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黄泉軍語り 帰還の導 艦長の航海日誌  作者: 八城 曽根康
第六話 過去との遭遇
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第六話 12 飛行船の執念

この作品は前作「黄泉軍語り 帰還の導 術使いの弟子(https://ncode.syosetu.com/n2119he/)」の続編です。

 飛行船の艦尾は燃え上がり、その(けが)れた炎は勢いを増す。その場にいた全員が黙り込み、飛行船の姿を見守る。その船体の艦尾は炎に包まれていたが、依然健在のように見えた。


 吾輩(わがはい)は目を疑った。飛行船は艦尾から、確かに自壊していた。穢れの炎が己自身の身を焼き、しかしその力を一層増していた。


 飛行船の艦尾が燃え上がったかと思うと、炎が向きを変える。炎は艦尾方向に勢いよく噴きだされたかと思うと、その船足は急速に速くなる。映像記録で見た、空に上がるロケットに似ていた。


 この現象を一言で表すなら、燃費の悪い噴進(ふんしん)弾。飛行船はそんな物に変わり、その速度を増している。


 突如、吾輩はツララから(したたり)り落ちる水滴(すいてき)を、背中に受ける感覚に襲われる。


 直観的と言っても良い。吾輩は穢れの狙いを一瞬で見抜く。


「各砲と機銃。飛行船を狙え。多目的誘導弾も、全弾発射だ。」


「了解。対空砲火と多目的誘導弾、攻撃開始。」


 砲雷長は突然の命令を復唱する。吾輩は復唱を確認する間もなく、最重要案件を叫ぶ。


「通信士。軍医殿に伝えろ。飛行船が急接近している。狙われているぞ。」



◇◇◇



 銀山から対空砲火が飛行船に向けられる。加速している飛行船に対して、懸命に砲撃を命中させる。穢れを(はら)曳光弾(えいこうだん)が炸裂し、穢れた飛行船の船体を削る。確かな手ごたえがあるが、大量の穢れに対して、決定打になっていない。


 続けて穢れ払いの炎が発射される。他の艦も銀山に習って、穢れ払いの炎を発射する。飛行船に蒼い破壊光線が命中し、数ヶ所から(あお)い炎が発生する。


 蒼い炎と血と黒の炎が、互いを食らい合う。そしてその両方の炎は、飛行船の船体を焼く。その身を焼き、飛行船はその速度を増しながら、船首を(あお)(みどり)の戦闘機に向ける。


 戦闘機は急加速して逃げる。逃げる戦闘機。追う飛行船。その鬼ごっこは音速を超えるが、双方の距離は一向に縮まらない。


 戦闘機から五発の対空誘導弾が発射される。誘導弾はぐるりと旋回して、飛行船の側面に命中する。誘導弾は全弾命中するが、それでも飛行船は止まらない。


 軍医は内心焦っていた。その理由は閉じた世界にある。


 文字通り閉じた世界。その世界は船や人にとっては広いが、音速を超える戦闘機にとってはいささか狭い。


 それに、いくら第一六代ペプーリアの力を体現した戦闘機でも、忘却の川に侵入する能力は無い。


 そのため世界の境界線にぶつかると、そのまま潰れてしまうかもしれない。


 そうこうしている間に、世界の境界線に近づく。軍医は急旋回して見えない世界の境界線をなぞるように最大速度で飛行する。


 突如、飛行船の船体側面に爆発が起こり、穢れた炎が激しく噴き出す。激しい炎は姿勢制御をするように、飛行船を強引に回頭させる。


 軍医は回避行動をとりながら飛行船から逃げる。飛行船は自壊を一層激しくさせて、懸命に船首を軍医の乗る戦闘機に向ける。


 本来明確な意思を持たない穢れの執念(しゅうねん)。泊地島の軍医に対する殺意と言う物だろうか。自壊しながら戦闘機に迫る飛行船を、皆が固唾を飲んで見守っていた。


 ついに飛行船の船体は、穢れと穢れ払いの炎に包まれ、音速の火の玉と化す。それでも軍医の戦闘機を追うのを止めない。


 戦闘機は第一護衛艦隊の上空を通過する。穢れた火の玉も後追う。ここぞとばかりに、艦隊総出で対空砲の標準を合わせ、穢れた火の玉を迎え撃つ。穢れ払いの曳光弾が穢れた炎の塊を浄化する。


 艦隊から再び、穢れ払いの炎が放たれる。蒼い破壊光線が、穢れた火の弾を覆う。これが決定打となり、穢れた炎は浄化の炎に包まれ、爆散し飛行船は散っていった。


 穢れは散りながら浄化され、着水する頃には灰塵と化した。そして無事だった軍医の戦闘機が、艦隊の上空を再び通り過ぎる。そして皆が見守る中、銀山の後部甲板に着艦した。




 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 楽しんでいただけたのであれば、幸いです。


 次回は凱旋後の軍医です。


 それではまたお会いしましょう。

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