表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第六話 過去との遭遇
65/134

第六話 13 軍医とペプーリア

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。


 軍医が乗る戦闘機が、甲板の乗員の頭上で浮遊している。突然、(かすみ)のように戦闘機が掻き消え、中にいた軍医殿が取り残され、五メートルの高さから、自由落下で着地する。


「もへへ。ペプーリア様のお帰りだぁ。」


 軍医殿が戦闘機から降りてからの第一声。周りには人だかりができていて、そのほとんどが救助した乗員達だ。吾輩(わがはい)は数人の部下を連れて、後部甲板に出た。


「ペプーリア様。ご無事ですか。」


「ペプーリア様。お疲れ様です。」


 同胞が軍医殿の安否を気遣う中、吾輩は人だかりを強引にかき分け、軍医殿の元に行く。


「お前さん達。軍医殿はお疲れだ。さあ、どいたどいた。」


「もへへ。希望者には後でボク直々の予防接種だ。だからここを通してね。」


 そう言うと、吾輩は部下達に野次馬たちを任せる。吾輩は軍医殿を半分強引に引っ張って、先に艦内に入っていった。



◇◇◇



 場所は銀山艦内通路。吾輩達は医務室に早歩きで向かっている。


「まったく。今回は危なかったじゃないか。」


「そうだねぇ。機銃と対潜魚雷が残っていたけど、この二つじゃあねぇ。」


「冗談ではないぞ。泊地島(はくちとう)の執念はただ事じゃないぞ。」


 医殿はもへへと笑う。軍医殿は笑って誤魔化しているが、事態は面倒な方向に向かっている。


 その面倒事と言うのは、泊地島の穢れが形を変えながら、軍医殿を捕らえようとする。その執念だ。


 直線的な砲撃が当たらなければ、散弾銃のような面攻撃をする。そして軍殿を捕らえる速力が無ければ、自壊させてでも噴進弾(ふんしんだん)となって追いかける。


 泊地島に対して、軍医殿は立派な囮として役立っている。その証拠に、絨毯爆撃を受けた戦艦崎の岬(さきのみさき)の被害は、爆撃の派手さに比べて大した損害ではないと、報告が入っている。


 現状、泊地島の狙いは軍医殿ただ一人。当然、軍医殿も分かっていると思うが、笑って誤魔化されても困る。


「ところで上級大尉。救助した船員の様子はどうだい。」


「見ての通りだな。元気な連中は軍医殿の出迎えだ。」


 軍医殿と接しているためか、吾輩達はペプーリアの存在に慣らされている。だが、救助した乗員は違うようだ。


 ペプーリアに接する機会が少なかったのもあるが、救助した乗員にとってのペプーリアは、軍医殿の二代前の一五代ペプーリア。その方は艦隊総司令で、一般乗員にとっては雲の上の存在だ。


 威厳もあり、それがペプーリアの神聖化に拍車をかけたと、何かの話で聞いた事がある。吾輩達にとって馴染み深い軍医殿とは、ある意味対照的だろうか。


「他の連中は。」


「半分が怪我人だな。軽傷者は処置が終了している。」


 救助した乗員は、会議室を始め、幾つかの空き部屋で休ませている。今は部下に命じて、情報収集を行わせている。主に旧第四艦隊からはぐれた後の情報だ。


「要手術の重傷者は一二名。今、軍医殿以外の軍医が手術を行っている。」


「それじゃあ、カリスマ医のボクの出番だねぇ。手術台の準備、今すぐしないとね。」


「その件だが、こんな事だろうと思って、現場に準備を命令した。今頃、手術の準備ができていると思うが。」


 そんな短い会話を終え医務室に到着する。


 重傷者は全員、寝台の上に横たわる。その半分ほどは意識が無く。残りの半分は医務室に入ってきた軍医殿を、注目する。


「それじゃあボクは、重傷者の手術をするよ。チミは救助した乗員の情報をまとめて、チミの父上にでも報告したまえ。」


靖國(やすくに)大佐か。分かった。そうするとしよう。」


 そう言うと、軍医殿は医務室に入っていく。空戦の後だと言うのに元気な事だ。吾輩も軍医もまだ若いが、おそらく気力の問題だろう。


 いや、術で使う気力とは別のものかもしれんな。


 そんな事を考えていると、ある単語が浮かんできた。


 ペプーリアの権威。


 ひょっとして軍医殿は、無理に振る舞っているのだろうか。軍医殿は生まれつきのペプーリアでは無い事。それの事実は吾輩が思う以上に、軍医殿を縛っているのだろうか。


 そんな事を考えながら、吾輩は救助した乗員がいる会議室に、速足で向かった。




 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は佐官達への報告です。


 それではまたお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ