第七話 1 忠告。囮役軍医の有効期限。
この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。
靖國大佐の航海日誌
三四日目。先日の穢れの襲撃から一段落ついた。戦闘に参加した第一護衛艦隊の修理も終了した。
そして朗報もある。戦艦と巡洋艦の対空砲撃。それらの最適化が終了した。そして現在、先日までの戦闘の記録を元に、小型艦艇と輸送艦に手を加えている。
主な改修内容は、摩訶不思議装置と迎撃能力の強化だ。これらの改修が終われば、誘導弾や小型機などに対する迎撃能力は、もう少しましになるという事だ。
それともう一つ、今後の方針について、ペプーリア殿本人と話をするために、旗艦希望に呼びつけた。
◇◇◇
「ペプーリア少佐。ただいま参上。」
場所は戦艦希望の艦長室。軍医は部屋に入室して、敬礼をする。部屋には先客として靖國大佐の他に、浅間中佐が控えていた。
「よく来たな。椅子に掛けてくれ。」
「でも何で直接呼びつけたの。思考無線じゃ傍受されるからかな。」
軍医は疑問文を投げかけながら、あてがわれた席に着く。
「浅間中佐。戦死者数ゼロだったけど、あの爆撃の中、よく人的被害を出さなかったねぇ。」
「あの時は嫌な予感がしての。装甲の薄い場所にいた連中に、艦の内部に退避させたからのぉ。実際には間一髪じゃったがの。」
「現状報告は資料を送ったはずだ。さっそく本題に入りたいがよいか。」
靖國大佐は早々に、二人の無駄話を打ち切る。
「さて、最初に呼びつけた件だ。これは軍医の言う通り、万一の傍受を警戒しての事だ。暗号化されているとはいえ、油断はできないからな。」
「やっぱりそうなんだ。で、要件って何かなぁ。」
軍医は首を傾げて尋ねる。その行動に、真面目の度合いがどの程度含まれているか、靖國大佐には分らなかった。
「先日祓った穢れについてじゃが、戦闘中に進化している。そのような印象を受けたの。」
「うーん。そうだねぇ。言われてみればそうかもね。」
浅間軍曹の意見に、軍医は考える仕草をして答える。考えている振りではないか。浅間中佐にはそのように見えた。
いまいち真剣に見受けられない軍医に対し、靖國大佐は軽くため息をつく。
「ペプーリア殿。とぼけているように見えるから、結論を言うぞ。」
軍医は首を傾げて靖國大佐を見る。その真剣な表情に、傾げた首を戻す。
「ペプーリア殿には、泊地島に対する囮を買って出てもらっているが、今後は我々の問題として対処する。」
「艦艇の対空砲火の最適化が済んだからの。帰還艦隊は十分な防空能力を発揮できる。一七代。時間稼ぎは十分にできた。もう、お主が囮になる事は無いぞ。」
靖國大佐と浅間中佐は、口をそろえて言う。その表情は真剣で、多少の威圧感もあった。だが軍医はその程度の気迫で、気圧される軍医では無かった。
「ほへ。心配してくれているみたいだけど、僕は無理していないよ。いざという時は、ちゃんとみんなの力を借りるよ。」
いささかひょうきんな口調で答える軍医。それに対して、靖國大佐はこめかみを押す。
「とにかく。指揮系統が違うから命令はできないが、今後は無茶な行動はしないように。ペプーリア殿に何かあったら、我々は政治的に追い詰められることになる。」
靖國大佐と念を押すように軍医に言う。二人の真剣な態度に、軍医は頭を掻く。頭を掻いて、考えているようにも見える。
「一七代。泊地島の穢れは工夫をする。前回は何とかなったが、おそらく次は無い。儂らはそう見ている。それ故に、次回は確実に、一七代を殺しにかかるじゃろう。」
浅間中佐の言葉に軍医は、頭を掻く手を止める。そして目を閉じて、直ぐに開いて言う。
「分かったよ。頭の片隅に置いておくよ。話はそれだけかな。」
「ああ。私からは以上だ。後は浅間中佐を銀山に送ってくれ。救助した乗員の視察があるだろう。」
そう言うと、浅間中佐は席を立つ。軍医も浅間中佐を見て、倣うように席を立つ。
「そうだったね。それじゃあ浅間中佐。ボクが送るよ。」
「頼もうかの。それでは靖國大佐。儂らは失礼するぞ。」
「ああ。乗員の件、頼んだぞ。」
部屋を出る二人を、靖國大佐は見送る。
扉が閉じると、靖國大佐は軽くため息をついた。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
楽しんでいただけたのであれば、幸いです。
次回は戦闘機の中の密談になります。
それではまたお会いしましょう。




