な性格と伝えられている。高天原から根の国に、太陽の光と恵みの雨を持ってきた。黄泉軍の間では、伝説上の存在とされていた。
二代 健全な躯体に恵まれ格闘術に秀でていた。拳一つで千以上の穢れを浄化させ、剣を持った達人も拳一つで、豪快にねじ伏せる豪傑であった。 生年月日不明~皇歴二四年。
三代 術使いの始祖であるのと同時に、歴代最高の術師でもある。後に外法封印と呼ばれる、穢れ払いの術の体系を成し遂げる。享年一八二歳 皇歴二四年~-皇歴二〇六年。
四代 術使いで歴代の中で三番目の実力を持っていた。代々のペプーリアの分身を呼び出し、技術を行使する方法を確立した。彼は長寿を極め、その最高寿命の記録は現在も破られていない。享年五九九歳。 皇歴二〇六年~皇歴八〇五年。
五代 農民であると同時に術使いでもあった。彼も術使いではあるが、術を極めるわけではなく、理力で農作物を祝福し、収穫量を増やすことに努める。のちの農業に影響を残した偉人でもある。享年一六九歳。 皇歴八〇五年~皇歴九七四年。
六代 漁師の息子として生まれ、優秀な漁師であった。術を使い、海を魚のように泳ぎ、槍一本で漁を行った。巨大で邪悪な大海蛇を退治する。のちに、海の神の一柱に祭られる事となる。享年一五五歳。 皇歴九七四年~皇歴一一二九年。
七代 武人の出で、理力と武器の腕を両立させた人物。魑魅魍魎が跋扈する中、多くの魑魅魍魎を打ち倒す。文字道理、百人力の存在であった。享年 一六二歳。皇歴一一二九年~一二九一年。
八代 神主の息子として生を得る。術使いの腕は三代目に次いで二番目で、結界や封印などの技術に秀でていた。それらの術を行使し、多くの邪な存在を封じてきた。享年 二二〇歳。皇歴一二九一年~皇歴一五一一年。
九代 農民の出で術の才能には全く恵まれなかった。そこで彼は、とにかく剣術を磨き、若くして達人の域に達する。数々の邪な者を屠り、太刀一刀で黄泉軍の実力を内外に示す。享年 二〇二歳。皇歴一五一一年~皇歴一七一三年。
一〇代 武士の家に生を受ける。術の才能にも恵まれ、文武両道を地で行く存在だったが、武術より内政に優れていた。流行病で病死する享年一〇八歳。 皇歴一七一三年~皇歴一八二一年。
一一代 一〇代目と同じ武家の出身である。彼は剣術や術にも優れていたが、それ以上に武将としての才に恵まれていた。統率力に優れた武将で大軍を率いて、大陸から来た邪悪との勝利を収める。享年 一六七歳。皇歴一八二一年~皇歴一九八八年。
一二代 芸者。この時期は黄泉軍にとって平和な時代であった。平和な時代を築き、黄泉軍の文化を開花させる。事故死。享年 一一四歳。皇歴一九八八年~皇歴二一〇二年。
一三代 武家の出身で、剣術と術の際に恵まれる。七代目の再来とも言われた。この時代、外国勢とのいさかいが多く、キリスト教と共に伝来した天使を、片っ端から撃退した。天使の手羽先が好物だった。享年 一八三歳。皇歴二一〇二年~皇歴二二八五年。
一四代 一介の町人として生まれる。幼いころから手が器用だったため、職人としての道を歩む。精巧なからくり人形が、今でも国宝として残っている。享年 一七〇歳。皇歴二二八五年~皇歴二四五五年。
一五代 農家の生まれ学問に明るく、将来有望な学者を嘱望されていた。しかし富国強兵の波に揉まれ、軍人を目指す。優れた指揮官で、艦隊司令にまで上り詰め、波乱の時代を翔けていった。享年 一九〇歳歳。皇歴二四五五年~皇歴二六五〇年。
一六代 一般家庭の生まれ。若くして戦闘機乗りとしての才能を開花させる。理力工学で改造したF2戦闘機で、試験を重ねる若き飛行機乗り。ペプーリアの中で唯一の戦死者。享年 二〇歳。皇歴二六五〇年~皇歴二六七〇年。
◇◇◇
「ざっとこんなところだ。」
吾輩は説明し終える。二等兵がメモを取っているため、ゆっくりと説明した。
「ペプーリア様が一六人もいたんですね。そのペプーリアの力も、代々のペプーリアは使えたのですね。」
「そうだな。一五代は、八代、一〇代、一一代の三柱の力が使えたと聞く。」
吾輩は二等兵の質問に答える。一五代は優れた司令官だった。そしてその背後には、第一一代の統率力があったと言われている。
「一六代は、二代、八代、一四代の力が使えました。一四代の技術が、一六代の戦闘機に使われているという話も、聞いた事があります。」
淺糟軍曹が、吾輩の知らぬ先代の知識を補足する。
「術師や武士はいっぱいいますけど、お医者さんっていないですね。」
何気ない二等兵の疑問は、意外にも吾輩の脳裏に突き刺さった。
「ひょっとして、軍医殿がペプーリアに選ばれたのは、優れた医者の腕を持っていたからか。」
「え、そうなのですか。」
吾輩が呟いた独り言に、二等兵が反応する。その真に受けている表情だ。よく見ると、淺糟軍曹も驚きの表情をしていた。
「いや、吾輩の戯言だ。忘れてくれ。」
ペプーリアの中に新しい血を入れる。いや、考えすぎだな。
吾輩は独り言を訂正する。そして残っていたコッペパンを、口の中に放り込んだ。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
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次回も設定の話が続きます。
それではまたお会いしましょう。




