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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第七話 第四艦隊と本国と泊地島の軌跡
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第七話 5 講習。板型携帯端末。

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


 吾輩(わがはい)が食堂に行くと、淺糟(あさかす)軍曹と遭遇する。ちょうど戦闘糧食を受け取った直後のようで、いつぞや見た二等兵も一緒だ。よく見ると二等兵は、疲れ切った表情をしている。


「疲れましたね。軍曹。何で板型携帯端末の操作で、悪戦苦闘するのでしょうか。」


「見たことも無い物を一から教えるのは、とても疲れるよ。けどこれは、新兵を相手にするのと同じくらい疲れたね。」


「画面を強く押すと壊れるっていているのに、強く押すんですよ。」


 思い出した。今日は板型携帯端末の講習を行っていたな。救助した乗員の教育の一環として、板型携帯端末の使い方を教える。大東亜(だいとうあ)戦争の常識だけでは、艦内の生活もままならないからだ。


 教育の現場監督を、船務長と淺糟軍曹に一任した。そのため、人手確保の名目で、二等兵にもお呼びがかかったのだろう。


「どうした二等兵。若いのに元気がないぞ。」


 吾輩は淺糟軍曹達に声をかける。吾輩も若いが、それは置いておく。


靖國(やすくに)上級大尉。」


 二人は揃って敬礼する。そして二人そろって、戦闘糧食の袋を落とす。まるで何かの練習をしたように、動作が全く同じだった。


「困ったものだ。糧食落とすのは罰当たりだぞ。」


「申し訳ございません。」


 吾輩はため息をつく。ため息をつくがそれ以上の事は言わない。


「ちょうど吾輩も飯の時間だ。そんなに疲れた理由も聞きたいから、一緒に飯をどうだ。食後の菓子を驕るぞ。」


「ご相伴にあずかります。」


 吾輩は返事を確認すると、戦闘糧食を受け取りに行く。そして兵糧貨幣で、三人分のポテトチップスを購入する。そして、淺糟軍曹が確保した机で、遅めの昼食を取り始めた。



◇◇◇



 今日の献立は『戦闘糧食三五型 鳥の胸肉のクリーム煮』だ。


 主力の鳥の胸肉のクリーム煮は量が多い。レトルトのパックはずっしりと重い。


 次にパン。それもコッペパンだ。それが二本も入っている。


 そして甘味は果物のシロップ漬けだ。とは言ってもシロップは塗られている程度で、桃、蜜柑(みかん)林檎(りんご)の三種類が、レトルトパックの中に入っている。


 そして、粉末珈琲(コーヒー)が一つ付いている。


 主食とおかずと甘味。王道で量があり、食べ応えがある。それに吾輩が購入したポテトチップスが付く。


 吾輩は自分と二等兵の分の戦闘糧食に、“湯沸かし”の術を行使してクリーム煮を温める。


「それで、二等兵。なぜ淺糟軍曹はそんなに疲れているのだ。」


 吾輩はあえて、二等兵に質問する。淺糟軍曹に質問しないのは、疲れているからと、外聞をはばかると思ったからだ。


「だって、いちいち驚いたり、質問攻めにするんですよ。細かい仕組みまで、分からないですよ。」


 吾輩は質問してからコッペパンを(かじ)る。味も香りも触感も、まさしくコッペパンで美味い。噛めば()むほど、コッペパンの味が口の中に広がる。


「僕が板型携帯端末の指導をしていましたが、人数が多かったため、なかなか進まなかったです。」


「最初は画面を触っては驚いていたよ。板の中に物の怪(もののけ)がいるんじゃないかって。」


 吾輩は、鳥の胸肉のクリーム煮をスプーンですくい、口に運ぶ。クリームの味と良く煮られた胸肉。それと良い苦みが味を引き立てる。材料にビールが含まれているあたり、クリーム煮であるのと同時に、麦酒(びーる)煮でもあるのだろう。


「振動機能や内蔵されているカメラに、いちいち驚いて騒ぐんです。薄い板にどうやってカメラが入っているのか。フイルムは何所だとか。それから、カメラの機能で遊んでいたり。散々ですよ。」


 吾輩は、クリーム煮のクリームと苦みを一通り堪能すると、二等兵に質問する。


「二等兵よ。吾輩は船務長と淺糟軍曹に、この仕事を頼んだ。船務長はどうしたのだ。」


「船務長は後ろから見ていただけですよ。あまり詳しくないって言って。端末の配布から説明まで、淺糟軍曹に任せっきりでした。」


「それはあまり良い傾向じゃないな。仕事をしていないじゃないか。」


 そんな事を言っていると、食堂を横切る救助した船員と、話題に上がった船務長が、歩きながら話をしていた。


「ちょうどよく現れたな。さてと。お前さん達は先に食事をしていろ。」

 そう言うと吾輩は、食事を中断して立ち上がる。そして、船務長に一直線で向かう。そして船務長の肩に手を回し、皆の言う怪力でがっちりと固定する。


「船務長。吾輩が頼んだ仕事、後ろから見ていただけのようだな。ちょっと来てもらおうか。」


 吾輩は驚く船務長を、食堂の(すみ)に連れて行く。さてと、軽く絞るとするか。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は教養として、ペプーリアの歴史を振り返ります。


 それではまたお会いしましょう。

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