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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第一話 靖國帰還艦隊
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第一話 6 夕食前の一時

 当小説はフィクションであり、人物、団体、人種は全て架空の物で、実在する物とは一切関係ありません。


この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


この作品は「カクヨム(https://kakuyomu.jp/my/works/16816927860866373063 )」に重複投稿しています。


「先ほどの戦闘結果の資料が、送られてきました。確認してください。」


 船務長が希望より送られてきた戦闘結果を提示する。A4サイズの携帯情報端末の中に、今回の海戦の敬意と結果が記されている。


「どれどれ。」


「もへへ。どうだったのかな。」


 吾輩(わがはい)と軍医は資料に目を通す。敵艦の誘導弾一斉発射を撃墜し損ねたのを皮切りに、巡洋艦を一隻ずつ確実に撃沈していく様を、資料を通して確認する。


「完全な一方的試合だね。戦艦の装甲もさることながら、巡洋艦を確実に始末する火力。相手が(けが)れた幽霊船だから、穢れ払いの曳光弾(えいこうだん)が効いたんだね。」


「戦果は上々だが、腰が軽いな。戦力を十分に確認しないで、単艦で処理しようとしているじゃないか。」


 吾輩と軍医殿は各々感想を述べる。共通した認識としては、帰還艦隊の戦力は、ある程度あてになるという事だ。


「しかし気になるのは、穢れが友軍艦艇を模した点だな。何故、友軍艦艇を模してのだ。」


 吾輩は頭に浮かんだ疑問を思わず口にした。友軍を模した事に、意味があるかどうかすら分からない事だ。


「模倣する物が、友軍艦艇しかなかったからかな。」


「それはどういう事だ。」


 軍医殿の意見を、吾輩は瞬時に理解できなかった。


「ああ、大した意味は無いよ。穢れの発生源は、泊地島だよね。だから軍艦に該当するのは、帰還艦隊の物しかないかな、と思ってね。」


「なるほど。そう考えれば確かそうだな。」


 なるほど。それなら友軍に化けて出た事の説明は付く。しかしもう一押し理由が欲しいが、情報はあまりにも不足しているな。


「けど、もう泊地島から離れる。友軍艦艇(もど)きに化かされるのは、これっきりだと思うよ。」


 軍医殿はそう言うと、火のついない葉巻を吹かした。確かにこれっきりだろう。吾輩もそう思い、艦長席に深く腰を沈めた。



◇◇◇



 時間は夕食。場所は銀山の食堂。この艦では士官と下士官と兵士が、全て同じ食堂で食事をする。食事と言っても戦闘糧食(せんとうりょうしょく)のため、袋から出して温めたり盛り付けたりするだけで、手間はあまりかからない。


 食事の時間が過ぎて人の少ない食堂に、魔法銀(まほうぎん)の皮の重鎧と白衣の釣り合わない二人が、食堂に入ってくる。軍医と靖國上級大尉だ。


 食堂の調理場では、兵卒達が大量の荒い物と格闘している。


「余計な手間は要らない。戦闘糧食を袋ごと出してくれ。後の盛り付けなどは吾輩達でやる。」


 吾輩達は食器と戦闘糧食の袋を受け取る。今日の飯はちらし寿司とお吸い物だ


「今日の戦闘糧食はちらし寿司だね。」


「今日の戦闘糧食は当たりだな。」



◇◇◇



 軍用糧食三号 ちらし寿司とお吸い物。


 多めの酢飯のご飯。マグロの角切りにちぎったエビ。細切りにした紫蘇(しそ)と、同じく細切りにした卵焼きが混ぜられている。


 お吸い物は粉末のインスタントをお湯で戻す。可もなく不可もなく、普通のお吸い物だ。


 そして意外な存在感を出すのは、お椀一杯分もあるお新香だ。ナス、大根、人参、胡瓜、カブ。味は一律に塩気が薄く、沢山食べやすくなっている。


 そしてどら焼きと粉末緑茶が付いている。


 とってつけたどら焼きの存在感が浮いている以外、味も量も十分な戦闘糧食だ。


 鮮度は真空パックと保存の術により保たれている。味は上々で、人気のある戦闘糧食だ。吾輩もちらし寿司は好きだ。



◇◇◇



 軍医と吾輩が食堂を見回したとき、ふと見覚えのある軍曹を見かけた。


 淺糟(あさかす)軍曹が戦闘糧食の袋を片手に、手近な席に座ろうとしている。刀を差して、機関拳銃を肩から下げている。第一主砲の責任者だが、白兵戦要員も兼ねている。当直の時には武装しているようだ。


「淺糟君だねぇ。」


「あ。艦長と軍医様。」


 淺糟軍曹は慌てて敬礼をした。敬礼を優先するあまり、手に持っていた戦闘糧食の袋を落とした。そんなに慌てなくても良いだろうに。


「どうやら驚かせてしまったようだねぇ。」


 吾輩は淺糟軍曹が落とした戦闘糧食を拾う。


「我々もこれから飯だ。一緒にどうだろうか。」


 そう言いながら、落とした戦闘糧食を淺糟軍曹に渡す。


「はい。」


 そして吾輩達はすぐそばの席に陣取り、夕飯の用意をするのであった。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は三人の会話になります。


 それではまたお会いしましょう。 

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